2021.02.04
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涙をこらえるきみのための学級づくりの教室~よくあるトラブルに効く哲学~(7)

よくあるトラブルは、クラス対抗長縄大会に向けた練習の取り組み方法を巡って起こります。
多くのクラスでは、練習したい子どもと、休み時間を使ってまで練習したくない子どもに、クッキリと。なんてこと、みなさんのクラスでは、ありませんか。
クラスの実態によって多少程度は変わってきますが、多かれ少なかれ休み時間の使い方を巡って意見が分かれる姿を私は毎年目の当たりにしてきました。中には、よかれと思って設定した話し合い活動が、余計に子どもたちの溝を深めてしまった。そんな苦い経験もあります。

今回は、クラス対抗長縄大会に向けた休み時間の使い方を巡る子ども同士の対立を「哲学」で解決する実践をご紹介します。
この哲学はトラブルに効きます。

高知大学教育学部附属小学校 森 寛暁

episode7.〜トラブルに効く哲学〜

アウフヘーベン(図①)

涙をこらえるきみのための学級づくりの教室(7)

「ねぇ、ナザシ。うちのクラス、今、もめてるの」
「何で?」
「今月行われるクラス対抗長縄大会の練習時間のことで」
「あぁ、そうか」
「あぁ、そうか。じゃなくて、結構深刻なのよ。休み時間も練習する・しない、にクラスがクッキリ分かれちゃってて」
「まあ、よくある話だな」
「真面目に聞いてよ。昨日、ある保護者から電話があったの」
「どんな?」
「クラスの仲が悪くなっていませんか?って」
「あぁ」
「子どもが家で親に相談したらしいのよ」
「まあ、それもよくある話だな」
「よくある話かどうかは知らないけど、私にとってはすぐにでも解決したい問題なの!何かいい方法はないの?」
「アウフヘーベン!(図①)」
「???それって呪文?」
「アウフヘーベン!!」
「それって、美味しいの?」
「ふざけてるのか!?」
「ふざけてない。初めて聞いた言葉だったから」

AかBかじゃなくてCを生め

クラス対抗長縄大会の練習を巡る場合(図②)

ナザシが教えてくれたことは簡単に言うとこういうことだった。

AかBかで対立するのではなく、一段階高い次元に引き上げて、Cを生み出せばいいというのだ。ドイツの哲学者ヘーゲルが提唱した考え方で、止揚とも呼ばれているらしい。

その考え方を今回のトラブル解決に当てはめると図2のようになるという。

A=休み時間も練習する
B=休み時間は練習せず遊ぶ
C=いつ、どれくらいの時間なら練習可能か?

大切なことは、新たに生み出したCの考えを最終ゴールにするのではなく、何度も修正することだという。やってみて、回数や時間を調整していけばいいらしい。つまり、アウフヘーベンの繰り返しを行うこと。

今回の場合、Cは問いになっている。例えば、「2時間目の休み時間の15分は練習する」と決める。次に、実際にやってみる。そして、子どもの様子や反応によって、練習回数や時間を調整する。2時間目の休み時間15分は毎日やって、週に2回は昼休みもやる、などが考えられるという。

また、ナザシはアウフヘーベンを話し合い活動に取り入れる良さも3つ伝えてくれた。
①違う立場でも、双方に納得感が生まれやすい
②対立を避け、健全な話し合いができるようになる
③(3つ目は自分で考えろといこうことらしい)

「それにしても、最近のナザシはすぐどっかいっちゃうよね?でも、このアウフヘーベンって本当に上手くいくのかな?」

(次回:episode8.〜ふつうの学級じまい〜)

*登場する人物や団体、名称は架空のものです。

対立よりも新たな視点を

応援していただき、ありがとうございます。
これからも、小鳥ももとマ・ナザシの学級経営物語をよろしくお願いします。残り2回となります。
読んでくださる先生方やその近くにいる人が、くれぐれも疲弊しないように。後ろ向きになってしまった気持ちが、0.5ミリちょっとでも前を向くように。

話し合い活動の問題解決で大切なのは、教師が子どもたちに対立させるのではなく、よりよい解決方法を探る視点(アウフヘーベン)を与えることではないでしょうか。

場の設定次第で子どもの心情はどこへでも行けます。子ども高い状況反応性をもっているからです。

ジョンレノンの『イマジン』に込められた願いをそえて

森 寛暁(もり ひろあき)

高知大学教育学部附属小学校
まっすぐ、やわらかく。教室に・授業に子どもの笑顔を取り戻そう。
著書『3つの"感"でつくる算数授業』(東洋館出版社

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