PDCAサイクルのAとしての授業改善
カリキュラム・マネジメントPDCAサイクルのAとして、教員として「改善」していくべき最たるものは「授業改善」に他ならないと考えます。したがって今回は、授業改善の視点について考えてみたいと思います。
福岡工業大学附属城東高等学校 教務主任 石丸 貴史
前々回に「カリキュラム・マネジメントの実行とチェック」としてPDCAサイクルのDとCについて書きました。今回こそはAについて書きたいと思います。
AはActやActionの頭文字で、日本語では「改善」と称されていることが多いですが、カリキュラム・マネジメントの「改善」を、いつ・どのように行うのが良いのでしょうか?
正直なところ、明確な答えはまだ出ていません。
ただし、教員として「改善」していくべき最たるものは「授業改善」に他ならないと考えます。
したがって今回は、授業改善の視点について考えてみたいと思います。
授業改善の視点
授業改善は教員側からと生徒側からの両面の視点から行うべきだと思います。
個人的なことですが私自身は、手帳に毎日・毎回の授業でうまくいったこと・うまくいかなかったことをメモするようにしています。社会人生活の中で、業務別に手帳やノートを分けるなど試行錯誤をしてきましたが、いまは1日1ページのシステム手帳に適宜ノート型のリフィルを挟んで活用しています。システム手帳に授業以外の事もすべてまとめてあるので、4色ボールペンで色分けして区別をしています。
書くことつまり言語化することで前回の授業はもちろん、1年前や同じ授業を行った3年前を見返すことができるので、振り返りを行い授業改善のための言語化による可視化をすることは大切だと思います。
また、教員間で授業見学を行うことも有効だと思います。研究授業など特別な時間を取らなくても、日常的に教員が互いの授業を見たり見せたりする雰囲気ができると良いなと思います。
年齢的なものなのか立場の問題なのか、若手教員に授業見学をして良いか問われることが時々ありますが、絶対にノーと言わないと決めています。授業を見られることはちょっと緊張しますが、その緊張はネガティブなものよりもポジティブなものとして受け取るように心がけています。さらに、授業見学を行った後は短時間でも良いので振り返りの時間を持ち、率直な意見を聞くようにしています。振り返りの時間に取り組みの根拠を説明する場面があると、無意識に行っていたことを意識することができます。例えば、授業をリズム良く進めるためにどうするべきか?を考えた際に、互いに授業中の発問回数を数えたことがあります。発問回数を数えることも授業改善のための数値化による可視化だと思えるようになりました。
いずれにせよ教員側からの視点での授業改善は、方法は様々あると思いますが、教員が自分自身と向き合い、客観的に授業を見つめ直すことだと思います。
生徒側からの視点での授業改善は、4月に書いた「授業で育成する資質・能力」をルーブリックとして活用し、各項目に○×をつけたり自由記述で書かせたりして振り返りをさせます。このような振り返りは、前々回の内容のように定期考査をカリキュラム・マネジメントPDCAサイクルのCとして捉えるのであれば、定期考査ごとにやらせるべきだと思います。振り返りの結果を集計し、教員の振り返りや、定期考査の得点状況などを組み合わせてみることで数値化することができるのではないかと考えています。ただ、定期考査ごとに行わせる生徒の振り返りでは、ぼんやりとしたものになってしまうことが避けられないのかもしれません。できることなら毎回の授業で振り返りをさせて、その結果を集計したいところですが、毎日数コマの授業をやっているとなかなか難しいとも思います。
そこでICTの出番です。
ICTを活用して
アンケートフォームを作成し、そのURLを配信して生徒に入力させることで自動的に集計してくれる仕組みは、いまや多くあります。○×をつけさせたものの数値集計はもちろん、自由記述で書かせた内容もテキストデータとしてワードクラウドなどを用いて可視化する方法も多くあります。
それまで教員が直感的に行っていたことを、ICT利活用で行っていくことは大変であるとか面倒くさいといった声もあります。理由はおそらく、コンピュータに適切な指示を出さなければいけないからだと思います。コンピュータを動かす指示が直感的なものでは思う通りの結果は得られません。これは自動車を動かしたり、重たい荷物を持ったりする時と同じで、最初に大きな力を必要とする大変さのようなもので、動かし始めると最初ほど大変ではありません。
最初の「やってみよう」が大切です。
まとめ
以上のように、教員側からの視点での言語化による授業改善と、生徒側からの視点による数値化による授業改善の両方を取り入れながら、年間指導計画に沿った日々の授業実践を振り返り、改善し続ける姿勢こそがカリキュラム・マネジメントのAだと思います。

石丸 貴史(いしまる たかふみ)
福岡工業大学附属城東高等学校 教務主任
高校での新学習指導要領導入を控えて、「カリキュラムマネジメント」・「I C T活用」を中心に、日々の授業改善に取り組んでいます。大学を卒業後すぐに会社員として塾・予備校業界で勤務をした経験も活かしながら、社会で活躍できる生徒を育てるべくどのような資質・能力を育成すれば良いかを試行錯誤しています。
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