2022.01.06
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米国式の学級経営「教師の視点、日本と米国の学校10の相違」(2)

昨今、文部科学省が立ち上げた、#教師のバトン プロジェクト。学校での働き方改革や新しい教育実践の事例、部活動改革、教員免許更新制等の未来の改革に向け、バトンを繋げる国家プロジェクトに、心から期待し注目しています。私は米国の公立学校の教師ですが、周りには日本の学校で教師をしている親類や友人もいます。彼らと時に互いの学校の日常や教育システムや教育実践法の違いを共有し、その相違に一喜一憂することもあります。
今回はアメリカンスクールで勤務する一教師として、そして日本の学校に子どもを通わせる一人の日本人保護者から観たその視点、10の相違をお話ししたいと思います。

在沖米軍基地内 公立アメリカンスクール 日本語日本文化教師 下條 綾乃

1.小学校の教師も毎日必ずお昼休み、授業準備時間があります。
アメリカンスクールでは子どもたちは構内にあるカフェテリア(食堂)で食事をとります。よって教師は教室で子どもたちと給食を共にする必要がありません。教師はクラスの子どもたちをカフェテリアまで引率し、カフェテリア監視員にクラスの引継ぎをした後、お昼休みを取ることができます。同様に、子どもたちの休み時間でも、教師は運動場に待機している監視員に引継ぎしています。子どもたちは学校にいる間、どこにいても常に大人の目があり、子どもたちの安心安全を管理しています。そして、教師には毎日1コマが必ず授業準備時間として準備されています。例えば、小学校では専科の時間(体育、外国語、美術、音楽、理科等)がそれに当てられ、クラス担任は専科教師の教室まで引率、クラスを引継ぎし、教室に戻って準備をします。その専科はスケジュールとして決まっており、各学級は毎日、学級担任教師が授業を準備している間、毎日異なる専科クラスを受けることとなります。

2.教職員の就業時間は守られています。よって子どもたちは基本的に学校時間外に学校に出入りしたり、待機することができません。子どもたちは毎朝一回目のベルが鳴ると学校敷地内に入ることができます。学級ごとに教室近くの建物のドアの前で一列に整列し、次のベルが鳴るのを外で待ちます。最初のベルから5分後、2回目のベルが鳴り、子どもたちは一斉に建物内に入ってきます。それまでは教室や建物の中に入ることはできません。

3.子どもたちは放課後も特別な許可がない限り、学級や構内に残ることができません。これは規則として決まっています。ですから下校のベルが鳴ると、早急に学校から退出しなければなりません。保護者は子どもたちが安全に登下校できるように管理する義務責任があります。よって学校時間外で起こった出来事に、学校管理者や職員が関与するということはありません。

4.子どもたちの登下校は、スクールバスを活用することが殆どです。保護者はスクールバスに子どもたちを乗せるまで、義務があり責任をもって送り届けなければなりません。子どもたちの年齢によって細かく送迎方法の可不可があり、子どもたちの安心安全が管理されています。

5.中高での部活動は完全に外部委託ですが学校職員は希望すれば、学校地区によって有償で受け持つことができます。 小学校での放課後クラブ活動等も、同様です。教務以外の仕事(例えば、委員会や学年主任など)も有償になることがあり時間数によって細かく定められています。週末や祝祭日の部活動や学校行事は殆どありません。

6.学校職員として採用されると、日本のように一年間の初任者研修というものはありません。即戦力として採用されるからです。私の場合、採用初日から3日間、勤務学校の各学年で授業見学をさせてもらった後、4日目から教室での授業を一人で受け持ち始めました。

7.教職員採用試験というものはありません。現場の学校管理者が必要に応じて、人事課から来た応募履歴書に目を通し、面接、実施試験を行い教職員を採用します。日本のようなペーパー試験は一切ありません。即戦力としての人材を採用します。

8.どの学校にも教師の急な病気やお休みに対応する為の日雇いの代用教員リストがあり、必要に応じて学校秘書が代用教員に連絡依頼し、必要なクラスに派遣されます。教師はそのような緊急事態のための指導案を日ごろから準備しておかなければなりません。現在はオンライン上でGoogle ClassroomやMicrosoft Teamsなども活用し、その引継ぎは比較的容易であると考えます。

9.学校では、子どもたちの問題行為の指標があり、その指標に基づいて学級担任、カウンセラー、学校管理者の役割分担が明確に決まっています。必要に応じて教室での生徒指導からカウンセラーや心理学者への照会、教室での観察記録及び面接そして学校管理者への橋渡しがあり、必要と状況に応じて保護者を交えて面談を行います。指標がある為、その流れは非常にスムーズで迅速です。問題行為によっては小学校から停学退学処分もあります。

10.教師の給与には夏休みや冬休みは含まれません。よって休み期間は給与がありません。休み期間は学校地区や支部によっても違いますが、夏休みは概ね2か月近くあります。長い休日の間、家庭教師などのアルバイトをする教師もいます。兼業は認められています。

アメリカンスクールは冬休みに入りました。多文化、多民族、多宗教の環境で育つ子どもたちは、それぞれの家庭でそれぞれの風習を祝います。家庭での時間を最も大切にし、その伝統や風習、家族との繋がりを再確認し、実感するホリディシーズンでもあります。国民の休日は大みそかと元旦までとなり、通常は週末でなければ、1月2日から学校再開となります。このウィンターブレイクでしっかり充電し心も体も満たされた子どもたちにまた再会できるのが楽しみです。

次回は部活動やスポーツアクティビティー、進学について少し詳しく紹介します。

下條 綾乃(しもじょう あやの)

在沖米軍基地内 公立アメリカンスクール 日本語日本文化教師
日本語学校や領事館等で日本語を教えた後、米軍基地内の公立アメリカンスクールで日本語日本文化を教えて20年ほどになります。何年経っても毎日驚きと気づきがあり、それらの一部を皆さんと少しでも多くシェアできたら嬉しいです。外国の子供達に自分の話す言葉や習慣、文化を教えることの楽しさ、難しさ、面白さを呟いていきます。

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