2019.05.20
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運動会をチャンスに ~魔の六月を迎えることのないように~

10連休、リフレッシュされましたか?10連休後の子どもたちの様子はいかがでしょうか?
元気いっぱいの子どもたちが多いことでしょう。近頃は「春の運動会」が圧倒的に多くなっています。連休の疲れが出る頃に、運動会の練習。さらに疲れてしまい、運動会明けには魔の六月を迎える......こんなサイクルにならないようにするために、この時期の指導のポイントについて書かせていただきます。

熊本市立龍田小学校 教諭 笹原 信二

運動会の目的を再度考えよう 

働き方改革の名の下「時短」が叫ばれています。ブラック化していると言われる学校。行事の見直しが各学校で行われていることでしょう。
運動会もそのひとつ。午前中だけの運動会になっているところも増えてきているようです。その流れは仕方がないと思います。校内で様々な議論があって、学校の独自性を出すことは運動会に限らず、これからの時代に必要なことだと考えます。

しかし「忙しいから」なんでも減らせば良いという意見や「春の運動会はうまくいかなくてもよい。秋だと期待されるから春がいい」というような意見はいかがなものかと思います。運動会も遠足も学習発表会も音楽会も、何もない学校。楽しいでしょうか?運動会には運動会の目的があるのです。

以前は、運動会の役割はもっと大きかったと思います。特に地域社会における貢献は。地域社会の連帯感を再確認し、よりいっそう強固なものにすることが大きな役割のひとつだったと考えます。

地域社会の連帯感は、防災教育で最も重要な視点だと考えます。しかし、昨今は「隣に誰が住んでいるか?」知らないとか、マンションなのでプライバシーを大切にしたいとか、地域社会のつながりが希薄になっています。「我が子の出番さえ見れば、あとはどうでもいい」こんな風潮から、午前中だけの運動会になるのは。。。

『小学校学習指導要領解説 特別活動編』(平成 29 年告示)の学校行事の指導計画の中の
「(4)家庭や地域の人々との連携、社会教育施設等の活用などを工夫する」には、次のように書かれています。
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学校行事において,体験的な活動を効果的に展開するために,家庭や地域の協力を得たり,社会教育施設を活用したりするなどの工夫をすることが大切である。  
例えば,学校が地域社会と協力して教育効果を上げるために,学校の教育について積極的に地域の人々に対して学校行事を公開し,理解してもらう必要がある。(中略)地域の伝統文化に触れる活動や地域の行事と学校行事との関連を図って実施するなどの工夫も考えられる。
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こんな時代だからこそ、地域を大切にしたいものです。

さらに指導要領解説で、運動会に関係するところを抜粋してみます。
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(3) 健康安全・体育的行事
① 健康安全・体育的行事のねらいと内容
 心身の健全な発達や健康の保持増進,事件や事故,災害等から身を守る安全な行動や規律ある集団行動の体得,運動に親しむ態度の育成,責任感や連帯感の涵養,体力の向上などに資するようにすること。
(中略)
② 実施上の留意点
(中略)ウ 運動会などについては,実施に至るまでの指導の過程を大切にするとともに,体育科の学習内容と関連を図るなど時間の配当にも留意することが 大切である。(後略)
エ 運動会においては,学校の特色や伝統を生かすことも大切である。(中略)
児童会活動やクラブ活動などの組織を生かした運営を考慮し,児童自身のものとして実施することが大切で ある。
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運動会で身につけさせるべきことは何か?運動会の事前事後指導はどうするか?本来の目的は何だったのか?何のために行うのか?考えるべきは、時短のみではなく、その内容だと思うのです。運動会の種目は考慮する必要があると思います。
表現運動で連帯感を高めることをねらい、個人の伸びをねらうのならば、学級の高まり、深まりを、例えば全員バラエティーリレーでねらうなど、学校全体で議論し、改革を進めていく時期だと思います。ダラダラと長く練習するのではなく、効率よく練習を進める工夫です。

松下幸之助の名言
「人より一時間余計に働くことは尊い。努力である。勤勉である。だが、今までよりも一時間少なく働いて今まで以上の成果をあげることもまた尊い。そこに人間の働き方の進歩があるのではないだろうか。」

この発想がこれからは必要でしょう。運動会の目的を再度考えて、成果を上げる工夫が。

先手必勝 ~事前事後指導を大切に~

「春の運動会」では、身体が暑さに慣れていない、水分が適切にとられていないなどの理由から、熱中症になるケースがあります。これを防ぐのは、事前の指導です。暑くなってから指導しては遅いのです。これは、他の問題でも同じです。先手必勝です。
運動会の練習が始まってから、目標をたてたり、評価の基準を考えたり、伸びたことを実感させる方法を考えるといったことでは遅いのです。

事前指導は「先手必勝」です。「見通し」をたてておきましょう。そして、練習では振り返りをしっかりさせましょう。「伸びた」という視点で振り返りをさせましょう。
運動会当日は、子どもたちは一生懸命努力してくれるはずです。成長したこと、がんばったこと、素晴らしかったことなどを、言葉にして伝えましょう。学級通信に写真を載せて、子どもたちの声を伝えるのもいいでしょう。
事後指導と書くと「先手」は?になるかもしれませんが、運動会はゴールではありません。ここで培った力を今後どう生かすのか、その点を先に手を打って考えさせておくのです。とにかく、指導は「先手必勝」です。

先手必笑 ~運動会練習中の授業~

運動会の練習に力が入るのは当然です。しかし、それで他の教科の授業に力が入っていない、になっては本末転倒です。運動会練習期間中の、運動会練習以外の授業にどう取り組むか、実はここに大きなポイントがあります。
「見通し」と「振り返り」。事前事後指導でも、通常の授業でも、大変重要です。そして授業では「先手必笑」です。笑顔2割増しくらいの気持ちで授業に取り組むといいでしょう。
そうすれば、運動会ロスがなくなってきます。6月は祝日がない月なので、3連休はありません。10連休がよかったとか、運動会で燃え尽きたとか、にならないように!忙しいのはわかりますがが、笑顔で、運動会をチャンスだと思って取り組みましょう。

笹原 信二(ささはら しんじ)

熊本市立龍田小学校 教諭
37年の教師人生を終えたが、もう少し学びたく再任用の道を選択。過去の経験を生かしつつ、新しいことにもチャレンジしていきたい。

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