○回目‼︎ 〜再チャレンジに目を向ける〜
新型コロナウイルス感染症対策で休校になって早2カ月。経験のないこの出来事に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
この臨時休校にあたって現在では、学校や教育委員会、企業などが動画コンテンツを準備したり、課題プリントを配布したりして子どもたちの学習に少しでも役立てようと試行錯誤しています。しかし、動画コンテンツにしても、課題プリントにしても、基本的なスタンスは自習です。子どもたちの自主的に学習する力が必要なことは間違いありません。
大阪市立放出小学校 教諭 大吉 慎太郎
自習中心の生活は自信を育てるチャンス
多くの保護者の方は、長引く休校に不安を感じていることと思います。普段なら、登校の準備をしているはずの時間に寝ている、学校に行き授業を受けていた時間にもゲームをしたり動画を見ていたり、そんな生活を身近で見ていて学力は大丈夫なのか、いや、それ以前に元の生活リズムを取り戻すことができるのか。そんな声が頻繁に聞こえてきます。もちろん、コツコツと毎日、自分のやるべき課題をこなしリズムを崩さないようにしている子もいるとは思いますが、義務教育段階の子どもたちには難しいのではないかと感じます。
しかし、私たちはつい子どもたちに毎日の計画的な学習や規則正しい生活リズムを求め、それを当然のように感じていますが、果たして、大人はそれを実行することができるのでしょうか。
例えば、張り切って始めた資格の勉強、増えすぎた体重を落とすためのダイエット、または、元旦に立てた今年の目標、それらを継続できる方は少数でしょう。かくいう私も毎日のウォーキングがご無沙汰になっています。
このように、なかなか計画や目標を立てたとしても「続ける」というのは容易ではありません。「続ける」ことは素晴らしいことではありますが、もう一つ「再チャレンジする」という価値観を持って子どもと接することが大事だと考えます。
「過去の自分に負けない」は大きなプレッシャー
「“○日間”頑張った‼︎」
「今日も“○時間”勉強した」
子どものこうした言葉に注目して、評価することは多いです。しかし、こうした毎日は正直苦しいものです。明日は……、今日以上、せめて同じくらいの成果は求められることになります。下回ったり、停滞したりすると、周りの大人、そして、子ども自身もなんだか残念な気持ちになります。大体が決心した初日は、どの子も張り切って、その子にとっての大記録になりがちです。それが日が経つにつれ重荷になっていき、初日を超えられない、続けられない自分に自信がなくなり、やがてやめてしまいます。子どもを例に書きましたが、多くの大人も似たような経験があるはずです。
そこで注目してほしいのが「再チャレンジ」です。毎日やることは素晴らしいことです。しかし、それは続けられる可能性は低いです。大人ですら難しいのですから。だから、子どもができなくても責める必要はありません。
課題や目標をこなせなかった日、全く取り組めなかった日があってもそんなものです。ですが、また「再チャレンジ」して始めるタイミングがあります。その日には、
「今日からまた“○回目”のチャレンジだね」
とプラスになる声かけをしてあげましょう。この“○回目”というのもきちんと記録しておくといいです。
例えば、目標を達成できた日にカレンダーにシールを貼ることは学校でもよく見られる光景です。そこで、ただシールを集めていくだけでなく、連続記録が途切れても、新しくチャレンジを始めた日にはキラキラシールを貼るなど、“再チャレンジ”は特別にすごいことであると認めましょう。
もう一度立ち上がるのは、素晴らしいことだと伝え、短時間・短期間で終わっても「再チャレンジ」することはとても価値のある行為なのだと繰り返し励まし続けます。やめたこと、やらなかったことに一喜一憂するのではなく、立ち上がりもう一度挑戦することにも価値があるのだと声かけを続けることが、子どもの自信を育てることにつながっていきます。
続けても……、休んで立ち上がっても……、どっちでも記録更新‼︎
「“連続○日間”達成‼︎」
「今日は“○時間”頑張った。最高記録」
これらは続けることで自信をつけることができる価値です。言うまでもなく素晴らしいことです。そして、この価値観に加えて
「“○回目”の再チャレンジ」
という面にも目を向けてみましょう。そうすることで、やめてしまっても「また頑張ろう」と立ち上がる意欲を持つことができるようになります。そして、この“○回目”は減ることがありません。何度妥協してやめてしまったとしても、「再チャレンジ」すると必ず“数が増える”のです。
だらけてしまって記録が途切れると、いちばん残念な気持ちになるのは本人です。続けられなかった自分に少なからず自信を失います。しかし、複数のモノサシを持って、立ち上がって再度挑戦することにも価値があるのだということを伝えていくとよいです。
過去に例がない新型コロナウイルス感染症対策による休校。この長期にわたる自学自習が求められる期間だからこそ自主性を持って、何度でも「再チャレンジ」する気持ちを育てるチャンスです。
大吉 慎太郎 (おおよし しんたろう)
大阪市立放出小学校 教諭
教務主任として「学校の業務の改善」と「行事の精選」を行なっています。また、「プログラミング教育」や「ICTの推進」にも取り組んできました。授業におけるICT活用についての実践を多くの先生と共有しあっていきたいと考えています。
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