2020.12.26
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発達障害のある子どもへの支援の実際「行動に移しにくい子どもたちへの対応のヒント」(NO.13)

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

これまで、発達障害のある子どもたちについて、実際の姿を通して考えてきました。私は教師という立場を通して多くの子どもたちと関わり、彼らの困難さに共に向き合ってきましたが、その多くの要素は私自身の中にもあります。キレやすさ、こだわり、注意散漫、感覚過敏……。そして、今回取り上げる行動に移しにくい特徴も、私の中には確実に存在しています。今回は、その自分の経験も織り交ぜながら、話を進めていこうと思います。

ところで皆さんは、「行動に移しにくい」と聞いて、どのような様子を思い浮かべるでしょうか。思春期の子どもたちが親から「勉強しなさい」と言われても、「今やろうと思ったんだよ」と口答えするような様子も、もしかしたら「行動に移しにくい」姿のひとつかもしれません。彼らの中には、常に気だるさが漂っているように見えます。

「やろうとは思っているのに、なかなかできない」、心の中では「めんどくさい」という言葉が溢れてしまう。思春期でなくても、そう思う瞬間は誰にでもあると思います。しかし、多くの人たちは、やらなければならないことには、どうにかこうにか気持ちに折り合いをつけて取り組もうとします。そこには、「これを終わらせたら、好きなことをしよう」とか、「給料のためだから働こう」という動機があるのかもしれません。常に、「さあ、頑張るぞ!」というポジティブな気持ちがなくても、行動に移すことができるのです。

やろうと思っているのに、できない

しかし、今回取り上げる子どもたちは、「やろうと思っているのに、できない」という状況が長引いてしまっているのです。その様子をイメージするために、この連載の最初にお示しした比喩を使って考えてみたいと思います。人は自我(自分の意識)が自分の車(肉体)を運転して生きているようなものです。ところが、この傾向にある子どもたちの中では、こんな状態が存在しているかもしれません。

さあ、「運転して出かけるぞ」と思ったのに、肝心の車の状態が悪くて動かない。ちょっと直してみようと努力しても、思うように直せない。とりあえずアクセルを踏んでみても、すぐに止まってしまう。そのうちにエネルギーが切れて、「もう出かけなくてもいいや」という気持ちになってしまう。

「車の状態が悪い」という表現を使いましたが、大きな病気を抱えているという意味ではありません。しかし、どこかに何かしらの不具合を抱えているというのは、間違ってはいないと思います。

なぜ、そう言えるのかというと、私自身は腸の不具合をもっていたからです。子どものころから、しょっちゅう腹痛を起こし、冷や汗をかきながらうめくような状態が度々ありました。20代のころ検査を受けたところ、大腸がかなり長いという診断を受けました。長いからといって手術で短くするわけにもいかず、それから今日に至るまで腹痛との付き合いは続いています。

あるとき、知人にその話をしたところ、「脳は考えるためにあるのではない。体の調子を整えるために、見えないところで頑張っている。貴方は腸の調子が常に悪かったので、そのためにエネルギーを使い果たし、行動に移すのが難しかったのではないか」と言われました。確かにそういうこともあるかもしれないと思いました。

シュタイナーは、「肝臓などが意志に関する臓器であり、病院の検査などでは異常がないような微細な不具合がある場合でも、行為として表現していくことが難しくなる」と言っています。私の場合は、腸に目立った不調がありましたが、もしかしたら肝臓などにも影響を与えていたのかもしれないと考えさせられました。

なかなか行動に移せない子どもたちへの対応

では、なかなか行動に移せない子どもたちに対して、私たちはどのように対応していけばいいのでしょうか。もちろん、医師ではないので医療行為をするわけにはいきません。教育的側面からのアプローチで解決の方法を見つけるしかないのです。

シュタイナーは私たちに大きなヒントを残してくれています。「彼らと接するときには、いちいち共感や反感を抱くべきではない」というのです。つまり、何もやろうとしない子どもに対して、冷静な気持ちで接するべきだということです。しかし、私たちにとってこの態度を取ることは、実はとても難しいことなのです。

例えば、授業中に机の上には教科書も出さずにいて、「さあ、教科書の○ページを読んでみましょう」と教師が声をかけても全く何もしない子どもがいるとします。そういった子どもは珍しくはないのですが、「○○さん、あなたが教科書を開くのを待っていますよ」といった声をかければ、渋々であっても教科書を開くことがあります。しかし、どんな働きかけにも反応しない子どもがいるのです。すると、教師はその子どもの動きを待っていられなくなり、授業を進めてしまいます。そこには、教師のイライラが見え隠れする可能性があります。

教師はその子どもが悪いと見るのではなく、その子どものどこに問題を抱えているのだろうと考えてほしいのです。私の経験やシュタイナーが言っているように、内臓に問題があると考えなくてもいいのです。やろうとしてもできない困難さを抱えているという状態に、思いやりをもって関わってやってほしいのです。

その上で、学習の内容が理解できなくてやろうとしないのか、誰も何も言わないからやらなくてもいいという誤学習があったのかなど、あらゆる側面から子どもを観察してみてください。注意されなければやらずに済んでしまうという悪い習慣が身に付いているとすれば、正していかなければなりません。また、ご飯をきちんと食べさせてもらっていない、愛情を受けていないなどの問題がある場合には、保護者への対応も必要になります。

まとめ

多くの場合、愛情をもって繰り返し言葉をかけていけば、ある程度の改善が望めます。クラス全体への指導ではなく、個別的な指導が必要になることもありますが、そうであっても教師の愛情に反応してくれるようになるのです。

漫画で示したように、少しずつ課題を与える、得意なことを伸ばす、信頼関係を強めていくなどを参考にしてほしいと思います。もし、教師が多忙で対応ができないときには、学習支援員のような立場の人の力を借りるとか、通級指導学級のような場での支援を受けるなどの対応を考えていくのもひとつの方法です。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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