2018.03.23
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留学生・外国人といっしょに生きていこう

1年間、留学生の姿をお伝えしてきましたが、
とうとう今回のエッセイが最後になりました。
近くにいるのに、なぜか遠い留学生。
もっともっと仲良くしてほしい。そんな気持ちで書きました。

近畿大学 語学教育センター 准教授 高橋 朋子

■街の中の留学生

私は、普段は大阪の大学で留学生に
日本語を教えていますが、1か月に1度、東京の大学に
行っています。大阪を出てから、東京の四谷の駅を降りるまで
食事や飲み物、おみやげなどを買いに3,4か所のコンビニを
利用します。この1年、そのコンビニで一度も日本人の店員さんに
会ったことがありません。一度もです!
皆、外国の方です。
仕事柄、外国人にとても関心があるので、名札や顔を見て
外国人かなと思うと
質問癖が出てしまい(笑)、ついついお声をかけてしまいます。
「どちらの国の方ですか」
「留学生ですか」
「日本にどのぐらい住んでいますか」など
初級の授業のようで申し訳ない、と思いながらも質問をすると
どの方も、にこにこと答えてくれます。
「フィリピンから来ました」
「〇〇大学の留学生です。今3年生です」
「日本に来て2年になりました」などなど。
大阪より東京のほうが、店員さんが多国籍ですね。

私たちの生活は、外国の人に支えられていると実感する瞬間です。
私が教えているタイの学生は、早朝、コンビニのお弁当におかずを
詰めるアルバイトを
していますが、自分の担当場所にいるのは全員外国人だそうです。
ドラッグストアでアルバイトしている中国人は、
「日本人は出番がないからやめちゃった」と言っていました。
お客さんはほとんど外国人ということですね。
居酒屋やホテル、観光ガイド、店員さん、語学の先生などなど
私たちの社会のいたるところに当たり前のように外国人や
留学生が存在しています。
小学校の社会の時間に、洋服のタグやスーパーの食品の生産地を
見て、私たちの生活は外国とつながっていることを学習しますが
今や、モノだけでなく、人そのものがつながっているのです。

■留学生の就職

外国人留学生を採用する企業が増えました。
そのおかげで、数年前までは、卒業後帰国する学生が多かったのに
就活をして日本で就職したいという意欲を持つ留学生が増えています。

不思議なことに、日本人と同じ就活スタイル!!
ベージュのコート、黒や紺のスーツ、髪を黒くして、黒い鞄を持ち
説明会に参加するために、東京と大阪を往復しています。
履歴書を書き、面接練習をして、、、、大変!
韓国や台湾では、卒業後に就職活動が始まるそうなので、
3年生のうちから授業を休んで説明会に行くことになれない学生も多く、
就活に乗り遅れていつまでも内定がもらえないこともよくありました。
でも今は、留学生用の就職サポートも充実しています。
そして多くの留学生が、めでたく内定をいただきます。
ユニクロなどのアパレルショップ、
楽天などのIT関連企業
携帯電話のショップ
不動産(←最近、増えました)
それ以外に、ネットショップ関連や民泊など自分で起業する学生も!!

彼らにとって、日本は働きたい選択肢の1つとして
十分魅力的な国になったようです。
結婚する人や大学院に行く人など様々ですが
日本に住み続ける留学生は確実に増えています。

■ 声をかけてみて

街の中で、外国人を見かけたら
ぜひ声をかけてみてください。
最近は、スマホやアプリの普及で、旅行者ですら
声をかけてくることはありません。
私は京都に住んでいますが、昔はよく「金閣寺に行く
バスはこれですか」、「河原町はどっちですか」など
聞かれたものです。でも最近は、まーったく聞かれません。
彼らは皆小さなスマホの画面を見つめながら、
画面が指示する方向に歩き続けるだけ。
地元民から見ると、「そんな階段あがらんでも、そこを曲がれば
抜け道やし、聞いてくれたらいいのに」と思うことも多々あります(笑)

交流するチャンスは確実に減っています。
一言も日本人としゃべらなくても、彼らの旅行は困らないようです。
そして、それは日本に滞在している留学生も
そうなのです。
情報はスマホから。
ニュースはスマホから。
友達との連絡もスマホで。

確かに便利だし、煩わしさもないけど
寂しすぎると思うのは私だけでしょうか。

確実に増えている留学生や外国人労働者、旅行者たち。
でも減っている交流のチャンス。
街のコンビニで、駅で、ショップで、道で外国人を見かけたら
ぜひ声をかけてみてください。
彼らはそれを待っている、でも自分からはちょっと
勇気を出しにくいと思っているようです。

将来の子どもたちの同僚や
入院したときの看護士さん、両親の世話をしてくれる介護士さん
あるいは結婚相手は日本人ではなく、外国人かもしれません。
私達が仲良く平和に暮らしていけるように
多文化が自然に混ざり合って、誰もが居心地の良い社会であるように
そんな日本になるように。

1年間ありがとうございました。
またお会いできるのを楽しみにしています。

高橋 朋子(たかはし ともこ)

近畿大学 語学教育センター 准教授
留学生への日本語教育、地域の日本語教室の支援、外国にルーツを持つ子ども達の母語教育支援活動をしながら、多文化・多言語社会について考えています。

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