2021.01.21
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学級がうまくいっている先生は何をしているのか?No.6

学級経営が上手な先生は仕事も早いです。それは「仕事のしやすい環境」を作っているからです。事務処理を早く終わらせることができれば、子どもたちのためになる仕事に力を注ぐことができます。 そのような先生方は、どのように仕事をしているのでしょうか。そこで今回は、仕事術に関する小ワザを3つご紹介します。

木更津市立鎌足小学校 山本 裕貴

「処理速度の差はごく僅かなものである」

みなさんの学校にも学級経営が上手な先生がいると思います。その先生が事務処理をしている姿を思い出してください。どんな姿だったでしょうか。恐らく、スマートに処理をこなしていると思います。
「いや、でもやっぱり、そのような優秀な先生は処理能力も高いのだから当たり前なんじゃないの」
と思われるかもしれません。しかし、考えてみてください。同じ人間同士、テストの採点を2倍、3倍の速さですることができるでしょうか。
そのようなことはどんな人間にも無理です。処理速度に多少の差はあると思いますが、それはほんの僅かにすぎません。では何故、最終的な事務処理に差がでるのでしょうか。

正解は「環境の差」です。
学級経営が上手な先生は、「仕事がしやすい環境」を作っていたのです。仕事がしやすい環境があれば、事務処理が早く終わります。事務処理が早く終われば、学級経営に力を注げます。
私はそのような先生方の仕事の仕方を分析しました。すると、いくつかの共通点がありました。今回はその中で、すぐにでも実践できる小ワザを3つご紹介します。

【小ワザ1 フラットデスク】

想像してください。狭くてガタガタした机と広くて真っ平な机。どちらが作業がはかどりそうですか。言うまでもなく後者だと思います。
初任者のとき、私は机上を片づけることができませんでした。職員室の机って結構広いですよね。でも、私の机はとても狭かったです。なぜなら机に文書を重ねていったり、文房具を置いていったり、自分で利用できるスペースを埋めていました。
その結果、探し物に時間がかかったり、集中できなかったりしました。でもそのときは気付かなかったですね。職員室の机は事務処理をする大切な場所です。「仕事がしやすい環境」にするにはどうすればよいのか。ここで小ワザを使いましょう。「小ワザ!フラットデスク!!」詳しく解説していきます。

◆手順◆
●机上に出ているものをすべて引き出しにしまいます。
●事務処理をするときは、必要なものだけ出します。
例えば、採点するときは「赤ペン」「答案」「解答」だけ机上に置きます。

●終わったらすべて机の中にしまいます。

机上に物が多いと、それだけ処理の回数が増えます。処理速度を上げることはできません。だから処理する物を少なくして、相対的速度を上げることが大切です。

【小ワザ2 完結型ノート】

職員室は紙の資料で溢れています。私が初任者の頃、打ち合わせごとに毎回配られる資料の多さに頭が混乱していました。全くスケジュール管理ができず、締め切りをすぎて迷惑をかけることが多々ありました。
「このままではいけない」と思い、予定を手帳・ノート・カレンダー・アプリを活用して管理しました。資料も分野ごとにファイルを用意して整理しました。その結果、私はうまくスケジュール管理ができたでしょうか。
全くできませんでした。予定を書いた場所と書いていない場所があって混乱したり、資料を出したいときにどのファイルに入れたか覚えてなかったりしたのが理由です。そこで気付きました。私は整理整頓が苦手です。整理整頓が上手な先生の真似はできません。でも、このままスケジュール管理ができないのは大変困ります。では、どうすれば良いのか。ここで小ワザを使いましょう。「小ワザ!完結型ノート!」詳しく解説していきます。

◆手順◆
●A4ノートを購入します。
●1週間の時間割を印刷して、ノートに貼ります。
●時間割にスケジュールを記入していきます。
例(月・3時間目 学年集会 体育館)(火・放課後 書き初め展の作品を提出)など

●打ち合わせで配られる資料も、ノートに貼ります。
●メモを取るときは、すべてノートに書きます。

整理整頓ができないなら、1冊のノートで完結すれば良いのです。資料やメモを探すときは、ノートを時系列に追っていくだけです。このノートに書いていないことは、他のどこにも書いていないということが重要です。
また、紙の資料はノリを使って貼り付けることで、記憶に定着しやすくなります。職員会議資料などのページ数が多いものは、ノートに貼らずに保管しておきます。そして、使う部分のみコピーをしてノートに貼り付けます。この方法なら、私でもスケジュール管理ができました。

【小ワザ3 戦略的分割法】

どんな人でも仕事を効率よく処理したいと思っています。私も当然そう思います。しかしその考え方が、ときには効率を下げてしまうことがあります。効率的に仕事をするにどうすれば良いでしょうか。初任者の私は「いっぺんに終わらせればよい」と考えて取り組んでいました。なぜなら、何回にも分けて処理するより、1回で処理した方が準備の時間がかかりません。だからそのような仕事の仕方をしていました。
しかし、うまくいきません。自分では効率よくこなしているつもりでも、全く仕事が進みません。
「なにかが間違っている」そう思い、力のある先生のやり方を観察しました。するとやはり共通点がありました。では、どのようにすれば効率よく仕事ができるのでしょうか。ここで小ワザを使いましょう。「小ワザ!戦略的分割法!」詳しく解説していきます。

◆手順◆
●仕事のゴールを確認します。
例 マラソン大会のコースを作る。

●ゴールのための作業内容を確認します。
例 1.コースを考える 
  2.距離を測る 
  3.白線を引く 
  4.試走してみる 
  5.完成したことを周知する

●5の締め切りを決めます。
例 12月1日にコース完成を先生方に周知する。

●1、2、3、4を行う日をそれぞれ決めて、作業をします。

「え、分割したら効率化とは真逆じゃないか」と思いましたが、それは私が間違っていました。確かに、いっぺんに終わらせるほうが作業量は少ないです。しかし、私たちは人間です。同じ作業をずっとしていれば疲れてきます。ミスも多くなり効率は逆に下がってしまうのです。
最も大切なポイントは、それぞれの作業は1時間以内に行うことです。また、いっぺんに行ってしまうと修正が大変です。作業を分割することで修正に対応しやすくなります。

「ミスを防ぐことはできない」

私は本当に仕事が遅いです。そのことで多くの先生に迷惑をかけてきました。期限までに提出すべきものを出せないことはしょっちゅうありました。何度も、何度も叱られ続けてきました。このような経験を重ねていると、自己肯定感が低下してきます。
「きっと私は能力が低い。他の先生ができることができないんだ。」
ずっとこんなことを考えていました。最も辛いのは、他人に信用されないことではありません。自分で自分を信用できないことです。
あるとき、一つ年上の先輩にこんなことを言われました。
「失敗しても、まあしょうがないと思えばいいよ。反省して、謝罪して、改善すればいいんじゃないかな」
この言葉に救われました。そうです。どんなに優秀な人間でもミスをなくすことはできません。でも、優秀だからこそ、反省して、謝罪して、改善するのです。その結果、ミスが少なくなっていくのだと気付きました。

私は現在でもたくさん失敗をします。今でも多くの先生方にご迷惑をおかけすることがあります。でもそのときは先輩の言葉を思い出し、頑張ることができています。
というわけで今回は仕事術に関する小ワザをご紹介しました。次回は国語教育に関する小ワザを紹介します。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

山本 裕貴(やまもと ゆうき)

木更津市立鎌足小学校
千葉大学大学院教育学研究科学校教育学専攻
木更津技法研所属

高校、特別支援学校、小学校算数専科を経て、現在小学校の学級担任をしています。
人を幸せにするには、どうすれば良いのか。たどり着いた答えが小学校の先生でした。
教育の根本・本質・原点を問い続けていきます。

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