2020.01.28
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「まいねーむ。いず。...。」 ~小学生は大学生より発音上手!?~

スマートフォンの翻訳アプリが便利です。先日、京都駅で外国人の観光客に話しかけられたのですが、翻訳アプリのおかげでなんとか奈良へ向かう電車まで案内できました。2020年は東京でオリンピックも行われます。翻訳アプリはますます活躍していくのではないでしょうか。
今回は英語の授業にICT・翻訳アプリを活用していくお話をします。

大阪市立放出小学校 教諭 大吉 慎太郎

「まいねーむ。いず。…。」

大学時代、3週間サンフランシスコに語学研修に参加したことがあります。そこで英語を使ったコミュニケーションやフィールドワークなどを様々な国から来た学生と取り組みました。その最終課題にパワーポイントで作成したスライドでサンフランシスコを紹介するというものがありました。
最終日の本番。会場は大学の講義室。薄暗くして、いかにもプレゼンといった様子で雰囲気もバッチリです。3週間ともに学んだ仲間が見守る中、同じく日本から来た女子学生の発表になりました。
「まいねーむ。いず。…。」
ん?なにかおかしい。3週間、英語のコミュニケーションを学んだはずなのに、目の前には、今日初めて学んだ言葉を話しているような女子学生の姿でした。
来年度から小学校でも英語が教科となりますが、現在でも5・6年生では「外国語活動」が行われています。私が小学校のときと比べて英語に親しんでいる子が多く、初めての外国語活動の時間でも
「My name is …」
と多くの子が元気よく、そして流暢な発音で自分の名前を言ってくれます。私が語学研修の最終日に聴いた日本人女子学生の自己紹介よりあきらかに上手です。

「My name is …」が「まいねーむ。いず。…。」に

でも、実は外国語活動でも回数を重ねていくにつれ、徐々に「まいねーむ。いず。…。」に近づいていってしまう子もいます。無邪気に「My name is …」と楽しんでいたころから、思春期以降では英語の発音ですら演技を伴う恥ずかしさが芽生えてしまうことがある。誰でも少しは思い当たる節があるのではないでしょうか。
中学校になると英語は「主要教科」や「5教科」などと呼ばれる括りに属してしまうので、ノートにまとめて学習したり、単語を暗記したりすることをイメージしがちですが、英語を話すという観点でみるとスポーツや芸術と同じく「実技教科」に近いのではないかと感じます。

人間よりもウォシュレットが好き!?

実技であるならば練習あるのみです。どんどん話していきましょう。とは言っても、英語をノリノリで話している自分。なかなか気恥ずかしい感じがしませんか。正直、私は苦手です。たぶん、クラスの中にも一定数そんな子はいるはずです。

ここでもICTが活躍できそうです。今回は翻訳アプリの出番です。まずは、

“英語 → 日本語”

に設定してください。そこから音声入力でマイクに向かって

「ぶっく!」

と話してみてください。画面を確認すると、
“(英語)book /(日本語)本”
と表示されていますか。表示されていたら成功です。

英語はコミュニケーションなので、ペアをつくって互いに発音しあうことも大事ですが、英語が苦手であったり、不安を感じていたりする学習者にとってはなかなかハードルが高いです。


もちろん、日本でもこうしたテクノロジーによる変化を受け入れない層は一定数いると思いますが、例示と対話によって説得できるのではないかと思っています。

たとえば、介護ロボットの導入を促すときは、こんな例を出せばいい。ウォシュレットに自分のお尻を洗ってもらうのと人間に洗ってもらうのとどっちが好きですかと聞くと、普通、大半の人はウォシュレットと答えるはずです。

これは『日本再興戦略』(落合陽一著,幻冬舎 2018年)の中のものである。英語をそれっぽく話している自分、伝わるかわからないまま発声しないといけないというハードルに直面している学習者にとっては、先生やペアの友だちに英語を聴かれるよりもタブレット機器に聴かれて良し悪しを判断されるほうが気楽であり、取り組むハードルが低いのだと思われます。

実際、クラスで翻訳アプリを使って発音練習を実施すると

「らいぶらりー!」
「すてーしょん!」
「でぱーとめんとすとあ!」

など夢中で取り組みます。一つひとつの発声のあとには

「よっしゃー!」
「やったー!」
「あー、もう一回」

など、口々にしながら何回も繰り返していきます。成功したら英語の発音に自信がつきますし、失敗しても自ら成功するまで再チャレンジしていきます。不思議なことですが、人間同士で失敗と判断されたら取り組みづらくなるのにICTだと気にせず再チャレンジします。人間に聴かれるよりもタブレット機器に聴かれる方が、学習者にとっては安心して取り組めるようです。発音してほしい単語や短文をたくさん用意しておけば、子どもたちが次々に取り組んでいくので前回、前々回の「結果的に20問以上の問題を自ら解いていた」と同じように非常に多くの英語を話すことにつながります。

コミュニケーションを学ぶという性質上、最終的には人同士の関わりが必要です。しかし、いきなり対面で判断されるのもハードルが高いといえます。ICTの活用でそのハードルに挑戦するための自信をつけてほしいです。

大吉 慎太郎 (おおよし しんたろう)

大阪市立放出小学校 教諭
教務主任として「学校の業務の改善」と「行事の精選」を行なっています。また、「プログラミング教育」や「ICTの推進」にも取り組んできました。授業におけるICT活用についての実践を多くの先生と共有しあっていきたいと考えています。

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