2019.01.21
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縁の下の力持ち

教諭から管理職になり、見えてきたこと。それは、1人で仕事をしているのではないということ。たくさんの見えない力が包み込むように私たち教師を支え、子ども達の成長につながっています。

兵庫県公立小学校勤務 松井 恵子

ボランティアの見守りの方々

たくさんのシニア世代の方が、子ども達の登校を見守ってくれています。本校にはその中に、20年以上登校指導をしてくれている方がいらっしゃいます。
教頭として赴任して2日目。まだ始業式も始まっていないころです。
真っ暗の中、学校を閉め帰ろうとしていると、学校の前を散歩する紳士がいらっしゃいました。私があいさつをすると、「ぼくはね、ここの学校の子どもをずっと見守っているんですよ」と。びっくりでした。不安の中のスタートの私でしたから、会話をかわし、その出会いにほっとしました。
学校評議員も何年もしてくださっているその紳士に、あらためて連絡を差し上げ、学校評議員をお願いしたときのことです。
「本当は80歳もこえているから、そろそろリタイアしようと思ったけれども、教頭と校長の人柄に、あと3年ほどはがんばらせてもらうよ」
その言葉に感激と感謝でした。学校行事や地域の方との会の時、または毎朝の登校指導の時、ご意見やご教授をいただき、本当にたくさん支えられました。

交通指導員さん給食調理員さんに感謝

登校の見守りに交通指導員の方がいらっしゃいます。登校も下校も子ども達を丁寧に見てくれて、声をかけてくれます。学校に行きしぶる子にもやさしく声をかけてくれ、それを私たち教師にも知らせてくれます。感謝です。
それを伝えると
「教頭先生の笑顔や優しい言葉に、私らもがんばろうと思えるのよ」
感涙でした。私も、がんばろうと思えるのでした。
給食調理員の方々
毎日おいしい給食を作ってくださっている給食調理員さん。担任時代、子ども達と給食を返しにいく時に、「ごちそうさま!」と大きな声で私自身がまずあいさつ。
「おいしかったです~~!!!」と大声で私。本当においしい!私の体と心の栄養の源ですもの(晩ご飯も朝ご飯も炒め物中心の我が家。栄養バランスと手間のかかった献立と調理に感謝感謝です)。
すると、子ども達も「今日の○○がおいしかったです!」など言いながら、食器を返しにいくように・・・。それに、季節のメニュー、和食など現代の子ども達がお家ではあまり口にしないものを提供してくれます。
秋のサンマの季節。サンマの塩焼きとすだちが添えられて出てきたときのことです。ある1年生が「先生、このみかんは、皮をむいて食べるの?」すだちをしぼってサンマにかけて食べるということを知らなかったのです。
食べ方を給食で教えてあげました。魚嫌いの子も増えています。だから、骨の取り方も教えてあげたり、低学年などでどうしても骨を取るのが難しい子には、私がある程度とってあげながら、「おいしいよ~先生、このお魚大好きなの。体も、もりもり強くなるよ~」と笑顔で言います。すると「うん!そう!そう!ぼくも好き!」「私も!」そんな会話の中、食べたことのないものをちょっとずつ口にする子が増えていきます。

『仕事』『立場』ではないところでのつながりが、今の私を支えてくれている

誰かわからない相手には、無表情であいさつもほどほどという若者が増えているのではないでしょうか。感覚だけでもの申しているかもしれませんが、コミュニティーの中で、関わりがないという人はいません。
今の子は不審者対応として、知らない人と関わってはいけないと教えられていますから、それも仕方ないことになっているかもしれません。ですが、今まで私が話したことは、立場や仕事としてつながっていることではなく、人と人としての関わりから生まれたものです。
交通指導員さんから「松井先生の人柄は、他の指導員から聞いてるよ。神対応って!先生、がんばって!」と言っていただいたことがあります。神対応なんてとんでもなく、私の素直な想いをみなさんが受け止めてくださっているだけのことです。
それに、足下を支えてくれている方々には、本当に感謝の気持ちだからです。
教諭という立場から教頭という立場になり、不安や戸惑いの連続の1年でした。支えてくれたのは、校長先生始め、教諭の先生方はもちろんですが、縁の下の力持ちである方々に、どれほど救われたかわかりません。
そんな感謝を、また、『松井先生』の力に変えて、教頭として教諭として、先生方や子ども達を守ろうと思うのです。
今日も校舎を走り回り(廊下は走ってはいけませんよ~笑)悩みを分かち合い、子ども達や若い先生方に笑顔で安心を届ける私らしい教頭先生で、がんばります。
若い先生方、あなたの周りの縁の下の力持ちを見つけられる人になってください。

松井 恵子(まつい けいこ)

兵庫県公立小学校勤務


兵庫県授業改善促進のためのDVD授業において算数科の授業を担当。平成27年度兵庫県優秀教職員表彰受賞。算数実践全国発表、視聴覚教材コンクール特選受賞等、情熱で実践を積み上げる、ママさん研究主任です。

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