2022.09.28
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

『つなぐ・つながる』~授業づくり・学級づくり、そして学校づくりの、明日のために~「縦のつながり・横のつながり」

中島みゆきさんは、歌います。
「縦の糸はあなた 横の糸は私 織りなす布は いつか誰かを暖めうるかもしれない」(『糸』作詞作曲:中島みゆき)。
縦の糸と横の糸が出会うこと、うまく織り込まれていくことの尊さや感動がしっとりと描かれています。今回は、「つながり」の中でも「縦のつながり」「横のつながり」をテーマに授業づくり、学級づくりについて、つれづれ語ってみたいと思います。

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授  前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師 川島 隆

電話でつながる

9月はじめの出来事です。
浜松市や隣の磐田市では、今は珍しくなくなった線状降水帯のため、街のいたるところで冠水が見られ、道路は大渋滞となりました。
また、広範囲で避難指示が出され、我が子が通っている小学校も急遽下校を決め、保護者への引き渡しを行うこととなりました。

そうした雨の影響なのか、私の勤務する大学内の電話が不通となることもありました。
大学内をつなぐ内線電話も、いざつながらなくなると、ストレスとなるものです。
普段は、感じていない電話の「つながり」も、つながらない事態が生まれて、あらためて、その有難さを感じるところでした。

メールがあるからいいじゃないかと言われるかもしれませんが、声の表情を感じ取りながら、声の「つながり」を実感しながらの会話は、メールでは出来ないことだと思うのです。(もちろんメールのよさもあるのですが)

「つながり」で感じ取る声の表情

声の表情って大事ですよね。
書いた、入力した文字では同じ「こんにちは」でも、声にしてみると、その人の状態をうかがい知ることができます。
「今日は、疲れているのかな」
「何かしながらの電話かな。忙しそうだなあ」
「元気があって、体調もよさそうだ」
そんなことも声の「つながり」から伺い知ることができるのではないでしょうか。

ですから、私は、学内の教職員の方々に、お願いをしたり、ものを尋ねたりする際には、できるだけ対面で、できなければ電話で、メールは、やむない場合で、と考えています。
昭和の人間でしょうか。如何でしょう。

さて、今回からスタートする「つなぐ・つながる」では、授業づくり、学級づくり、学校づくりにつながる様々な「つながり」について考えていきたいと思います。
今回は、「縦と横のつながり」について考えてみます。

縦のつながり、横のつながりって何?

この縦のつながり・横のつながりは、学校や教室だけで言われていることではありません。
社会で、会社で使われている言葉でもあります。
組織の中で、上司と部下の関係は、「縦のつながり」と言えますし、同僚・同期といった関係は、「横のつながり」と言えます。
学校で言うなら、校長先生と教頭先生、学級担任は、「縦のつながり」で結ばれていますし、同じ学年集団の教員同士は、「横のつながり」であると言えるでしょう。

もう少しマクロ的に見ると、学校と教育委員会、文部科学省は、「縦のつながり」。学校と地域、保護者は、「横のつながり」と見ることができます。
また、教室という場に限れば、学級担任と子どもは、「縦のつながり」で結ばれ、子ども同士は、「横のつながり」で結ばれていくと言えます。

授業で見る「縦のつながり」・「横のつながり」

例えば、授業を参観する時には、授業の目標や仕掛け、何よりも子どもの学びに注視していきますが、「縦のつながり」「横のつながり」にも多くの人が目を向けているのではないでしょうか。
授業者である先生と、子どもたちがどんな「縦のつながり」であるか。
太い関係でつながれているか。いないのか。つながれ方がどうなのか。

一見、教師の発問に対して、活発に応答する教室であっても、そのつながれ方は、一様ではないと思います。
教師の強いリーダーシップによるものもあれば、人間的な温かみでつながっている関係もあります。
しかも、教師と子どもの「つながり」の具合は、一人一人異なりますよね。
全ての子どもと同じ「つながり」を持つってこと、それは至極難しいことでしょう。

「あっ~。この子とはうまくつながれていないなあ」という感覚を抱くことはないでしょうか。
それは、教師の意図性とは別に、そうなってしまうことがあると思うのです。
だから、そういう子どもとのつながりは、あえて創っていこうと意識しているのではないでしょうか。

このことは、子ども同士の「横のつながり」でも同じように言えると思います。
A子とB子は、うまくつながっているけど、C子との関係は、つながりは、薄い。キャッチボールがうまくできない。
D男は、誰とつながっているのだろう。
そうした「つながり」の状況を、まずは、教師がつかんでおくことが大事ですよね。

一人一人の個性、特徴や考え方のクセも把握しておくのですが、そうした個と個がどんなふうにつながっているかを見ておく。
そして、その「つながり」を少しでも動かしてみよう、変えてみようっていうのが、授業づくりであり、学級づくりかなと思います。
授業の目標を達成することも大事ですが、授業を通して、「つながり」を結んでいく、結び直していく「学級づくり」も同時展開で私たちは行っているのですね。

そして、一方で、教師と子どもの「縦のつながり」も意図してか意図せずか授業を重ねていく中で変化していきますね。
もちろん教師としては、より太く、より強い「つながり」を求めていくのですが、教師も人間、子どもも人間ですから、右肩上がりに太く、強く結ばれていくことなどありません。
途中で切れそうに危うくなることもあるでしょう。
でも、そんな状況を、きちんととらえて結び直していく営みを続けることが大切だと思います。
そして、多くの先生方は、そうしているのだと思います。

編み直していく「縦のつながり」「横のつながり」

縦のつながり・横のつながり。
授業の中で、何度も何度も編み直し見つめ直していきましょう。
中島みゆきは、『糸』を、こう結びます。
「逢うべき糸に 出会えることを 人は 仕合わせと呼びます」

子どもは、教師を選べません。
子どもは、子どもを選べません。
だからこそ、出会えてよかったという授業づくりを、学級づくりをしていきたいと思います。
3月を迎えたときに、この学級で、この先生で、この友達でよかった。
そんなつながりを、結べるように。       

「つなぐ・つながる」をテーマに書きはじめたところですが、今期の区切りを迎えました。
またまた、なんと計画性のないことでしょうか。
でも、それも「つれづれ」のこととお許しいただければ幸いです。それでは、また。

川島 隆(かわしま たかし)

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授
前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師


2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度から大学教員として、幼稚園教諭・保育士、小学校・特別支援学校教員を目指す学生の指導・支援にあたっています。幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に、教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop