2017.11.27
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留学生のスピーチ

留学生の日本語クラスで発表のテストをしました。日本人の発表とは
違うところがたくさんあるようです。

近畿大学 語学教育センター 准教授 高橋 朋子

来日当初には、「こんにちは」と「ありがとう」ぐらいしか
知っている日本語がなかった交換留学生たち。
1週間に2回、ゆっくりとしたペースで日本語学習をしています。

■ 日本語クラスのテスト

1つのセメスター(学期)に授業は30回あります。
その半分が終わったところで、クイズ(小さなテスト)を
しました。

今回のショートスピーチ、タイトルは「私」です。
授業で習った多くの表現を使用して自己紹介をします。
例えば、名前、出身、居住地、家族、専門、大学、年齢、趣味などです。

持ち時間は一人5分。表現方法は自由。
14人のクラスで、誕生日が1月→12月の順に発表してもらいました。

一人目のフランスの学生・・・
「みなさん、こんにちは。私は○○です。
大学は、パリの○○大学と近大です。・・・・」と
続きます。笑顔で、手振り身振りをふんだんに使って
楽しそう。聞いているクラスメイトも思わずにっこり。
終わったときには大喝采です。

二人目のアメリカの学生・・・・
「私は○○です。アメリカの○○から来ました。
えっと、、、、、えっと、、、」
どうやら何を言いたいか忘れてしまったようです。
するとクラスメイトが口々に
「趣味はダンス!ダンス!」
「がんばって〜」
「おすしが大好き!」と
彼が話したいことを、日毎のクラス活動から察して
大声で助けてくれます。
みんなに助けられて思い出した彼は、「ああ、そうそう」と
スポーツの話、好きな食べものの話と順調に
話し始め、無事終了!!またまた大喝采です。

3人目のドイツの学生・・・
前に立ったかと思うと、
「みんなさん(笑)、私の名前知っていますか」と
いきなりインターアクションを始めます。
「○○」と誰かが名前を叫ぶと
「そうです」と言ってその人のところへ行くとハグをして
「ありがとう。私の名前言いましたね」(覚えていてくれましたね)
と気持ちよさそうに次へ移ります。
「私が好きな日本の食べ物は・・・みんなさん、わかりますか。
ごはんです。えびです。おいしいです。あついです」
「わかりました!おすし?」
「いいえ、ちがいます」
「あ、天丼!!」
「そうです。アイラブ天丼です。あなたは?」
「私はちょっと・・・」
まるで漫才のように、テンポよく、進んでいきます。

個人発表というより、観客と一緒に作り上げるコンサートみたいな
ものでしょうか?
彼は机の間を行ったり来たり、走ったり飛んだり
ハグしたり、、、

それを教室の後ろから見ながら、日本人と外国人の
発表の違いをとても興味深く感じました。
覚えてきた原稿を、一字一句間違えないように
棒読み(下手すると)する日本人学生のスピーチ。
内容も高度でとてもいいのですが、緊張しているので
見ている方もちょっと肩がこりそうです。
一方、外国人の発表のほとんどは、とてもリラックスしていて
楽しそう。間違いも気にしないし、いざとなったら
「忘れたので歌います」と国家を歌ったり。
この違いはどこから来るのでしょうか。

彼らは、短いスピーチであっても
一人で発表して完結しようとせず
常にクラスみんなで対話をしている感じがします。

スピーチのテストでは、全員の発表に、全員が評価をしてコメントを書き、
授業後に交換をします。
何を書いたのか見てみると、、、(もちろん英語です)
" Great! "
" Perfect! "
" I love your effort. "
" Well-prepared."
"Good smile."

と温かい賞賛のコメントが続きます。
よかったところをたくさん見つけてエンパワーしてあげるのが
いいコメントのようですね。

9月から始めて2ヶ月ちょっとの間に
こんなに話せるようになったことを
みんなで喜んで、笑顔でクイズ終了。
笑顔の裏にはきっと努力があったはず。
1月終わりのスピーチではどんなことを話してくれるのか
とても楽しみになってきました。

高橋 朋子(たかはし ともこ)

近畿大学 語学教育センター 准教授
留学生への日本語教育、地域の日本語教室の支援、外国にルーツを持つ子ども達の母語教育支援活動をしながら、多文化・多言語社会について考えています。

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