2021.11.08
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

アメリカの学校行事~「夢の国」の学校 The Happiest Place on Earth ~(1)

現在の学校に勤め始めて12年がたちますが、勤め始めた当初はアメリカンスクールが「夢の国」の学校のように見えました。
日本の学校とあまりにも様子が違うからです。
第2回は学校PTA行事、伝統イベント(1)を紹介していきます。

在沖米軍基地内 公立アメリカンスクール 日本語日本文化教師 下條 綾乃

「夢の国」の学校へようこそ!

校庭の床はゴムのように柔らかく落下してもケガしないようになっています。

私が現在の学校に勤務して、最初の研修でまず驚いたこと。それは教室が居心地がよくワクワクした気分で学習ができるような飾りつけであふれ、校庭の遊具が安全でカラフルでアミューズメントパークのように見えたからです。
まるで「夢の国」のような、子どもたちの五感を刺激する仕掛け工夫があちこちにちりばめられています。そして子どもたちは皆、割と自由な恰好や髪型で自分を表現して毎日登下校してきます。ヘアカラーもヘアスタイルもピアスもネイルも特に制限がありません(中高になると肌の露出度の服装規定はあります)。
様々な人種や宗教的背景の家庭で育つ子どもたちが通うアメリカンスクールでは、そのような外見や容姿の自由は権利であり、その制限は、時として差別、不平等にあたります。日本の小中高を経験してきた私は「学校」とはその「夢の国」に程遠い場所だとずっと思ってきました。また私は二人の娘息子を日本の小中高へ通わせていましたから、勤め始めた「夢の国」の学校の様子はまさに目から鱗が落ちる風景でした。これが私のアメリカンスクールの第一印象です。

アメリカ社会の縮図でもある「学校」

秋祭りのイベントフライヤー、参加者はチケットを買ってゲームやアクティビティに参加します。売り上げはPTAの予算になります。

そんなアメリカンスクールで教え、沢山の子どもたちと接していくうちに徐々にわかってきたことがあります。それは私が教える子どもたちのほとんどが、世界各地からやってきた移民であり、その子孫であるということです。その子どもたち、家族が、異なる文化や宗教的背景、英語とは異なる言語のバックグラウンドを持っています。
アメリカンスクールは、ダイバーシティーそのもので、学校は小さなアメリカ社会の縮図です。学校では「すべての生徒を落ちこぼさない、すべての生徒が成功する法」理念のもと、各教科やそれらの教授法が細分化され、学校行事においても子どもたちが互いに尊敬し合い認め合い、楽しく学校生活が送れるような仕掛け、工夫が沢山見られます。そしてそこで働く教職員は、子どもたちを楽しませる情熱や意欲、そのアイディアにとても長けていると感じます。
例えば、読書推進週間のイベントではなんと、職員がパジャマを着て学校に登校してきたり、自分で飾りつけしたクレイジーな帽子をかぶってきたり、仮装してきたり。PTA主催のイベントでは、罰ゲームで子どもたちがベットリのクリームパイを先生の顔に投げることができたり、先生を水の中に落としたり(後にこのゲームを紹介します!)。
だれもが知っている校長先生や自分の担任の先生が出現すると、大きな歓声が沸きます。学校職員はそうやって子どもたちや保護者を楽しませる器の広さ、ユーモアさも持ち合わせます。コロナ以前は学校職員と保護者が一緒になって子どもたちを楽しませるイベントや行事がたくさんありました。それらの様子をここでもう少し詳しく紹介したいと思います。

(1)秋祭り Fall Festival(ハロウィンとの相違)

保護者が持ち寄ったお菓子も売られ、PTAの活動予算に当てられます。

コロナ以前、私たちの学校では、毎年PTA主催の秋祭りが行われていました。新しい年がはじまると、まず最初に行われるPTA主催の学校行事です。
秋祭りはPTA父母会の資金集めの目的のもと、子どもたちや保護者にとっては学校や職員、クラス担任をもっとよく知り、新しい友達を更に沢山作ることのできる絶好のチャンスです。保護者の皆さんが作ってきたカップケーキやクッキーをかわいくラッピングして、ベイクドセールに出品したり、手作りのゲームをしたり、フェイスペイントをしたり。それは秋のはじめ、涼しくなった放課後の学校駐車場や教室、体育館で行われます。教職員はボランティアで司会をしたり、客寄せのためにパフォーマンスをしたり、イベント設営を手伝ったりしました。
中でも教職員や保護者がターゲットになる、パイ投げやダンクタンク(ボールが的に命中したら誰かが水に落ちるゲームで、教職員や保護者がその水の上の椅子に座り、チケットを買った子どもたちがボールを的に当てます)はかなり人気でした。私はそのダンクタンクで水に落ちる役をやったり、フェイスペイントのブースで子どもたちの顔に絵を描く担当をしていました。参加する子どもたちや保護者、教職員は様々なコスチュームや格好で仮装を楽しんだり、小さな子どもたちも大の大人も楽しむことができるファミリーイベントです。
ところで、秋といえば日本でもアメリカ的な大イベントになりつつある、ハロウィン。実はアメリカでは異なる文化や宗教的背景から、それを祝わない子どもたちやその家族もいます。その配慮から、ハロウィンは学校の一イベントとしては行っていないところもあります。ハロウィンを楽しむアメリカンファミリーもたくさんいますが、日本のハロウィンのここ最近の盛り上がりに、首をかしげるアメリカ人も少なくありません。皆さんは「日本人はどうしてハロウィンを祝うの?」と外国の友人知人に聞かられたら何と説明しますか?学校で働く唯一の日本人教師である私は、毎日このような考えもしないような問いに直面します。

次回は「アメリカの学校行事(2)」です。感謝祭やクリスマスお正月など、ホリディシーズンにまつわる祝い事、祭りが「学校」でどのように取り上げられているか紹介します。

下條 綾乃(しもじょう あやの)

在沖米軍基地内 公立アメリカンスクール 日本語日本文化教師
日本語学校や領事館等で日本語を教えた後、米軍基地内の公立アメリカンスクールで日本語日本文化を教えて20年ほどになります。何年経っても毎日驚きと気づきがあり、それらの一部を皆さんと少しでも多くシェアできたら嬉しいです。外国の子供達に自分の話す言葉や習慣、文化を教えることの楽しさ、難しさ、面白さを呟いていきます。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop