2022.11.22
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『つなぐ・つながる』~授業づくり・学級づくり、そして学校づくりの、明日のために「ことば」~(その4)

授業の中で、子どもが「書く」活動は、どのように設けられているのでしょうか。そして、どのように「書く」力は育まれているのでしょうか。一方で、近頃、教師自身の「書く」活動が貧弱になりつつあるのではないかと危惧しています。教師の「書く」力は、子どもの「書く」力にもつながっていくと考えるからです。授業で垣間見る子どもの「書く」を、ちょっとのぞいてみたいと思います。

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部子どもコミュニケーション学科准教授 川島 隆

何気なく遣っている言葉も、大切に

「いらっしゃいませ」 

身近な言葉ゆえ、あまり気に留められていませんが、この言葉は敬語の命令形なので、「さあ、おこしになってください」の意味だそうです。
もともとは来たお客に対して「さあ、どうぞ、店の中へ来てください」の意味であり、すでに入店したお客に「いらっしゃいませ」を使用するのは少しオカシイ言い方になります。
この他にも、話し言葉には、意外と間違った遣い方が多いようです。
何気なく遣っている言葉も、大切にしなくてはいけないのですね。

算数の授業の「書く」

さて、□月〇×日、3年1組の算数の授業。右のかけ算の筆算のしかたを学習する場面。
一人学びの様子を机間指導してつかんだ授業者A先生は、何人かの子どもを指名すると、紙を配り、それぞれの考えを書かせていきました。
どんな説明を書くのだろうと、私も興味深く子どもたちのノートをのぞき込んでいきました。
すると、傍らから声を掛けられました。Bさんです。

Bさん:「先生、『まず』で、『次に』ときたら、その次は、なんて言えばいい?」
わたし:「『さらに』とか『そして』とかいうのは、どう?」

と、とっさに答えましたが、ちょっとびっくりしました。
算数のかけ算や筆算の手順についての質問と思ったら、説明のしかたに関する質問だったんですね。その後、Bさんは、こんな説明をしていました。

「まず、1×3=3をして、下に3と書く。次に、1×1=1をして、3の左に書く。その次に、2×3=6をして、1の下に書く。さらに、2×1をして、6の左に書く。そして、3+0をする。下に3と書く。1+6をする。下に7と書く」

言葉にこだわる、大切にする

Bさんの、言葉にこだわりながら、大切にしながら、筆算の手順を分かりやすく伝えようとする姿勢に感心しました。
国語の説明文のような側面ももつこの説明活動は、まさに前回の学習指導要領から重視されてきている「言語活動の充実」に合致したものであると思いました。
もちろん、3年1組では、いろいろな子どもがその子らしい説明をしていきました。それらをきき合うことで、どんなふうに伝えると、友達に分かってもらえるか、子ども自身が感じることができると思いました。

国語の授業で、どんな物語をつくったか

□月〇△日、同じく3年1組の授業。今度は、国語「言葉っておもしろい 漢字と友だち」の学習でした。
漢字がどのようにしてできたかを誕生物語にしたり、できたわけを考えたりするという内容です。どんな漢字について考えるのかというと、「岩」「男」「鳴」「問」「聞」の5つが提示されました。 
さて、子どもたちは、どんな物語をつくったでしょう。
これが、なかなか面白いんですね。
子どもたちの発想、そして書く力に感心しました。
Cさんは、「鳴」のお話をつくりました。

「昔のことです。一わの小鳥がいました。その小鳥は、人間とおしゃべりするのが大すきです。ある日、一人の男がやってきました。小鳥は、話しかけようとしました。小『鳥』の『口』から出てくるものが、『鳴く』というわけです」

一方、Dさんは、「問」のお話をつくりました。
書き出す場面を見ていったら、ちょっと感動ものでした。

「学校に通うのは、子どもにとってたいへんな仕事です。子どもは、来る日も来る日も勉強をみんなします。そのおかげで、来年からりっぱな4年生です。ある日のこと、子どもは3年生まとめの問題がわかりません。それで、子どもは、2ページの5の問題がわからなかったので、学校の正門に行って、『2ページの5の問題がわからないので、教えてください』と言ったことから、『問う』という漢字ができたということです」

この学級なら、ぐんぐんと、豊かに表現する子どもが育っていく

書き出しの文から、何かDさんの心の内が見えてくるようで、直接話を聴いてみたくなりました。
「分からなければ、『教えてください』と言って聞く」
分からなくてじっとしている子どももいますが、こんなふうに考えて行動出来たら、「分からなさ」を共有した、面白くて楽しい授業がつくれそうです。

こうした「書く力」を高めるために、日々の「書く」という営み、その積み重ねは、欠かせません。
でも、この学級なら、日々の「書く」ことをつなぎながら、ぐんぐんと、豊かに表現する子どもが育っていきそうです。

「どんな場で」、「何を」「どのように」書かせるのか、長い目で、意図をもって取り組ませていきたい。日々の「書く」を点から線につなぎながら。
そうあらためて思いました。
教師も、子どもに負けてはなりません。様々な「書く」を鍛えていきましょう。

川島 隆(かわしま たかし)

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部子どもコミュニケーション学科准教授
前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師


2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度は、短期大学幼児教育科に身を置き、幼稚園教諭・保育士を目指す学生の指導・支援にあたりながら、幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に研究に取り組んできました。2022年度は、四年制大学に場をうつし、小学校教員養成に携わりながら、引き続き教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。

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