2022.12.13
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『つなぐ・つながる』~授業づくり・学級づくり、そして学校づくりの明日のために~「地域とつながる」

今回は、「地域とつながる」ことをテーマに綴ってみます。今、全国の公立学校では、およそ1万1800校が、コミュニティ・スクールを推進しています。コミュニティ・スクールは、一体何のためにあるのでしょうか。事例を挙げながら、考えてみたいと思います。

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授  前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師 川島 隆

「課題」解決のためのコミュニティ・スクール

こんな質問にあなたは、どう答えますか?

問い1 あなたが住んでいる地域や学校で、『このまま成り行きに任せていたら、将来まずいことになるのでは?』ということはありませんか?真剣に向き合っていかなければならない『課題』はありませんか?
例えば、地域ではこんな課題がありませんか。
「地域の担い手」「自治会の運営・未加入」「地域行事」「少子高齢化」「防災・防犯」等
例えば、学校では、こんな課題がありませんか。
「いじめ」「不登校」「子どもの安心・安全」「プログラミング教育」「PTAの組織や活動」「携帯電話・SNS」など

次の質問です。
問い2 挙げられた『課題』の解決に向けて、①「学校」だけで対応できること ②「地域」だけで対応できること③「家庭」だけで対応できること―はどれですか?

この二つの質問に、どのように考えられたでしょうか。
これらの質問は、文部科学省総合教育政策局地域学習推進課が、令和2年10月に刊行している『コミュニティ・スクールのつくり方(学校運営協議会設置の手引)』という冊子の冒頭に記載されているもので、コミュニティ・スクールを導入する際、あるいは導入後の研修会等で活用することが推奨されています。
こうして、問いについて考えることは、他人事ではなく、自分事として「課題」をとらえること、その解決に向けては、「学校」「家庭」「地域」がそれぞれ単独での取り組みでは、困難であることをあらためて認識することとなります。
つまりは、どの学校、どの地域社会にも、数々の課題はあるものですが、それらを解決し、よりよい地域社会、学校を創っていくためには、「学校」「家庭」「地域」が一体となって取り組んでいく、「社会総掛かり」での対応が必要なのだということです。
だからこそ、それを実現可能にする仕組みの一つ、コミュニティ・スクールの導入が提唱されています。

コミュニティ・スクールのよさって何?

コミュニティ・スクールについて、それぞれの学校の実情によって、受け止めも様々かも知れません。
がしかし、学校が地域社会とつながるための絶好のチャンスだと言えますし、このつながりは、子どもにとっても、教職員にとっても、大きな学びをもたらしてくれるものと考えます。
例えば、地域素材を取り上げる生活科や総合的な学習では、地域をよく知る人材が欠かせません。
地域の人と出会い、つながることは、学習に深まりをもたらしてくれます。
地域の自然に学びたいとき、どこにどのような自然があるのか、川であったり、山であったり、そこで出会う生き物であったり、季節による移ろいであったり、子どもにとっての魅力であったり、その土地を昔から知る人でなければ知り得ないもの・ことがあるのは、想像に難しくありません。
ですから、頭の中で授業を創り過ぎずに、まず教員は積極的に地域とかかわり、つながっていくことです。
そのためにコミュニティ・スクールを生かしてみることです。

ちなみに、教員が地域を自分の足で歩くことも大切です。
とかく車で目的地に向かったりするのですが、車だと見過ごしがちなことも、歩いてみて気付き・発見することもあるでしょう。
子どもの視線で見るためにも歩いてみることは、思いのほか重要だと思うのです。
教員にとってのコミュニティ・スクールのよさを一つ挙げましたが、子どもにとっても、保護者にとっても、地域の人々にとっても、魅力があるのがコミュニティ・スクールです。
ここでは、それら一つ一つを詳述しませんが、それぞれがその魅力を実感できるように推進するのが、肝なんですね。

私がかかわってきた「コミュニティ・スクール」の事例を一つ

皆さんの地域、そして、学校では、どのようなコミュニティが形作られているでしょうか。
そして、コミュニティ・スクールの進捗状況は、如何でしょうか。
A市では、「地域とともにある学校づくり」を標榜し、平成25年度に4校(小2・中2)、26年度には、18校(小1・小2・中6)、そして、平成27年度市内全32校をコミュニティ・スクールとして指定し、推進されてきています。

このうち、私がかかわってきたB小学校の事例を紹介します。
この小学校では、コミュニティ・スクールの指定を受けるとまもなく、組織化を進めていました。
学校運営協議会とは別に、60名を超える会員からなる「サポートメンバーの会」があり、その会の中に「地域連携支援」「学校支援」「学習支援」「CS活動」の4つの部があるのです。
例えば、「学習支援」部は、子どもの学習をサポートするもので、家庭科の実習や外国語、総合的な学習や生活科の授業で、子どもと関わりながら学習活動を支援します。
また、「CS活動」部は、この学校独自のものといってよいかもしれません。昼休みの時間を中心に、サポートメンバーが考えた活動に、子どもたちを巻き込んでいくというものです。例えば、生け花体験や昔の遊び体験などです。
さらに、「学校支援」部では、花壇をはじめ学校内外の環境整備に取り組みます。この取組は、教職員のいる・いないにかかわらず、メンバーの自主性を持って進められています。月曜日の朝、出勤すると、正門脇の花壇に花の苗が整然と植わっていて、思わずビックリすることもあります。
全員が集う会は、年間2回で、他は、子どもを通した紙媒体のやりとりやメール、FAX、電話のやりとりで進んでいきます。
時には、学校1階にある、地域の皆さんが自由に集える「CSルーム」で相談、計画を立てることもありました。

コミュニティ・スクール、だれのため

これは、B小学校の事例であり、学校の数だけ、コミュニティ・スクールの在り方はあるのではないかと思います。
ただ地域の皆さんと「つながること」は、何よりも子どもたちのためですが、教職員のためでもあり、保護者のためでもあり、地域の皆さんのためでもある。
そんなコミュニティ・スクールにしていきたいですね。

川島 隆(かわしま たかし)

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授
前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師


2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度から大学教員として、幼稚園教諭・保育士、小学校・特別支援学校教員を目指す学生の指導・支援にあたっています。幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に、教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。

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