教科書を使ったアレンジ授業のススメ
研究授業は、教材研究に時間をかけて、提案性も持たせて、つくりあげていくことでしょう。普段の授業も大切にしたいものです。普段から、研究授業と同じくらい時間をかけて日々の授業を行うことはたいへん難しい。でも、普段の授業こそ、大切にしたい。
そこで、教科書をもとにしつつ、子どもの意欲や思考に添った教科書アレンジ授業をしましょう。
兵庫県公立小学校勤務 松井 恵子
6年生『速さの実践』より
本校で用いている教科書には、3種類の動物(カンガルー・キリン・ダチョウ)の写真と、それぞれ何メートルを何秒で走るのかというデータが載せられており、一番速い動物を探そうという問題があります。練習問題では、ゾウのデータを見て、「1秒で何m進むか調べましょう。」というもので締めくくられています。
これを、アレンジ。
3種類の動物を比べる時に、「1mあたり何秒か」と「1秒当たり何m進むか」で比べていくのですが、子ども達には出来るだけ、意欲を持って取り組ませ、自分ら「解決したい」と思わせたいものです。
そこで、100m走のボルトの世界記録と50m走のベイリーの世界記録を出します。おのずと、自分の記録と比べることでしょう。
だいたい、6年生の50m走の記録は8秒ぐらいとして、同じ道のり50mをベイリーは5秒台で走る。同じ道のりを走る時は、秒数は短い方が、速いということを押さえる。
8~9秒という同じぐらいの時間で、自分は50m走るけど、ボルトは100m走っている。同じ時間なら、長い距離を走った方が、速い。
この比較の仕方を押さえておくのです。
、それぞれ
動画で意欲付け
本日の課題は、「人類は、次の動物から逃げ切れるか」
として、教科書に掲載されている3種類の動物の写真を見せる。本校では、全学校の全クラスに50インチのテレビとパソコンがつながっており、高学年はタッチパネルにもなっているので、テレビにパソコンの画像を映して、この授業を行います。
人類代表は、ボルト。
データを見せる前に、動画のリンクを用意しておいて、それぞれの動物の走る映像を見せる。見た感じだけでは、わからないと子供達は感じることでしょう。
そうなってから、データを見せる。
活動はシンプルに
○秒あたり何m進むかを考えれば、比べられることを押さえたいので、その計算をするときに、迷いがでると考え方が飛んでしまい、計算で迷ったことだけが授業後に残ることもあるでしょう。授業の活動は1つ。
今回は、考え方をしっかり学んでほしいから、計算は電卓を使わせます。
練習問題はそのまま提示
練習問題は、ゾウが1秒で何m進むかということ。これは、そのまま提示して、その後に付け加えます。「ゾウからボルトは逃げ切れるかな」
ここで、1秒当たり何m進むかを全員に押さえさせます。
1秒当たりを出しておいて、秒速・分速・時速につながっていくからです。必ず押さえるべきところは、逃さず、おさえておくこと。これも大切です。
少しのアレンジです。これは、教師の少しの遊び心からスタートできるものです。高学年では、算数に苦手意識を持つ子も増えてきます。学ぼうとする土俵に全員をのせて、単元の学習をスタートさせていきたいものです。忙しい毎日ですが、算数に限らず、理科や社会も、少しのアレンジで教科書ベースの学びを提供してきました。私自身の遊び心ですから、忙しいけど、楽しいものでした。
教師も楽しんで、授業に臨むことが、スタート地点です。
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松井 恵子(まつい けいこ)
兵庫県公立小学校勤務
兵庫県授業改善促進のためのDVD授業において算数科の授業を担当。平成27年度兵庫県優秀教職員表彰受賞。算数実践全国発表、視聴覚教材コンクール特選受賞等、情熱で実践を積み上げる、ママさん研究主任です。
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