2023.02.01
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先生にとっての 『何だかとても大切なもの』~その子がずっと覚えていてくれることはなんだろう~SDGsのもり上がりを支えているのは、あのときの子どもたちかも!

前回は、環境をはかる心のものさしづくりの話をしました。これまでの教育相談メインの話題からは少し離れた感じですが、私の中では環境も相談もとてもつながりの深いものです。
つながりといえば、この二つは、あちこちで目にするSDGs(持続可能な開発目標)を進める基本の要素の一つとも思えます。あなたはどんな取り組みをしていますか。

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師 渡邊 満昭

環境教育の現状

市内の小学校を対象とする「環境に関する授業の取組状況 アンケート調査 H29」によれば、「社会科、理科、技術・家庭科にとどまらず、他教科においても環境問題等が取り上げられ、教育活動全体を通して環境教育が行われ、回答のあった市内小学校79校のうち77%の学校は『総合的な学習の時間』を活用し、地域の環境に関する調べ学習等を実施している」としています。

ここまで各校において環境教育が認識されるようになったのは、平成20年度告示の学習指導要領において「持続可能な社会を創るための環境教育」に関わる内容が新たに各教科に盛りこまれたことの一定の成果かなと思っています。

ただ課題としては、「環境教育にかける時間を確保することが難しい」「講師の派遣」「教材・資料等の提供・貸出」「教員に新たな負担を生じさせないための工夫が必要」「児童・生徒が調べ学習をする際の子ども向け資料が不足している」「市や地域の現状を調べることが困難である」との意見もありました。

異動は環境再認識のチャンス

 確かに課題はあります。そして私も迷うことがあります。でももう一度考えてほしいのは、環境教育とは、ある意味子どもも先生も同じ立場に立てる教育であるということです。だれもが、自分が生まれ育った地域で経験に基づく原体験や原風景をもっていて、今でも自宅や勤務地周囲の自然・環境を自分なりに判断していると思うからです。新たに赴任した学校環境で自分はまず何を感じたかを話したり、子どもたちが見慣れてしまっているその学校・地域の良さやポイントとなる自然を再認識するだけでもOKです。学校と周辺を散歩してみるのもよさそうですね。そこに学校色を活かした教育のヒントがたくさんありそうです。

教諭にとって異動は避けられないものであり、せっかく特色ある環境教育を子ども達と共に進めても、一過性のものでしかないとの心配もあります。

しかし、子ども達からすれば、その先生と授業はまさに一期一会であり、たとえ単年度の取組であっても新たな認知と成り得るものなのです。先生と一緒に歩いた学校周辺の自然・体験が、将来の環境認識の礎となると考えればいかがでしょう。

 大人になった子ども達と原体験

さて教え子達の多くは、すでに成人です。少しは環境のことを考えてくれているでしょうか。

偶然にも、いくつかの語りに触れる機会が最近ありました。

 ○「大学は環境とは全くかかわりのない所へ進みました。でも漠然と環境に興味を持ち続けていました。(環境にかかわる会社に)就職が決まってから、それはなぜだったのかと考え続けてきましたが、小5・6の時、授業で温暖化や海面上昇について勉強したからだと思いあたりました」

 ○「小学校で何をどう習ったのかはあまり覚えていません。でも先生と授業の時よく出かけた川のことは鮮明に覚えています」

 ○「大学進学を決めるとき、なぜか環境に関わる学部が気になり選択しました」

実は私も同じように環境に関わる学部を選びました。一緒だね。

いずれもかつての子どもたちです。ほんの一例ですが、小学校期に培った原体験を忘れず、活躍している様子を垣間見ることができました。

こんな声を聞くと、もう少し私も何かしてみようかなと思えるから不思議なものですね。

渡邊 満昭(わたなべ みつあき)

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師・学校心理士・環境教育インタープリター・森林セラピスト


いつの間にか、小中学校全学年+特別支援学級+特別支援学校+通級指導教室での担任を経験し、生徒指導主任+特別支援教育コーディネーター+教育相談担当経験も10年を超えていました。すると担任を離れたとたんに何かを忘れてしまって、担任に戻ってみると忘れていたことに気がつくということがたびたびありました。それはうまく言えないけど何だかとても大切なもの。先生を続けていくための糧のようなもの。
その大切なものについて、自分の実践と合わせお伝えしていこうと思います。

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