2018.03.07
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春休みこそ勉強!

2月初旬から3月末まで約2か月の春休み。
学部留学生は、どう過ごしているのでしょうか。

近畿大学 語学教育センター 准教授 高橋 朋子

約2か月の春休み。
留学生はどう過ごしているのでしょうか。

■ アルバイト
やっぱりアルバイト。

留学生は、好きなだけアルバイトをすることができません。
1日に4時間、1週間に28時間を超えて働くことはできないと決められています。
それに、平日は、授業が朝からびっしり詰まっていて
それだけでも大変なのに、夜もアルバイトをすると、疲れてしまって
なんのために留学しているのか、本末転倒になります。
昔は働きすぎて勉強がおろそかに、、、そんな学生も確かにいました。
でも最近の留学生は、かなり一生けんめい勉強しています。
「目の前のお金より、自分への勉強面での投資が最優先」とは、ある中国人学生のことばです。

だから、春休みにアルバイト!
ドラッグストアやおみやげやさん、ホテルに行くと、多くの留学生が
言語力を武器にして働いていて インバウンドに貢献しています。
そして、その中で、多くのことを学んでいるようです。
ある中国の学生が、こんなことを作文に書いていました。

「私はドラッグストアでアルバイトをしている。毎日、中国人や台湾人が
大量に薬を買いに来る(略)。その中で「これは理不尽だー」と思う
ことが多いし、自分の国を恥ずかしく思うこともある。
先日もこんなことがあった。
 ある中国人が来たので、私はレジで「ポイントカードをお持ちですか」と
聞いた。そう聞かなければならない。その人はカードを出したが、レジでスキャンすると、
パソコンで登録されていないようだ。「登録しないとポイントはつきません」と言ったら
突然「そんなん聞いてへんぞー」「今まで買った分のポイントはどうなるんや」と
怒鳴ってきた。私はどうしたらいいかわからず、日本人のスタッフに助けを求めた。
するとその中国人のお客さんが「お前は中国人とちがうんか!中国人やったら助け合えよ」と
怒ったのだ。私は「は?ポイントカードと私が中国人であるということと
どういう関係があるんだ?」と本当に腹が立った。
こんなことをしているから、中国人は批判されるのだ。」

マニュアル通りに対応をしていたのにもかかわらず、このような理不尽な
要求を平気でしてくる人に静かな怒りを感じています。またそれが
同じ国の人であるということに落胆しているようです。
これは大きな学びですね。この学生のような経験が、国民のレベルを
高める一歩になるのだと思います。

■ 本に触れる!

昨日も、ある学生からメールが来て、本を読んだ感想文を
書いたので、チェックしてほしいというものでした。
メールの出だしに「春休みになり、やっと自分の時間ができたので
本を読みました」と書いてありましたが、学期中は本を読む時間すら
なかったということですね!(相当忙しいにちがいない)
『助数詞に関する本』を読んだという彼の感想文がおもしろかったので
少し紹介します。外国人が日本語をどう捉えているかがよくわかります。

(抜粋)
コンビニでお弁当を買った。「お箸はいりますか」と聞かれたとき
思わず日本語が口に詰まってしまった(たぶん「もごもごした」という意味でしょうか)
一本というのか、ひとつというのか、一組というのか、、、、わからない。
なんて答えるんだ?これが私が助数詞に関心を持ったきっかけだ。
(略)この本を読んで、多くの助数詞に触れ、勉強になった。今度
コンビニでお箸はいるかと聞かれたら、自信をもって答えよう、「一膳お願いします」。

なかなかおもしろいと思いつつ、今、日本人大学生でも
お箸の数え方を知らないのではとふと不安になりました。
さらに、彼の疑問は続きます。
「一本」は「いちほん」となぜ読まないのか、不思議だ。
「ひとつ」と「一個」は何が違う?
「ひとつ」はなぜ10までしか数えられない?
などなど。新学期、彼に会ったら、その答えを教えて
あげようと思っていますが、日本人でもなかなか答えられない
のではないでしょうか。

ちなみに中国語にも同じように助数詞はあります。
中国語は、本を「1冊」と数えず、「1本」と数えます。おもしろいですね。

■帰国
アルバイトもいい、本を読むのもいい、でも
学生がいちばんしたいことは、やはり帰国ではないでしょうか。
お母さんやお父さん、恋人や友達、仲間、先生に会いたいことでしょう。
特に、今年の旧暦のお正月は2月16日でしたので、旧暦を使用している国の
学生はお正月を祝うために帰国しているようです。
(昨年は1月末で期末試験、真っ最中。もちろん帰国する学生はゼロです)
懐かしい家族、懐かしい風景、におい、空気、食べ物、友達、、、、日頃の
孤独な日本の生活で、夢に見る故郷で、何をしているでしょう。
今年は4年ぶりに帰るという学生もいました。
お土産話を聞くのが楽しみです。

しかし、昨年はこんな話も聞きました。
「帰ってもおもしろくなかったー。1日目だけ楽しくて、あとはすることがなかったー」そうです。
よく聞いてみると、
すでに学生は生活の基盤が日本にあるので、故郷に帰っても 行くところもなく
友達もみな学生だったり、社会人だったり、あるいは親になっていたり(!)
話も合わなくて困った!そうです。
これは万国共通の悩みなのでしょうか。短期の旅行ならともかく、外国での長期滞在ならではの
問題かもしれません。


■新学期に会いましょう!

3月末にはオリエンテーションが始まります。大学はどんどん始業が早くなり
4月1週目には授業が始まります。バイトや旅行、帰国や勉強などいろんな場所での
経験を胸に、新学年に進みます。
春にはどんな出会いが待っているでしょうか。楽しみです。

高橋 朋子(たかはし ともこ)

近畿大学 語学教育センター 准教授
留学生への日本語教育、地域の日本語教室の支援、外国にルーツを持つ子ども達の母語教育支援活動をしながら、多文化・多言語社会について考えています。

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