2018.05.02
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大学での留学生対応

 昨年度から留学生クラスの担任と留学生に経営学と経済学を教えています。
何事もなく良い状態でいられることは、他の先生方との協力があってこそですが、日々の中で感じていること、留学生の様子、私が実践していることを書いてみました。
 そして、留学生だけでなく、基本的な人間関係、信頼の構築が大切だと改めて感じています。

東京福祉大学 国際交流センター 特任講師 赤羽根 和恵

留学生(学部研究生)の受け入れ状況

 本学では、留学生を学部研究生として多数受け入れています。彼らは、内部進学と外部進学の希望者であり、中には機会があれば就職に切り替えたいと願っている学生もおります。日本の留学生の受け入れ数は、通常の学部生、大学院生等を合わせると東京大学が1位ですが、本学が2位に上がりました。国の政策として留学生の受け入れを推進しているので留学生数は年々増加しています。

 この何年か旅行者も含めて外国人の姿が急増しており、コンビニエンスストアやファストフードなどのアルバイトは、留学生らしい若い外国人が急激に増加しているように感じていました。昨年度より現職に就き、留学生の数が私の想像を超える勢いで増加しており、直接留学生に関わっていると、日本の少子高齢社会の問題に加え、国際的な人口の移動などを考える機会が増えました。そちらもいずれお話ししたいと思います。

留学生のクラス担任として

 本学の留学生は、日本語能力を見るプレイスメントテストの結果により40名弱のクラスに分けられます。そして、各クラスに、1名の教員が担任業務を担います。

 私はこれまで他大学で日本人学生のクラス担任も経験していますが、昨年度、初めて留学生のクラスを受け持ちました。留学生の属性は多様です。国籍は、中国、ベトナム、ネパール、スリランカ、バングラディシュ、モンゴル、ミャンマー、ウズベキスタン、タイ、カンボジア、インド、アフリカ諸国からと途上国が大半を占めます。母国での学歴は、高校と専門学校卒業が多く、大学を卒業、大学院を修了、中には社会人経験のある学生もいます。年齢は20代が最も多く、次いで30代、それ以上はごくわずかです。

 当然、国ごとに文化や宗教が異なります。彼らの国を知ることと、異文化コミュニケーションが必要かと思いましたが、新年度は、オリエンテーション期間、クラスミーティング、個人面談、授業と、待ったなしで過ぎていきます。その中で私が心掛けて功を奏したことは、長らく研修講師としてビジネスマナーを教えてきたこと、また社会人として自ら実践していたことでした。

相手を認め尊重すること

 日本語力が低い留学生との会話は、幼い子どもとの会話に近いものがあります。語彙の乏しさと発音の悪さが原因で、場合によっては学力不足に感じる時も多々あります。しかし、日本語が出来ないだけで頭が悪い訳ではありません。年齢も20代前半から後半が多数で十分大人です。

 そこで、企業研修の時の感覚により近い状態、相手の人格を認め尊重していることを言葉で伝えました。そして、出来るか否かに関わらず全員に平等に接することを心掛けました。具体的には、名前を早く覚えて必ず名前で呼ぶ、間違いを否定しない、知っていることや出来たことを具体的にほめる、などです。担任としてだけでなく、授業も同様で、会う回を重ねるごとに信頼関係が構築されていくように感じていました。何人かの学生には、こうした働きかけをしてもらって嬉しいと言葉で労われ、思いは伝わると熱い思いがこみ上げました。

具体的に伝えること

 企業では、上司が指示出しを明確にしないと、部下は迷い良い結果を出せません。クラス担任も同様です。必要なことは、簡単に1つ伝えます。出来たら次と段階を踏み実施します。同時にいくつかを行う場合は、口頭ではなく紙にNo.を振り書き出し、読み上げて一緒にチェックをします。伝わるまで根気よく説明をしますが、日常使う言葉を簡単に置き換えるのは、意外に難しくて言葉に詰まります。仕事中は感情を抑えるようにしていても、うまく説明できないと後味が悪いし、時間がないとイライラします。そこで通勤時間に言葉の置き換えを頭の中で練習をしました。

 また、授業で使う経済経営用語は難しいので、準備が不十分だと漢字や言葉の説明に始終してしまいます。言葉の置き換え、フローチャートを作る、派生して考える、理論は極力少なくしてその理論の利用の様子を多く取り入れる、母国ではどうか考えるなど関心を持たせるように工夫しました。

役割を持たせたチームビルディング

 昨年度は、私にとって新しい環境、初めての留学生クラスで余裕がありませんでした。幸い協力的な学生が多かったため良い雰囲気でまとまっていました。全員進路が決まり、担任としての役目を果たせ、キャリアコンサルタントとしても喜ばしいことでしたが、根気よく何度も繰り返し伝え、最後まで手がかかって大変でした。 
 本年度は、積極的な学生2名が自発的に役割を担ってくれました。個性の異なる2トップでクラスを牽引してくれます。すっかり任せて時々修正を入れながら進めていますが、クラス担任が司令塔だと理解してくれているので運営が非常にスムーズです。一度全体に指示を出しておくと、わからない学生の質問に別の学生が答えています。彼らの好きなサッカーに見立てて、クラスをチームと表現したことが、彼らの心に響いたようです。

 この3週間の良い流れを喜んでいた所、4月末の健康診断を全員が受診してくれました。これまでのクラスは、何らかの理由で欠席が出ているので、これは初。グループ連絡に「全員が来てくれました。どうもありがとう。」と感謝を伝えました。

終わりに

 今回は、留学生対応の中で、相手を尊重する、明確な指示出し、役割とクラスのチームビルディングについて書きました。現在うまくいっていますが、大声で注意をせざる得ないことも多々あります。怒鳴り散らして自分ではがっかりしますが、そこに愛情を感じてもらえるなら、彼らにとって嫌なことではないので救われます。

 そして、これは留学生に限ったことではなく、日本人学生に対しても同様です。もちろん家庭における親子、夫婦関係いずれでも違いはありません。忙しさのあまり横着をしたり、自分中心に物事を考えると、これまでの努力、築いた信頼関係を一気に失うことになります。私は、経営学が専門なので合理的な意思決定を重視してしまいます。しかし、産業カウンセラーでもあるので、相手のことを思い、受容―共感―自己一致をしていこうと考えています。

赤羽根 和恵(あかばね かずえ)

東京福祉大学 国際交流センター 特任講師
経営学・経済学が専門ですが、留学生クラスの担任も兼務しています。これまでの企業経験、キャリアコンサルタント、産業カウンセラーとしての視点も生かせるよう心掛けています。

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