学級がうまくいっている先生は何をしているのか?(No2)
学級経営の定義とはなんでしょうか。 (1)学習規律づくり (2)人間関係づくり―― だと私は考えます。 この2つを形成するために、素晴らしい先生方が使っているのが「小ワザ」です。 今回は主に授業中に使える小ワザを3つご紹介します。
木更津市立鎌足小学校 山本 裕貴
「学習規律と人間関係」
こんにちは。山本裕貴です。今回も学級経営に役立つ小ワザを紹介していきます。小ワザの中でも、主に授業の展開中に活用するものを取り上げたいと思います。
前回は、「学級経営が素晴らしい先生は小ワザを多用している」と言いました。では、学級経営とはなんなのでしょうか。このように問われると難しいと思います。
そうなのです。この難しさが学級経営の難しさなのです。つまり、「学級経営とは〇〇である」という明確な答えがありません。そこに若手の先生が悩む根本があるのではないでしょうか。
私が考える学級経営とは以下の2つです。
以上の2つをつくっていくために使うのが小ワザです。それでは今回は授業で使える小ワザを3つ紹介します。
【小ワザ1 思考型学習問題】
授業をする上で、学習問題はとても重要になってきます。なぜなら、学習問題には今日の授業で取り組み、解決すべきことが要約されているからです。だから学習問題は明瞭なものでなくてはならないのです。
では、どのような学習問題が良いのでしょうか。ここで小ワザを使いましょう。「小ワザ!思考型学習問題!」詳しく解説していきます。
学習問題には大きく分けて2つの型があります。
の2つです。具体例として4年生算数「面積」の単元「長方形の公式」で考えてみます。
〇活動型
「長方形の面積を求めよう」学習問題が学習の活動内容になっている型です。
メリットとして「学習内容が明確」「子どもが学習問題を立てやすい」などがあります。
デメリットとして「まとめが作りづらい」があります。例えば、この学習問題に対応したまとめだと「長方形の面積を求めた」になるはずです。実際の授業の中では、異なる言葉でまとめると思いますが、学習問題とまとめの対応を考えた時に齟齬が生じます。
〇思考型
「長方形の面積は、どのように求めればよいのだろうか」
学習問題で思考場面がピックアップされている型です。
メリットとして「思考場面を作りやすい」「まとめに整合性が生まれる」などがあります。
デメリットとして「適用範囲が狭い」ことがあります。この思考型は全ての学習内容において適しているわけではありません。ときには、活動型のほうがねらいに迫れることもあります。
大切なことは、実態に合わせて学習問題の型を使い分けることです。
【小ワザ2 選択的発問】
授業において発問はとても重要なものとなってきます。発問の良し悪しが授業の核となると言っても過言ではありません。
発問はなんのためにするのでしょうか。私は「子どもの実態把握」だと考えます。一斉授業をする中で、子どもには知識・技能の定着に差があります。そこで教師が発問することで、潜在化している定着の度合いを顕在化するのです。
そのためには、すべての児童に対して明確であり、自分の考えをもつことができるものでなくてはなりません。では、どうすればよいのでしょうか。ここで小ワザを使いましょう。「小ワザ!選択的発問!」
これは野口芳宏先生が考案された発問法です。発問するときに「〇、×」や「A、B」などをノートにかかせて、自分の立場を決めさせます。それでは詳しく解説していきます。
具体例として4年生国語「ごんぎつね」の単元で考えてみます。
「はりきりあみのかかっている所より下手の川の中を目がけて、ぽんぽん投げ込みました」
という一文があります。
〇発問
この文章の中で最もごんの性格がわかるところはどこですか。
「下手の川の中を目がけて」だと思う人はA
「ぽんぽん投げ込みました」だと思う人はB
をノートに書きましょう。
みなさんはどこだと思いますか。正解はAです。なぜなら、ただうなぎを川に投げ込むだけでなく、もう一度はりきりあみに掛からないようしているのです。だからごんは、下手の川に投げ込んだのです。そこにごんの賢さ、悪戯心が描かれています。
このように選択肢を与えることで、明確かつ自分の考えをもつことができる発問になります。
【小ワザ3 ミニティーチャー制度】
私たち教師は「分かる授業」をすることが求められます。そのために一生懸命に教材研究をしたり、指導法を学んだりします。しかしどれほどの努力を重ねたとしても、一斉指導のみで全ての子どもが理解するでしょうか。それは難しいと思います。だから私たちは適宜、個別指導をするのです。
算数を例にするとわかりやすいのではないでしょうか。練習問題にみんなが取り組んでいるときに、先生が個別に教えにいく。多くの先生が行っている授業スタイルだと思います。
しかし、このスタイルには2つの欠点があります。
教師が個別に教えに行くときに、何人も同時に教えることはできません。つまり、先生に教えてもらいたい児童に待ち時間が生まれてしまいます。しかし、1人の教師で40人近い児童を教える必要がある公立小学校のシステム上、しかたのないことです。
また、問題を解く時間に個人差があります。上位児童はすぐに終わってしまうことも多々あるでしょう。そのような場合には、発展問題を用意し時間を埋めるのが一般的だと思われます。
では、どうすればよいのでしょうか。ここで小ワザを使いましょう。「小ワザ!ミニティーチャー制度!」手順は以下の通りです。
・一斉に問題に取り組む。
・できた児童は自分で丸つけをする。(解答を用意しておく)
・満点になったら、友達に教えに行く。
簡単に言ってしまえば、問題が終わった児童は友達を教えるということです。シンプルですが、上記の2つの欠点を克服できます。
ミニティーチャー制度は自由に立ち歩き、教えに行きます。ですので、事前に「立ち歩く目的」「教えることのメリット」を伝えておく必要があります。
学級経営と教材研究は両輪である
私が初任者のとき、心に決めていたことがあります。それは「授業で勝負できる教師になる」ということです。それを実行するために、1年目は、初任者なりに熱心に教材研究をしました。その結果どうなったと思いますか。
学級がうまくいかなくなりました。一生懸命に準備した授業でも、子どもは目を輝かせてくれませんでした。そこで私は思いました。「教材研究だけではだめなんだ。学級経営に力を入れることが大切なんだ」と。
2年目の私は、もう一度同じ4年生を任されました。そこで今度は学級経営に力を入れてみました。その結果どうなったと思いますか。
学級がうまくいきました。「ああ、やっぱり学級経営が大事なんだ」、2年目の私はそう思いました。
次の年、持ち上がりで5年生を任されました。やっぱり学級経営に力を入れてみました。最後に聞きます。その結果どうなったと思いますか。
今まで一番学級がうまくいかなくなりました。そうなのです。学級経営、教材研究、どちらかではだめなのです。2年目にたまたまうまくいったのは、前年に4年生の教材研究をしていたからです。ある程度見通しをもって授業をすることができたらからなのです。
学級経営と教材研究は両輪なのです。どちらかが欠けては走ることはできません。そのことに気付くのに、私は3年間かかりました。でも、その経験で得たものは私の財産となりました。
ということで、今回は授業で活用できる小ワザについて紹介しました。次回は、対話的な場面で使う小ワザをご紹介します。ここまで、お読みいただきありがとうございました。
山本 裕貴(やまもと ゆうき)
木更津市立鎌足小学校
千葉大学大学院教育学研究科学校教育学専攻
木更津技法研所属
高校、特別支援学校、小学校算数専科を経て、現在小学校の学級担任をしています。
人を幸せにするには、どうすれば良いのか。たどり着いた答えが小学校の先生でした。
教育の根本・本質・原点を問い続けていきます。
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