2020.10.24
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発達障害のある子どもへの支援の実際「動きやおしゃべりが止まらない子どもたちへの対応のヒント」(NO.9)

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

子どもの様子

授業を進める上で困ったなと感じさせるのが、動きやおしゃべりを制御できないタイプの子ども達です。教師が説明をしている途中でも、思いつくままに声に出してしまいます。「心の声が漏れている」といった状態にあるようです。子ども達の多くが思いを心の中に留めておくことができるようになる年齢になっても、そういう傾向が引き続き見られるのです。

この傾向にある子どもたちは、手や体を動かすことを制御するのも難しいようです。指先が何かに触れていないと不安な子どももいますし、身体がついつい動いてしまって姿勢が崩れたり、歩き出してしまったりする子どももいます。衝動性があるように見えることもあります。また、身体や指先の動きが不器用な様子が感じられることがあります。バランスよく動かすことが難しいのかもしれません。

一方、彼らの姿はエネルギーに満ちているように見えます。スイッチのオンとオフが切り替わることなく、常にオンの状態で止まることを知らないかのようです。

ただ、猛烈に働く大人のように活動状態が続いている様子とは異なり、不安定なソワソワした感じを伴っています。イメージで表現するならば、頭の中で常にビリビリと弱い電流が流れているような感じではないでしょうか。本人も、「止めたいのに止まらない」というイライラを抱えているのかもしれません。ですから、動きが止まらないからといって、叱るだけの指導では効果を期待できないということが想像できるでしょう。

対応のヒント

このタイプの子どもたちに大切なのは、エネルギーを意味のある動きに変えていくということです。動かずにはいられない衝動を抑えるのではなく、周囲の役に立つために動かすのです。クラスの中で係活動などの分担を決めるときには、配り物をするなど、動きの多い係を任せましょう。彼らは、とても意欲的に仕事をしてくれます。また、係ではなくても、お手伝いを頼むことも大切です。

授業中は、一部に動きのある活動を取り入れるといいでしょう。黒板の前で説明する、友達に教えるために歩き回る、実演をするときにやってもらうなどです。授業の全ての時間が、座ったままというのは、彼らにとって苦痛でしかありません。


彼らは、朗らかで活発な側面が度を越して、相手との距離が近過ぎる傾向にあります。「人が好きなんだな」と思わせるような親密感を、誰に対しても示すのです。感染症を予防するといった意図だけではなく、日頃から距離感を培っていくことが必要です。立っているときには、腕を伸ばしても触れない距離を保ち、相手に触れたり抱きついたりすることは好ましいことではないということを教えていかなければなりません。

面白い試みとして、普段と逆の動きをさせる活動をやってみることもお勧めします。動きや遊びを通して、身体を制御できるようにするのです。

漫画で示した例は、図形やト音記号などを逆から書く遊びです。ひらがなや漢字で行うと、せっかく身についた書き順を忘れさせてしまうので、文字で行うのは避けてください。

また、体育の準備体操などで取り組みやすい例も挙げました。前に歩いたあと後ろ向きに歩かせるなどの方法をとるものです。他にもたくさんの動きの中で、工夫して逆の動きを取り入れてみてください。「123」と唱えたものを「321」と唱え直させる、楽器で「ドレミ」と弾いたあとに「ミレド」と弾かせるなど、様々なバリエーションを考えていくと楽しいです。


私はある講演会で、「子どもたちがぼんやりする時間を作ることはよくない、次々とやるべきことを明示することが大切」といった内容の話を聞いた記憶があります。子どもを追い詰めるようなハードスケジュールで学校生活を送らせることには疑問ですが、授業中の一定の範囲で、テンポよく課題をこなしていく時間を作ることは有効だと思っています。「夢中になることで集中する」という姿を育てていくことは、彼らと関わる上での大きなヒントになるかもしれません。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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