私は、教育で世界平和を目指しています
私は、教育の最大の願いは世界平和と信じています。だから、教育理念の最終段階には、「世界平和をつくる人間」という姿を掲げました。掲げるだけでなく、本気で思っていますし、どんな教科指導の時にも、掃除の時間も、朝の会も、私の根本には、この思いがあり、1年生でも6年生でも伝えていっています。
兵庫県公立小学校勤務 松井 恵子
ノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑氏のインタビューから
10月1日に、すばらしい日本人の偉業が報道されました。ノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑氏。彼の言葉には、私が大切にしたい思いや姿が込められていて、胸がいっぱいになり、目頭が熱くなりました。
本庶氏の言葉より
「『元気になった。あなたのおかげだ』言われる時があると、自分の研究に意味があったと実感し何よりうれしい。」(毎日新聞より)
「研究者にとっていちばん重要なのは何を知りたいかと思うこと、不思議だと思う心を大切にすることだ。そして、教科書に書いてあることを信じないで、常に疑いを持ち、本当はどうなっているのかという心を大切にする。自分の目でものを見て納得するまであきらめない、そんな小中学生がぜひ研究の道を志してほしい」(NHKニュースより)
本庶氏のこの言葉。この言葉に全てが凝縮されています。結果として受賞したノーベル賞を誰かと比較して喜んでいるのではなく、幸運なこととして捉えながらも、本庶氏の喜びは、病気が良くなったと喜ぶ人の言葉や、気持ちから、こみ上げるものなのです。
本庶氏は、教科書ですら本当なのかと納得するまで考えることが大事だと述べ、この追究の姿勢がノーベル賞に繋がっている。そして、幾度となく失敗を繰り返しながらも、あきらめない心で取り組んできたことが、人々への幸せに繋がっているし、本庶さん自身の幸せにも繋がっている。
これらのことを、私は、授業を介して、子ども達につたえています。
では、どのように?
具体的にお話ししましょう。
単に道徳や学活でこのような偉業を取り上げただけでは、生き方を教えていることにはならない!
ただ単に、ノーベル賞の偉業を伝えるだけで、子ども達に、あきらめない心、納得するまで追究する姿勢、誰かのために役に立つ喜びが身につくでしょうか。答えは勿論、「NO」です。
道徳や学活で、偉人の生き方を取り上げたとしても、先生自身が教科書を信じているだけ=教科書をこなすだけの授業をしていて何が生まれるのでしょう。技能すら身につきませんよ。納得せずに嫌々学習をこなす子どもをつくっているだけ。
もちろん、教科書を否定しているのではありません。教科書に対して、どのように教師が向き合っているかさえ、生き方であり、子どもに伝わってしまうと言っているのです。
もちろん、私は研究者だけを育てたいのではありません。納得するまで追究しようとする姿勢自体が、その子の人生を豊かなものにすると信じているのです。いえ、豊かにします!そして、その豊かな人生は、真実の豊かさです。誰かと比べて勝っているから幸せとか、お金儲けが出来ているから幸せとかいうものではありません。凛として確固たる自分をもち、誰かのために何かできる喜びにつながるのです。それこそが、本物の豊かな人生と私は信じています。
だから、正解を出したら終わりじゃないんです。正直に、一生懸命に、納得するまで学習するのです。それは、1年生からできます。「人のために」だって、1年生もできます。
担任の価値観がそこにあること、そしてそれを体現しさえすれば、子どもはその価値を感じるのです。
つまり、子どもは、教師を通して、社会を見ているのです。
教師のフィルターを通して社会を学んでいるのです。
低学年で培う「あきらめない心」
低学年の学習は、とにかくしっかり「あきらめない心」を 身につけないといけません。それは生活そのものです。ほとんどの子どもに、努力をして、身につけてほしいことです。このことは、1年生を担任したときに、すばらしくがんばるお母さんとお父さんとその愛を受け止め頑張る子どもたちに、私が教えてもらいました。
九九を覚えるのに、両親が必死で、お風呂で教えたこと、私も母として経験があります。
「あなたの宿題が終わらないと、お母さんも寝られないのよ」と言って、子どもに付き添ったという先輩先生の言葉は、忘れられません。
何より、受け持った1年生が、夏休みにも親子で毎日何時間もがんばり、ひらがなや計算をできるようになって9月の教室に戻ってきたことが、幾度となくあります。
この経験で身についたのは、九九やひらがなだけではないのです。
あきらめずに物事に取り組むこと、やらなければならない事はやらなければならないんだということを実感し、身につけたのです。
さらにいえば、これらの「あきらめない経験」は、子どもだけの経験ではありません。ふんばる親子の経験であり、その中で見える我が子の成長、母にならなかったら得られなかったであろう感謝、そんな毎日が、子育ての幸せ貯金になっていく、そんな風に感じています。低学年だけではなく、この経験はずっと続くのですが、この小学校の低学年期で得られた経験は、人生を支えると感じます。
『不思議だと思う心を大切に、納得するまであきらめない』理数教育のすすめ
算数や理科は、正解がある。だから、教えるのが楽、なんてとんでもない話です。正解があるからこそ、正解で終わって満足する担任の姿勢がバレバレになるのです。低学年を担任したとき、正解を発表した子に笑顔になり、間違えを発表した子に困った顔をしていませんか?そうやって、あなたが、失敗を恐れさせる子=あきらめる子をつくっているのですよ。
算数や理科には、正解があります。だからこそ、そこを超えて追究させることで、本当に学ぶことの意味を教えられると私は思うんです。国語って、その子その子の読み取りに、心の底から「なるほどなあ」って思うことがりませんか?そんな教師の心からの声を子どもは見分けています。
だから、心からの「なるほどなあ」を算数や理科でも具現化すれば、その子の新しい生き方になるんです。
ただ単に、教科書を覚えたら成功、与えられたものをこなして終わりという子をつくのは、もう、やめてください。
私たちは、世界平和をつくる人間を育てるのです。
不思議だと思う心を大切にする授業をしましょうよ。
まずは、子ども達に、「ここが不思議」「ここが迷う、わからない」という授業のスタート、自己開示のスタートを保障してください。高学年は、算数や理科に苦手意識を持つ子が増えます。だからこそ、心を開く授業をしなければならないのです。
どんなに笑われても、そんなの建前でしょって言われても、私は本気で訴え続けます。世界平和をつくる人間を育てるのが、学校。幸せをつくる力を育てるところが学校。
そんな学校を、教育を、作っていこうと、明日もがんばろうと思います。

松井 恵子(まつい けいこ)
兵庫県公立小学校勤務
兵庫県授業改善促進のためのDVD授業において算数科の授業を担当。平成27年度兵庫県優秀教職員表彰受賞。算数実践全国発表、視聴覚教材コンクール特選受賞等、情熱で実践を積み上げる、ママさん研究主任です。
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