2022.09.13
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学校としてのレジリエンスを高める

保護者からの声に耳を傾けながら協調的に進んでいきたいと教師の誰もが願っている。しかし、時には思いがけない相談やどう答えていいか迷う質問をされ、返事に戸惑うこともある。それらの相談や質問の裏側に、保護者の苦悩を見ることもある。そうした課題に直面した際、教師としての役割を果たすために、個としても学校としてもレジリエンスを高めていきたい。

大阪大谷大学 教育学部 教授 今宮 信吾

夏休み明けに届いた連絡帳

教員になった教え子から連絡があった。始業式早々に、保護者の方から届いた連絡帳で数ページにわたる相談を受けたが、どのような対応をすべきか戸惑っているという。
相談の内容は、夏休みの課題を我が子に取り組ませるための苦労、我が子の学び方、学ばせ方に関する心配や将来への不安などが綴られていたらしい。教え子は学年主任や管理職と相談の上、「改めて電話します」と返事を書いたとのことだ。

子どもを励ます

連絡帳については扱いを注意するように学生時代から伝えていた。ネガティブなこと、個人情報に関することは書かないこと、家庭での話題として子どもたちの成長した姿を伝えることなどをポイントとしていた。
その上で、教え子と電話でやり取りをした。
「連絡帳を受け取ってどう思った」
「クレームかと思ってドキドキしましたが、内容を読んでそうでないことがわかって、そのあとどうしたらいいか考えています」
「内容から察すると、担任の先生に聞いてほしいんだと思うよ。お母さん頑張ってくれてありがとうって伝えたらどうかな」
「はい、その他に、お子さんの今後についても不安に思われているようで」
「その子って一生懸命取り組める子でしょ」
「はい、決して素早くはできないですけれど、我慢して取り組んでいます」
「それならその子には、頑張って課題をしてきたね。と声をかけてあげよう」
夕飯の支度などもあるだろうから、16時半までには連絡するようにアドバイスして電話を切った。
本来なら家庭訪問に行って話を聞いてあげたいところだろうが、コロナ感染のことや突然家庭訪問に来られたら驚くだろうということで電話での連絡に留めた。

子育てが孤育てに?

電話を切ってまず考えたのが、今の保護者は子育てに孤独を感じ、ひとりで悩んでいる方が少ないんだなということである。子育てが孤育てになってはいないか。
夏休みも終わりに近づき、我が子の課題は終わっていない。それなのに、慌てる様子もない我が子を追い立てるように課題に取り組ませる。しかし、これもまたスムーズにいかない。焦る気持ちや不安な思いを連絡帳を通じて先生に相談することもあるだろう。
そう思うと、教師の仕事は子どもを教えるだけではないことに気づく。悩みや不安を抱えながら子育てに向かっている保護者に対して、相談相手となり、気持ちを受けとめるということもしていかなければならないのかもしれない。
新任教師には重荷となることもあるだろう。だからこそ先輩教師に相談すべきなのである。教師の世界でも教員養成が、孤育てとならないように注意したい。

これからの教師像

中央教育審議会「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会配布資料

中央教育審議会でもこれからの理想の教師像が話し合われている。その中に「実現すべき教師集団の在り方」として示されている。注目すべきは「教職員集団としてのレジリアンスを高める」という文言があることである。
レジリアンスとは適応性、回復力、しなやかさなどということを示すことばである。ここでもレジリアンスを高めるためには、教師の多様性が必要だと述べられている。多様な個性を持つ教師が教師集団として互いに高め合うことによって、これからの教育課題を解決していけるように、日々子どもたちとの生活を楽しめればいいだろう。

今宮 信吾(いまみや しんご)

大阪大谷大学 教育学部 教授


国公私立の小学校で教員を経験し、現在未来の教師を育てるために教員養成に携わっています。国語教育を核として、学級づくり、道徳教育など校内研究にも携わらせていただいております。ことば学びのできる教師と学校づくりを目指しております。

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