2023.01.12
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先生にとっての 『何だかとても大切なもの』 子どもたちに環境をはかる心のものさしを育てよう

環境教育と聞くと自然環境に恵まれた中での取り組みを想像する方もいることでしょう。
しかし、将来に向けて環境についての認識が必要と思われるのも、また環境教育による認識向上の効果が高いのも、実は都市化が進みつつある地域なのです。そこには、私たち先生のかかわり方が大きいと思うのです。

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師 渡邊 満昭

環境をはかる心のものさし 

私たちは今生きている環境と自分の持っている環境イメージを、ものさしのように比較しながら生活しています。

自分の持っている身の回りの環境イメージがはっきりしたものならば、生活している環境の変化を、確実にとらえることができます。気がつくことのできる事象も多いと思います。

しかし、自分なりのイメージを充分に持たない場合は、今自分が認識しているだけの実際の状況とはかけ離れた状況が、すなわち自分の認知している環境条件になります。つまり、環境の変化にはきわめて鈍感になってしまいます。その結果、場合によっては異変を見逃し、自分にも何らかの危険が降りかかる可能性さえあるのかもしれません。

ものさしの種類

このものさしにはいくつか種類があるようですが、よく使われるのは、時間差によるものさしと  地域差によるものさしです。

時間差によるものさしとは、その場所で以前経験したことに基づいています。
「前はこの川もきれいだった、魚が住み、水は澄みわたっていた」という感じで使われています。
豊かだった昔の状態に戻そうという声の発端になることも多いと思います。

地域差によるものさしとは、違う場所同士で比べる場合に使われます。
「静岡は東京に比べると少し田舎だ。木もあるし川もきれいだ」「いや伊豆に比べるとかなり都会だ。山は遠いし、ビルが多い」と持っているイメージによっての違いも大きいのです。
また体験ではなく、ネットやマスメディアを通じての知識と比較する場合も多いと思います。しかし、この場合は実際の体験と比べ、印象度はきわめて低いのです。できれば体験を通じて学ぶことがとても大切なのだと思います。

ものさしが生まれるのは小学校時代

ものさしとなる、自分の周囲の環境へのイメージは、経験上小学生の頃に培われることが多いように思います。

例えば、「あなたのふるさとはどこ?ふるさとの景色はいかが?」と問われた時、思い描くのは小学校時代を過ごした場所、その時見た・感じた物が浮かぶことでしょう。

このイメージを元にして、大人になったときに、ものさしのように周囲の環境の変化を捉えていくのだと考えています。

しかし、市街化が進むといっても、子どもたちが今まで生きてきた12年ほどの間では、山が無くなったり、田が宅地化するといった大きな変化はあまり見られなくなりました。目を引く変化がないので、子どもたちの関心もそのままでは育ちにくいと思います。

しかし、一方で地球温暖化の影響とか、生物の種類や数の変化はこれからも進んでいくことでしょう。こうした変化に気がつく、いわば見えないものが見えてくる、そんな手だてが私たち「先生」には大切なのではないかと思います。

先生の授業は忘れてしまっても、小学生時代に養われた環境を捉える力が、きっとその子の一生物のものさしになるのですから。

渡邊 満昭(わたなべ みつあき)

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師・学校心理士・環境教育インタープリター・森林セラピスト


いつの間にか、小中学校全学年+特別支援学級+特別支援学校+通級指導教室での担任を経験し、生徒指導主任+特別支援教育コーディネーター+教育相談担当経験も10年を超えていました。すると担任を離れたとたんに何かを忘れてしまって、担任に戻ってみると忘れていたことに気がつくということがたびたびありました。それはうまく言えないけど何だかとても大切なもの。先生を続けていくための糧のようなもの。
その大切なものについて、自分の実践と合わせお伝えしていこうと思います。

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