2021.06.28
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持続可能な板書スキル

未来の教室に、黒板は、あるのでしょうか。未来の教師は、板書を、行っているのでしょうか。
そこにはチョークがなく、電子黒板や大型投影機がドーンと鎮座しているのでしょうか。
本稿では、10年後の未来にも教師の板書は必要であるはずという立場から、GIGA構想が実現し、ICT活用真っ只中でも、持続可能な教師の板書スキルを考えたいと思います。

集団解決を板書で行うことは無くなっていくのでしょうか。だとすれば、新たな板書の役割とは、何なのでしょうか。

高知大学教育学部附属小学校 森 寛暁

子どもの疑問をほりおこす板書を

30年前に発行された柳瀬修 著『算数・たのしい板書の技法』(日本図書、1990)を参考にしながら、10年後の板書の技を考えていきましょう。

まず、私の目に止まったのは、「子どもの疑問をほりおこす板書を」という見出しです。少しばかり、引用します。

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子どもの持っている疑問、それはときにはあいまいであったり、疑問にならないようなものであることがあるが、それを疑問として意識させるような板書、つまり、子どもが疑問をほりおこしたり、見つけたりする板書も大切である。(中略)教師は主として口頭による、ことばによる疑問のほりおこしをする。いや、ひどい場合は”何か聞きたいことはないか”のひとことで終わってしまう場合がある。ことばによる疑問のほりおこしは、聞き逃してしまえばそれで終わりである。それを避けるためにも、子どもの視覚に訴える、忘れたら見直せる板書の効用をあらためて認識し、授業の中で積極的に用いるべき。(太字は筆者による)
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発問に頼らない姿勢は、青木幹勇氏の脱発問にも通じています。視覚に訴えることは、今でいう視覚化にあたります。

プログラミング的思考力を育てる板書

矢印と空欄で見通しと疑問をもたせる

フローチャート板書①(筆者作成)

「子どもの疑問をほりおこす板書を」という見出しで紹介されている板書例をよーく見てみると、フローチャートの要素がありました。フローチャートとは、プログラムの流れを設計するための図解術で、別名「流れ図」とも呼ばれています。良さはなんといっても、直感的に理解しやすい構造をしていることです。

そこで、筆者が行った算数授業(第5学年 整数×小数)を基に、フローチャート板書に再構成したいと思います。

矢印があるため、子どもは直感的に、見通しをもちやすくなるのではないでしょうか。また、枠組みとなる図形を用意しておくことで、子どもの疑問をもたせることも可能なのでしょうか。

子どもの問いを条件分岐に設定する

条件分岐で論理的思考力を育む

フローチャート板書②(筆者作成)

次に、子どもの問いを条件分岐に設定します。
すると、子どもたちが考えた複数の式が、ある条件のもとで収束されていきます。
この際、数学的に高次な見方・考え方へ、つながるようにするとよいと思います。
数学的な見方・考え方の具体はこちらの記事

これからの〝3つ〟の板書スキル

これからの板書スキルをまとめます。

① 子どもの視覚に訴えるフローチャート板書

② 見通しと疑問をほりおこす

③ 子どもの問いを表出させ、条件分岐に設定する

子どもたち一人ひとりがタブレットを活用する中で、教師が、何を、どこに、どのように、板書するのか。それは、黒板か、教師用タブレットか。

いくら使う道具や授業形態が変わっても、子どもの問いを出発点としたい。そう強く思います。
持続可能な板書スキルは、今後必ず議論の中心となってくるでしょう。
信号機のない道でも、立ち止まるゆとりと判断を持ちたいですね。

森 寛暁(もり ひろあき)

高知大学教育学部附属小学校
まっすぐ、やわらかく。教室に・授業に子どもの笑顔を取り戻そう。
著書『3つの"感"でつくる算数授業』(東洋館出版社

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