「よく話し合う」のは行事精選の赤信号!? ~悪さ加減の選択で前に進めよ~
来年度から小学校では新学習指導要領の実施で英語の教科化、プログラミング授業の必修化が行われます。それと同時に残業時間が月45時間以内、行事の精選など、新しいことを取り入れつつ、現在の業務の見直しも図っていく必要があります。夏ごろには、
「まだ少し時間あるな。じっくり校内で話し合って、みんなの意見を聞いていこう」
などと考えていませんでしたか。そして、あと新年度まで2ヶ月を切った今
「まだ何も決まっていないどうしよう」
と、なっている方もいるのではないでしょうか。
その理由は、【よく話し合っている】からです。
大阪市立放出小学校 教諭 大吉 慎太郎
“良いか悪いか”ではなく、“悪いかもっと悪いか”
よく言われる話ですが、教師というのは良くも悪くも真面目です。その真面目さ故に、よく話し合って、みんなが納得する『最高の案』を作ることを目指します。しかし、「何かを決めよう」、ましてや「削減しよう」というときに『最高の案』を作ろうとすると何も決まらないまま時間だけが過ぎてしまうという状態に陥りがちです。
個々の教師にとって『最高の案』の定義はさまざまです。教師としての大切にしたい部分は千差万別であり、また、そこに優劣もありません。それを全体で話し合ったところで「話し合い」は平行線、いつまで経っても決まらず、結果、今までとほとんど変わらない案の出来上がりです。
福沢諭吉の言葉に、
--------------------------------------------------------------------------------
「政治は悪さ加減の選択である」
--------------------------------------------------------------------------------
というものがあります。“良いか悪いか”ではなく、“悪いかもっと悪いか”という基準で選択しようというものです。これは政治だけでなく、「話し合い」全般に言えることではないでしょうか。
いくら話し合っても『最高の案』が出てくることは困難でしょう。ならば、
「あんまり良い案じゃないけど、今より少しマシ」
というくらいの気持ちで受け入れてもらえる案を作りましょう。そして、それを目指すためには「話し合い」を極力減らしましょう。話し合えば話し合うほど、すべての意見を尊重しなければという空気になってしまいます。
行事精選は苦渋の選択
教務主任として、行事精選の案を作ることは苦渋の選択の連続です。突き詰めていくと、どの行事も子どもの成長に少なからず影響を与えてきました。未来ある子どもたちの成長を思えばこそ採用され、実施されてきた行事や取り組みです。しかし、新たな取り組みが増える中、教師も子どももすべてを実施することは時間的にも体力的にも現実的ではありません。
いくら話し合っても『完全な納得を得られる案』を作ることはできません。『今よりも少しマシな案』で進めていくことが大切です。
「悪い」状態と、「良くなっている」状態は両立する
最後に2019年に大ヒットした書籍『FACTFULNESS』(ハンス・ロスリング著、日経BP、2019年)で述べられている【世界の見方を歪める「10の思い込み」】のうちの一つ、ネガティブ本能に書かれた一文を紹介します。
--------------------------------------------------------------------------------
「悪い」状態と、「良くなっている」状態は両立していることを理解すること。
--------------------------------------------------------------------------------

大吉 慎太郎 (おおよし しんたろう)
大阪市立放出小学校 教諭
教務主任として「学校の業務の改善」と「行事の精選」を行なっています。また、「プログラミング教育」や「ICTの推進」にも取り組んできました。授業におけるICT活用についての実践を多くの先生と共有しあっていきたいと考えています。
同じテーマの執筆者
-
京都教育大学付属桃山小学校
-
福岡工業大学附属城東高等学校 教務主任
-
北海道札幌養護学校 教諭
-
元徳島県立新野高等学校 教諭
-
栃木県河内郡上三川町立明治小学校 教諭
-
京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究会
-
大阪市立堀江小学校 主幹教諭
(大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年) -
長野県公立小学校非常勤講師
-
浦安市立美浜北小学校 教諭
-
東京都東大和市立第八小学校
-
北海道旭川市立新富小学校 教諭
-
尼崎市立小園小学校 教諭
ご意見・ご要望、お待ちしています!
この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)
この記事に関連するおススメ記事

「教育エッセイ」の最新記事
