2020.11.07
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発達障害のある子どもへの支援の実際「動きやおしゃべりが止まらない子どもたちの実例」(NO.10)

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

1981年に出版された『窓ぎわのトットちゃん』を読まれた世代の中には、授業中であっても音や気配が気になっていちいちそれを確認してしまうトットちゃんの姿に、ADHD(注意欠陥多動性障害)の特徴を見た方もいらっしゃると思います。まさに、「刺激があればそれに反応せずにはいられない」、「場の空気や相手の感情への配慮などはそっちのけで、猪突猛進してしまう」といった特性をもつ子どもたちは、学校の中でも珍しくありません。

私はたまに3歳の子どもの面倒を見ることがありますが、目を離した隙にどこかに飛んでいってしまうような様子や、じっとしていることが苦手で、座っていてももぞもぞと動いてしまう様子を微笑ましく思います。それが年齢を重ねるに従って落ち着いてくればいいのですが、小学生になっても3歳のころと同様な様子を見せていると、少し心配になります。

Aさん

Aさんは、着席しているときの姿勢が崩れやすいタイプの子どもでした。目を近づけてノートを取るといった姿勢の悪さも気になりますが、漫画に示したような様子になることさえありました。座っているとは言い難い姿勢になってしまうのです。

また、Aさんは衝動性が強く、親しい人の姿を見つけるととっさに抱きついてしまう、床に物が置いてあっても踏みつけるようにして目指す方に走っていってしまうということもありました。それから、文字の書き方にも特徴があり、何度指導しても鉛筆を握るようにして持ち、力を入れ過ぎた状態で文字を書きました。力が入っていると、漢字の「はね」や「はらい」が上手にできません。もちろん、文科省でも細かな点を気にしない指導法を打ち出しているので、「はね」や「はらい」ができなくてもいいと見るべきでしょう。しかし、不器用さがそうさせているとすれば、器用さが身につくような活動を取り入れていくことも意味のあることです。

あるとき、Aさんと一緒に、マットの上で動物歩きをしたことがありました。彼女は四つ足で歩く、腹這いになって腕を使って前進するような動きも、なかなか上手くいきませんでした。からだ全体の動かし方にも不器用さがあるのだと思いました。

しかし、マット運動やボール運動、トランポリンなどの運動を頻繁に取り入れて指導したところ、少しずつ落ち着きが出てきました。自信もついてきて、学習にも意欲的になっていきました。

Bくん

常に物に触れていないと気持ちが落ち着かない子どももたくさんいます。Bくんも、そんな特性を持っていました。カードゲームやボードゲームなど、何をやってもいつも何かを触っているのです。授業中は、消しゴムのカスを集めて丸めたり、ノートの切れ端で遊んだりということもありました。あるとき、Bくんの保護者がフェルトのボールを作ってくれたので、授業中はそれに触れながら勉強をしてもいいという約束をしたことがあります。

指先がモゾモゾとして落ち着かないときに、叱ってばかりいても解決はできません。どうしたら、不愉快な感覚を和らげることができるのかを、一緒に考えていくことも必要です。そして、少しずつ我慢できるように仕向けること、他のことに夢中にさせて物を触ることを忘れさせていくようにすることも必要です。

ただ、この感覚は、短期間で改善することは難しいようです。感覚というのはひとそれぞれであり、他人からはイメージできにくいものでもあります。感覚的な不快感を抱えてしまうために上履きを履くことが耐えられない子どももいますし、大人になっても靴を履いていることが窮屈だと思う人もいます。側から見ていると、落ち着きのなさと見えがちですが、本人の感覚に共感できると、彼らとの間に信頼関係が生まれ、効果が現れてくると思います。

Cくん

注意が散漫になってしまうタイプの子どもたちの多くは、物の始末が得意とはいえません。そもそも、子どもの学習用具はとても多いのです。

余談になりますが、教室の中で子どもの様子を見ているときに、物を探す手伝いをすると驚かされることが多いものです。机の中にはびっしりと物が詰まっていて、その中からプリント一枚を探し出すのは、至難の業です。1日に6時間の授業をすると、その分の教科書もノートも入っていることになりますし、ドリルだとか副読本などを入れたら、机の収納力をオーバーすることは言うまでもありません。

学習用具は、机の中に入っている物に限ったことではなく、音楽や図工、習字道具、家庭科の裁縫箱など、たくさんあります。その収納場所についても、教室の設計に含まれているとは思えないのです。そんな環境ですから、Cくんのようなタイプでなくても物が床に散乱するのは当然のように思えてきます。

そうはいっても、大勢が長い時間生活する教室が、足の踏み場もないようでは困ります。特に整理整頓が苦手な子どもには、机の横に大きめの箱を置き、とりあえずはそこに入れるような指導が必要でしょう。放課後に、一緒に片付けるというやり方もあるのです。

Dさん

教師が説明している間であっても、思ったことは全て口に出してしまうタイプがDさんです。質問をしても、指名される前に回答を言ってしまいます。他に大勢の子どもたちがいる教室なのに、まるで教師と子どもが一対一で存在しているような雰囲気を作り出してしまいます。

「先生が説明しているときには、黙って聞きましょう」「発言のときには、手を挙げて、指名されてから答えましょう」といった授業規律を指導していくには、教師の根気が求められます。

しかし、彼らの話す言葉に注目すると、授業に関することがほとんどです。ネガティブな表現も少ないように思います。積極的に授業に参加しているからこそ、勇み足な発言が口からこぼれ落ちてしまうのです。ですから、そういった気持ちを認めていくことも大切です。

Dさんのように出し抜けに発言したときには、「とてもいい考えですね。次からは手を挙げてくれたら、真っ先に指名しますね」と返すことがあってもいいと思います。これは特別扱いではなく、「手を挙げると指名してもらえる」、「勝手に発言したときよりも褒めてもらえる」という体験を繰り返すことによって、授業規律を身に付けさせていく方法です。褒められたいという欲求が強い子どもが多いので、良さをしっかりと認めていってほしいと思います。

最後に、ちょっと気になることを付け加えておきたいと思います。

このタイプの子どもたちの中には、道徳性が育ちにくい子どもがいます。悪意がなくても嘘をつく、友達の悪口を言ってしまうなどです。大人は頭ごなしに叱ったり、最初から疑って話を聞いたりしますが、それも特性の一つだということを忘れないでいてほしいと思います。道徳の授業や普段の指導を通して、道徳性を粘り強く培っていく必要があるのです。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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