2018.08.16
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6年「拡大と縮小」図形カードゲーム

図形領域の指導は、かくことばかりに指導が及び、図形に関する感覚を十分に豊かにするまでに至らない場合も多い。技能や知識習得に留まらず、自ら着眼点をもち、図形の性質を見いだす力を、時代は求めており、そのための授業づくりをご紹介します。

兵庫県公立小学校勤務 松井 恵子

図形カードゲームその1で既習事項に新鮮に出会わせる。

導入は、図形カードゲームその1。封筒の中に図形のかかれたカードが入っています。この図形は単元に入る直前のページに掲載されている復習の問題の三角形や四角形。ペアでそれぞれ2枚のカードをひき、「ぴったり重なれば当たり」=「合同」の学び直し。そこには、忘れてしまった既習事項を、意欲的に獲得し直す姿があり、対応する角や辺を確認し合い、考える土俵にのせて次時へと向かいます。

図形カードゲームその2は「同じ形なら当たり」

その2は、基準(ア)の形と「同じ形なら当たり」というもの。4人グループで封筒からカードを1枚ずつ引きます。「同じ形」という曖昧さに、子どもの戸惑いが懸念されますが、だからこそ、前時に「ぴったり重なる形」という言い方で合同の復習をしています。ゲームが始まり、すぐに落胆する子が……。私が「どうして、残念なの?はずれってどうして思うの?」と聞くと、「だって、こっちは明らかに細すぎる」そんな児童の声を拾った後、他の児童の「え?これって大きさはちがってもいいの?」という声を拾う。私が「昨日は、ぴったり重なると当たり。今日は、同じ形だと当たりだよ」と言うと、児童の「じゃあ、これは大きさがちがうだけで、形は同じだよ」そんな発言から、おのずと児童たち同士の話が始まりました。そして分度器や定規を取り出し、対応する角度や辺の長さを調べだしました。

教材の吟味も十分に。

① 図形の吟味

図形カードゲームその2は、その1の三角形や四角形ではなく“矢印の形”にしました。着眼点が対応する辺の長さのみ、もしくは、角度のみ、のどちらかだけで「同じ形」が分かってしまっては、探求心が持続しないし、先行学習児童による教えるだけの活動になってしまうからです。一人一人に習得しようという意欲と実感を伴った理解を促したい。そこで、矢印の△の根本の部分にも角度の差をつけ、着眼点を長さにも角度にも持たせられる教材にしました。

②方眼にのせる、色をつける、など補助の手だての吟味

児童の実態を捉え、考える土台にのせるために、省くべき点、加えるべき点を考える。

分度器の扱いが難しい子が多いので、測りやすいように矢印はオレンジに色づけし、分度器の目盛りを読みやすくします。方眼にのせ、長さを定規で測る手間と誤差の混乱を省く。カードといっても大きく、A4サイズにし、枚数も工夫しました。

全ては児童が考える時間と簡単すぎず、難しすぎない土台をつくるため。

本気で探究する授業のためには、児童の実態をよく見取った構成と教材の吟味が必要です。

松井 恵子(まつい けいこ)

兵庫県公立小学校勤務


兵庫県授業改善促進のためのDVD授業において算数科の授業を担当。平成27年度兵庫県優秀教職員表彰受賞。算数実践全国発表、視聴覚教材コンクール特選受賞等、情熱で実践を積み上げる、ママさん研究主任です。

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