カリキュラム・マネジメントの実行とチェック
前回は、一教員としての生徒に育成したい資質・能力からステップアップさせて学校としての生徒に育成したい資質・能力につなげていく、カリキュラム・マネジメントのPDCAサイクルのPの部分について書きました。
今回はDとCの部分について書きたいと思います。
福岡工業大学附属城東高等学校 教務主任 石丸 貴史
初回授業で
もちろん、それが悪いというわけではありませんが、ともすれば抽象的な話になってしまうこともあり、全ての教科・科目でオリエンテーションが行われると、逆に生徒は混乱するのではないかとも思います。
一方で、オリエンテーションで生徒に対して「どのような資質・能力を育てたいのか」まで踏み込んで説明をしているケースは意外と少ないのではないかとも感じています。
具体から抽象へ
実際にやってみながら教科書の読み方や使い方、ノートの使い方、(新型肺炎コロナウイルス感染拡大防止の観点からやり方に工夫が必要ですが)ペアワーク・グループワークを取り入れる際の進め方や注意点、授業に対する姿勢、家庭学習をどのように進めるのかなど、具体的に示します。
そのうえで「なぜそのようにするのか?」を「育成する資質・能力」の観点から説明します。実際に具体的にやった後にその活動が、知識・技能をつけるためなのか、思考力・判断力・表現力を育成するためなのか、主体性・多様性・協働性を育成するためなのか、といった学力の三要素をものさしとして、それに沿って抽象化していきます。学年や対象生徒の状況に応じて、一定回数「実際にやってみる」ことを繰り返した後で「育成する資質・能力」に沿った抽象的な話にしていきます。
また、「育成する資質・能力」は単元による授業の節目、定期考査による授業の節目、学期による授業の節目など、様々な節目の場面でその時の状況に応じて説明の仕方や強調するポイントを調整しながら、繰り返し説明し続けます。そのようにして、毎回の授業はもちろん、単元による授業の節目、定期考査による授業の節目、学期による授業の節目などで、一教員としての授業におけるカリキュラム・マネジメントのPDCAサイクルのDの部分を実践します。
そのような節目の中で、最も重視するのは定期考査による節目です。
定期考査
定期考査は、カリキュラム・マネジメントのPDCAサイクルのDの部分の集大成と捉えています。
定期考査が、「育成する資質・能力」が計画・意図通りに育っているのかをチェックする最善の機会です。限られた時間数で、目標とする平均点を意識しつつ、どのような知識・技能を問うのか、どのような思考力・判断力・表現力を求めるのか、教員の腕の見せ所です。
定期考査を節目にカリキュラム・マネジメントのPDCAサイクルのDの部分を進めるのであれば、カリキュラム・マネジメントのPDCAサイクルのCの部分は定期考査の結果分析になるのは、当然の流れであると思います。
評価は合計得点が最も大きな基準としてつけられることになるでしょうが、大問はもちろん可能な限りの小問に分けての結果分析、知識・技能・思考力・判断力・表現力に分けての結果分析、授業中の主体性・協働性との組み合わせによる結果分析など、様々な観点での結果分析ができると思います。
このような結果分析を、同じ問題で定期考査を実施したクラス間での比較や、各クラスで教科ごとの比較などをすると、広い範囲で生徒の学習状況が把握できるのではないかと思います。
言語化と数値化
ただし、いま求められているカリキュラム・マネジメントは、習慣として実施していることを言語化や数値化して見える化し、経験が浅くともある一定の水準で把握ができる状態にすることだと考えています。
定期考査を中心としたカリキュラム・マネジメントに限らず、経験豊富な先生の思考を言語化・数値化していただけると、学校の教育力は確実に伸びると感じています。加えて、働き方改革にもつながる業務の整理にもなると感じています。
次回は
今回は、カリキュラム・マネジメントのPDCAサイクルのDとCの部分について書きました。
次回は、今回の内容にICTを組み合わせてできることについて書きたいと考えています。まだ漠然と考えているだけで、十分に言語化できていませんが、新型肺炎コロナウイルス感染拡大防止のための臨時休校でやや短くなった夏休みの間に思考を整理して言語化したいと考えています。

石丸 貴史(いしまる たかふみ)
福岡工業大学附属城東高等学校 教務主任
高校での新学習指導要領導入を控えて、「カリキュラムマネジメント」・「I C T活用」を中心に、日々の授業改善に取り組んでいます。大学を卒業後すぐに会社員として塾・予備校業界で勤務をした経験も活かしながら、社会で活躍できる生徒を育てるべくどのような資質・能力を育成すれば良いかを試行錯誤しています。
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