答えは子どもが出す
新しく教師になった先生たちは、連休前に様々な思いを持って対応している。その中で子どもたちとの関わりの中で答えを出しながら成長していく。
大阪大谷大学 教育学部 教授 今宮 信吾
新任教師のスタート
新学期が始まって、1週間足らずの頃、教師として働き始めた卒業生からLINEがあった。
「先生、今、ちょっと電話していいですか」
「どうしたん」
「ちょっと自信無くしてます」
「どういうこと、聞くから話してみて」
話を聞いてみると、学級づくりに悩んでいるということだった。配慮の必要な子が外に飛び出して、それをおおらかに見守っていたが、少しずつ学級全体が落ち着かなくなっているという。学生時代はもっとできると思っていたし、子どもの味方になれると思っていたが、なかなかうまくいかない。悩んでいると、自分自身の気持ちも不安定になり、子どもたちとの関わりもずれ始めた。どうしたらいいでしょうかということだった。
まず伝えたのは、先生になったばかりでもちゃんと子どもに向き合っているから大丈夫だということ。そして次に、子どもを信じること。褒めること。教師の元気な姿を見せること。その上で迷ったら子どもに相談することをアドバイスした。
「先生、こまってんねん」と子どもたちを信じて語りかけてみたらどうかなと話すと、
「そうやった。忘れてた。僕にできることはそれしかないって、ずっと心に思ってたのに、思い出した、教育実習やその前に先生と話したこと」
「君にいいところは、できない子どもの気持ちがわかることやんか。子どもを信じて毎日過ごしてたらきっと子どもが答えを出してくれる。子どもたち頑張ってるんやろ」
「そうなんです。可愛いんです。僕が言ったことを一生懸命になってやってくれます」
そう言って送ってくれたのが、下足箱の写真である。授業で掃除の必要性を学習した。その後、子どもたちは先生に褒められたいと思ったのか、毎日きちんと靴を並べてくれるようになっていた。
ここまで来るのに「なぜ掃除をしないといけないか」と問いかけ、子どもたちから「きれいにした方が気持ちがいいから」という答えをもらっていた。靴を揃えたら綺麗に見えるし、気持ちいいという話になり、子どもたちが実践してくれてるらしい。
数人ズレてる子がいてるみたいですが、良くできる子達が直してあげて、ズレている子達に教えてあげてる所も目撃できたそうである。
先生方も一生懸命悩んでいる。そしてその答えを探している。子どもたちが答えを出してくれることは心の底では自覚していてもふと忘れてしまい、一人相撲をとってしまう。私は「先生を誰一人孤独にしない」と伝えたい。困ったらいつでも連絡しておいで。これが私ができる唯一のことである。
今宮 信吾(いまみや しんご)
大阪大谷大学 教育学部 教授
国公私立の小学校で教員を経験し、現在未来の教師を育てるために教員養成に携わっています。国語教育を核として、学級づくり、道徳教育など校内研究にも携わらせていただいております。ことば学びのできる教師と学校づくりを目指しております。
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