2022.07.26
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学び続ける教員を目指して(後編)

教員という仕事の性質上、教え合い、高め合うことも必要になってきます。 しかしながら、時々その教え合いが高圧的であるように感じたり、主観によったりするものも多くなりやすいとも感じています。 ではどのようにして私たちは学び続けなければならないのでしょうか。 実は同じ教員同士では気が付かなかった学びが、まったく違う職種の方と話していると出てきたりします。 今回は、二つの事柄から、特別支援教育を含めて、教師の学びについて考えていきたいと思います。 どうぞよろしくお願いいたします。

信州大学教育学部附属特別支援学校 教諭 丸山 裕也

教師は子どもの気持ちが分かるのか?

つい先日のお話です。
心理職の方とお話をしたときに、こんなお話になりました。
「先生たちは、子どもの気持ちが分かる。というけれど、それは傲慢だ」
少し乱暴に聞こえてしまうかもしれません。私もこの言葉にショックを受けました。
私は「教師という仕事は子どもが考えていることや思っていることに寄り添うことからがスタート」と思っています。ですので当然、その心理職の方に聞き返しました。するとその方はこのように答えてくれました。
「先生が子どもの気持ちに寄り添っていることはわかります。しかしながら、そこでわかることは氷山の一角であって、わからないことの方が多いことに気が付かない先生が多い」
そして
「例えば、その子が機嫌が悪かったとする。すると先生たちは必ず原因を探そうとする。授業が嫌だったのか、先生が嫌だったのか、友達が嫌だったのか。原因が見つかるまで探そうとする。ところが、原因なんて見つからないことが多いことは当たり前なのに、そのことに気が付かない。しかし自分は子どもの気持ちが分かっているという先生方は多い。その姿勢が傲慢だと思うのです」とお答えいただきました。

以前「子どもの行動」の記事のときにも書かせていただきましたが、子どもが何を考えているか、わからないこともたくさんありますよね。
この心理職の方の話が正しかったのか、間違っていたのか。それは別の問題として、私はこのようなことを考えるようになりました。

子どもの気持ちに寄り添って、わかろうとするということは大切なことですよね。
特に特別な支援の必要な子どもの中には、自分の気持ちをうまく伝えることが不得手な子もたくさんいます。
「わかってあげたいけど、それでもわからない」
経験の少ない若い先生は特に感じるかもしれません。
もちろん経験が豊富であっても、感じるかもしれません。
そんな先生に「私が初任の頃は××をして、子どもの気持ちを汲み取った」「子どもの気持ちが読み取れないようでは勉強不足」とアドバイスする先生もいるのかもしれません。実際に私も見てきました。

しかし私はこのように考えています。
「わからないかもしれないけど、わかろうとしていることが大切なのではないか」と。
子どもと一緒に活動をして、一緒に遊び、一緒に勉強をしていく姿勢が、きっと子どもの気持ちをわかろうとすることにつながるのではないでしょうか?
そしてその行動は、私たち教員の「学び」というところに、繋がっていくのではないでしょうか。
ここでも学び続けることの大切さを感じ取ることができますね。

食べた経験の活かしやすい形

スティック状にしたパン

食パンやコッペパンを食べるのが苦手な生徒さんがいました。食べるとぽろぽろこぼれてしまうのです。本人もそれが嫌で、「パンは嫌い」と話していました。

看護師さん向けの研修会に参加させていただいたときに、こんなことを教わりました。
「口腔に過敏のある方は、パンなどをかじることが苦手なことがあります。過敏に対してマッサージをすることも大切ですが、スティック状にするなど食べた経験の活かしやすい形に提供するとよいですよ」

写真は実際にスティック状にしたパンの写真です。
食べた経験の活かしやすい形、スティック状にするとバナナのように前歯でかじり取って食べることができますね。

特別な支援が必要なお子さんの中には口腔に過敏のある子も多いです。
その子が食べやすい=その子が食べた経験を活かしやすい形で給食の準備をしていくことも大切ですね。

今回は前半と後半に分けて、特別支援についてふれながら学ぶことの大切さをお話してきました。前半は未熟な私の体験から、後半は教員以外の人から学んだことを取り上げて説明してきました。
教員という仕事はやっぱり学びが大切そうですね。でも、学びすぎて身体を壊さないようにもしていきましょう。
次回は教員のメンタルヘルスについてお話していきたいと思います。よろしくお願いいたします。

丸山 裕也(まるやま ゆうや)

信州大学教育学部附属特別支援学校 教諭
公認心理師、学校心理士、障害者スポーツ指導員(初級)、福祉用具専門相談員
「あした、またがっこうでね。」と、子どもも教師も伝え合うことができるような、楽しい学級づくりを目指しています。また、障害のある子どもたちの心の健康について、教育と心理の二面からアプローチしていく方法を考えています。
特別支援学校で出会ってきた子どもたちとの学びを、皆さんにお伝えしていきたいと思っています。


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