2018.05.17
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

6月クライシス対処法

忙しい4月をなんとか乗り切ったみなさん。5月も半ばになり、学級の状態はどうでしょうか。教師も子どもも慣れるこの時期ですが、6月をまわると学級がうまくいかないと感じ始めることもあることでしょう。これを6月クライシス(危機)と言ったりします。

6月になるまで、この危機にどうして気づかないのか、何が原因なのか、また、どうすれば乗り越えられるのかについて今回はお話ししましょう。

兵庫県公立小学校勤務 松井 恵子

6月クライシスチェック項目

6月クライシスは、気づかない人も多く、それが2学期に入ると学級の荒れ、学級崩壊につながることもあります。まずは、あなたの教室をチェックしてみましょう。(あくまで個人の見解ですが、参考にしてみてください。)

①授業の始業時間が守れない。

②そうじがうまくいかない。

③そうじの後片付けがおろそか。(ゴミの取り忘れやぞうきんの乱れ)

④発表するメンバーが同じような顔ぶれになってきた。

⑤失敗を笑う文化ができつつある。

⑥えらそうに言う子、言われる子という場面が増えてきた。(正しい注意としても)

⑦授業がおもしろくない。(教師にとっても子どもにとっても。授業中の笑顔が少ない。)

⑧朝の会がうるさい。

⑨体育の集合や準備が、だらだらしていて遅い。

⑩休み時間にトイレや廊下で数人がたまって良くないムードで話をしている。(女子に多い)

他にもありますが、10個の項目、みなさん、いかがでしょうか。

5つ以上は危険信号です。あなたのクラスは、6月クライシスが始まっているかもしれませんよ。

クライシス回避方法

では、どのようにすれば、回避できるのでしょうか。いつでも、何度でも、学級は導けます。作れます。教師自身が、焦らず、イライラせず、でも情熱をもって邁進することが第一の前提です。

具体的には、先ほど挙げた項目を、解消する手だてを打つのです。効果的に叱ることは大切ですが、叱責ばかりでは、成長になりません。では、先ほどのチェック項目を克服法と連動させて挙げていきましょう。

①授業時間が守れない

→「全員で○秒以内に着席しよう。」と投げかけ、実際に測る。実際に測った秒数を黒板の隅に書く。0秒になってきたら、0秒に花丸をつけていく。黒板の隅に花丸がたまっていくのをうれしそうに見る子供達の顔は、今でも胸にやきついています。

②・③そうじをうまくできるようにするには

→自分の掃除場所のどこをきれいにしたいのか、グループごとに見つけさせる。そしてその箇所の写真を撮っておく。こうやって目的意識を持たせます。ビフォーの写真をとったら、さらにアフター(きれいにした後)の写真も撮る。その写真を比べて、きれいになったことを実感させる。そしてここからが大切。

きれいになった今の気持ち、きれいにしようとがんばっていた時の気持ちを振り返らせる。「気持ちいいよね。正しいことをしている時、一生懸命な時のこの感覚。これが本当に気持ちいいということなのですよ。」

正しいことや一生懸命に行動する心地よさを味わわせる。

さらには、最後まで健気に後片付けを1人でしている子を見つけましょう。

そんな子に限って、授業では目立たなかったり、教師の手をかけない子であったりします。いつもだまってクラスを支えてくれているそんな子をしっかり教師が見つけて、認めてあげること。それをクラスの子にも知らせて、認めさせてあげること。それが大切です。

④⑦授業について

→もしも、あなたが小学校時代に受けているような授業をしているのだとしたら(大半が詰め込み教育だったとして)、いますぐその授業観を捨ててください。

学びに向かうことはとても大切です。授業ルールも大切です。でも、おもしろくない授業は、心を育てません。

心を開く、育てる授業を目指しましょうよ!小学生は、1日の大半を担任の先生の授業で過ごします。1日の大半が、おもしろくない苦痛な時間だなんて、生きる喜びに繋がりませんよ。せめて、教師が笑いましょう。授業技術がないのなら、せめて、教室を歩き回って、個別に声をかけ、繋がってあげましょう。近くの大人に愛してもらって、子どもの心は育つのです。

もちろん、生きた授業にするために邁進することもお忘れ無く。あなたのがんばりやモチベーションの上向きのベクトルを感じて、子ども達は、生き方を学びます。愛も感じます。

⑤⑥「失敗を笑う」「えらそうに言う子、言われる子」をどうするか。

→これは、申し訳ありませんが、教師の鈍感さが原因です。

教師のアンテナを磨いてください。子ども達が、失敗を笑っている場面を感じてください。失敗ではなくても、誰かの不出来を笑っている場面を感じてください。しかも、あなたも一緒に笑っているなんてことありませんか?2学期以降、子どもの性格をよく把握し、関係性が深まった高学年男子などになら、成立することもありますが、1学期のこの時期までの間に、教師まで子どもの失敗を笑うなんてことは、絶対にあってはなりません。

まずは、「あたたかい笑いはとても大切。でも、人をさげすんで笑うことや、自分の失敗をごまかして笑うことは、なしにしましょう。一生懸命が大事なんです。失敗してもまちがってもいいんです。みんなが完璧だったら、先生のお仕事、無くなってしまうよ~。それにだれだって、できないことがあって当たり前。だから、一生懸命やって間違うことは、『このやり方は、違うということがわかった』ということなの。とっても大事。だから、「そんなことあるある」「気持ち分かるよ」って温かい言葉にしていこうね。」というような話をします。

低学年では、特に、教師が注意したとたん、その子に、周りも同じように注意をすることもありますよね。鬼の首をとったかのように。そんな時、「お母さんとかに叱られたとき、みんなはどんな気持ちになる?それ、わかったよって心の中で思うよね。気持ち分かるよね。叱るのは先生の仕事です。みんなは、クラスの仲間です。先生ではありません。気持ち分かるよって、頑張ろうねって言ってあげられる人になってね。」

と言います。

それでも、すぐには消えないこともあります。教師のアンテナを高くして、その瞬間を逃さず、丁寧に必ず同じ事を言います。

教師の揺るがない価値観を子ども達にしみ込ませていくのです。

⑧⑨朝の会、体育の時間の指導法

→朝の会は、教師がついてまずはしっかり指導しますが、学校によっては、朝の職員打ち合わせが入る曜日もあるのではないでしょうか。教師のいないその時間に自治力が育ちます。これも、子ども達自身に考えさせる時間をつくったり、教室に入った瞬間の空気を感じて、指導をします。

また、体育にも「空白の時間」が存在します。集合する時、用具の準備をする時など、自治力を培う時間です。まずは、テンポの良い授業をつくります。まったりと同じことを繰り返すのではなく、準備運動のあと、サーキット系の体慣らし、そして、本時の活動。最後は整理運動と後片付けなど、テンポの良い時間設定も大事。

その中で、「てきぱきと行動することや準備することも勉強。心を育てます。みんなのために、自分のために、走って移動しましょう。集中力を伸ばしていくんだよ。」

そういって、教師が一番に走ります。やっていく内に、全速力で走って準備をしにいってくれる子が現れます。その時がチャンス。「ありがとう!!気持ちいいわ!!」と大声で伝えます。それをきいて、どんどんと走り出す子どもが増えることでしょう。「いいと思うことをすぐに行動してすばらしい!ありがとう!」これも大げさなほど大きな声で、笑顔で明るい声の色で伝えます。こうやって集団をコーディネートしていくのです。

さあ、授業も終わり、後片付けも終了。ただし、これで終わりません。運動場や体育館から教室に戻るまで、この時間も教師は意識すべきです。この「空白の時間」を大事にしましょう。4月~5月は、必ず教師の先導で並んで静かに教室に戻します。定着してきても、体育係や学級委員長に先導させ、並んで移動をします。

「空白の時間」に自治力を育てる。それは、一番難しいことです。教師のアンテナを高くもって、手だてをうっていきましょう。

⑩トイレ、廊下のすみ、渡り廊下にたまる子どもへの手だて

→あなたは、昼休み、どこにいますか?教室で丸付けでしょうか。運動場で子どもと遊んでいるのでしょうか。私は、毎日、子どもに日記を書かせていたので、教室でそのお返事を書くことに必死でした。ですが、たまに、専科の授業で空き時間があるときは、丸付けや日記指導を終わらせて、昼休みをフリーにします。そこで、子どもとの交流の時間にあてることもあります。

ただ、運動場や教室で教師が過ごしていると、廊下の端やトイレにいる児童、もしくは、図書室にいる児童など把握できません。ですから、たまに、名簿をもって校舎内や運動場をぐるぐるまわります。これは、尊敬する筑波大附属小の田中博史先生の著書に書かれてあり、すぐに取り入れました。すると、普段は見えないことが見えてきます。「この子は一人で図書室に来ていたんだ。」とか、廊下でたまって話している高学年女子に、「あれ、仲いいと思っていたけど○○ちゃんはいないな。」とか。

特に、廊下でたまって話しているグループには、私は中に入っていきます。「おはよう!」とか「なになに?何の話??」と明るい声と笑顔で入っていくと、健康的な集団は、そのまま私を入れて話します。そうではない会話と思われるところは、ちょっとたじろいだり、蜘蛛の子をちらすように解散したりします。どちらも、大事です。もっと関係を深めていくと、よくない会話をしているであろう雰囲気の集団も、私が入って、和ませる会話をしたり、笑顔で話したりすることで、明るい方へ引導するのです。

子どもとの距離感は、同性であるかないかでもちがいますが、出来る範囲で、参考にしてみてください。

さて、ここまで話すと、6月クライシスが起こる原因は、教師の価値観の至らなさが原因のように感じますね。ですが、子どもの特質や学年のカラー、保護者の価値観など、様々な要因は他にもあります。今回の記事は、教師のできるクライシス回避法を列挙してみました。子どもの特質や保護者の価値観などは、色々な人に相談して、進んでいきましょう。がんばっているあなたには、必ず道が開けます。

壁は、新しい世界への扉です。まずは、壁=クライシスへの予兆 を感じましょうね。

松井 恵子(まつい けいこ)

兵庫県公立小学校勤務


兵庫県授業改善促進のためのDVD授業において算数科の授業を担当。平成27年度兵庫県優秀教職員表彰受賞。算数実践全国発表、視聴覚教材コンクール特選受賞等、情熱で実践を積み上げる、ママさん研究主任です。

同じテーマの執筆者
  • 松森 靖行

    大阪府公立小学校教諭

  • 鈴木 邦明

    帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師

  • 荒畑 美貴子

    特定非営利活動法人TISEC 理事

  • 川村幸久

    大阪市立堀江小学校 主幹教諭
    (大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年)

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop