今こそ、「叱る」
「褒めて育てる」とよくいいます。もちろん、褒めたり、成功体験を積んだりして、子どもは心を開き、自信になり自尊感情も芽生えたくましく成長していく。
ただし、褒めてばかりで本当に育つのでしょうか。
私は、やはり、教師が本気で叱る瞬間があってこそ、子どもは育つと思います。
今こそ、「叱る」指導の大切さを見つめ直しましょう。兵庫県公立小学校勤務 松井 恵子
あなたは、叱っていますか?怒っていますか?
自分を客観的に捉えてみてください。
あなたが子どもを指導するとき、叱っていますか?怒っていますか?
怒るのではなく叱るのです、
とよくいいますが・・・・
でも、私は、感情的に怒ることも必要だと思います。それは、いじめに繋がるような、人権を傷つけるようなことをしたとき、感情的に怒ります。怒鳴ります。
怒るからこそ届くこともある。
ただし、教師がただイライラしてそれを感情的にぶつける「怒る」とは区別しましょう。
感情をあらわにして怒るべき時だから怒っているのか、
イライラが爆発して怒ってしまっているのか、
自分を分析してみてください。そして、もちろん、後者であると感じたなら、そのような怒り方はやめましょう。
「先生、叱ってくれて本当にありがとうございます。」
これは低学年を受け持ったときに、保護者の方から頂いた言葉です。
「母親以外で、叱られて泣いた経験はない子なんです。
先生、本気で叱ってくれて、本当にありがとうございます。」
集団生活をしていると、子ども同士のトラブルがあるのは当たり前。そんなトラブルを経験し、正しく乗り越える方法を身につけ、道徳性が伸長していくものです。
「叱る」ということは、愛情です。
よりよく育ってほしいという愛情です。ただし、方法をまちがっては、その愛情は届きません。
高学年になるとなおさらです。教師の思いとは裏腹に、「先生はわかってくれない」という感情を抱き、反抗的になることも考えられますし、反抗的ではないとしても、心を閉ざし、ただ叱られる時間が過ぎるのを待つだけで、何の成長にも繋がらないということにもなりかねません。では、どのようにすれば子どもの心にとどくのでしょうか。
個別に指導すべきか全体で指導すべきかを見極める
まず見極めるべきは、個別で指導するのか、関わっている児童すべてをそろえて指導するのか、です。個別に指導をする方が、素直に話せる子もいます。逆に、個別だと、自分だけが責められているように感じて、素直に受け入れられない子もいます。
状況によっても判断すべきです。事実関係を捉えるためには、どのように話を聞いたらよいのかも判断基準です。
次に考えるべきは、場所と時間。
教室で指導すべきか、他の児童の目が届きにくい場所で指導すべきか。
指導されているところを友達に見られるから、素直になれない子だと判断する場合、できるだけ別教室で話します。しかも、緊急を要する事でないときは、その子がふと一人になる瞬間を逃さず、その時に声をかけ、話します。
逆に、教室で他の子どもの目があるところで叱る方が、内容が届くと判断する場合は、教室で叱ります。この場合、きっぱりと叱っておわることが前提です。
時間についても、よく考えましょう。放課後に残して話すは絶対にNGです。下校時刻も守れないし、もしかしたらもやもやした気持ちをもったまま、家に帰る。すると、余計にやりきれない気持ちが増幅します。教師の伝えたいことは届かない。
できるだけ、子どもが素直に話を受け止めるために、時間もしっかり考えましょう。
学級を叱るとき
学級全体に叱ることもあります。
ただし、子どもの中には、日々、教師の目が届いていないところでも、真面目に一生懸命にがんばっている子も大勢います。そんな子がほとんどです。
問題行動をおこしてしまった子も、4月から、よりよく成長しようと努力している姿勢もあるはずです。
だから、認めながら叱ります。
「こうなってほしい」という思いを伝えます。
がんばっていることも知っているよと、言葉にして言います。
問題行動についても、ぜったいにしてはいけないことを伝えると共に、
学級の周囲の子どもにも、感じるべき道徳的判断を教えます。
そして、どのような行動をしたらよいかも教えます。「まちがいに気づくこと」「気づいたら止めること」「それができにくい時は、先生に相談してほしいということ。言いつけでは相談であるということ」
もちろん、相談といっていますから、一部の児童から聞いただけで叱りはしません。
私自身の目でしっかりと観察し、見つけた事実から、指導をします。
「叱る」「褒める」=「認める」
いっぱいの愛情で子どもと対峙しましょう。
実は、褒めることだって、表面だけを見て、おだてているのか、本当に見てくれていて、褒められているのか、子どもは感じ取っている。
日々、認めているからこそ、愛しているからこそ「叱る」指導が生きる。
おだてられて、成功ばかり積んでいるようにさせて、何の力になるのでしょう。
失敗したり傷ついたりしても立ち上がっていける経験があって、壁を乗り越える力になる。
そして、叱られてわかることもある。人にぶつかってこそ生まれる価値観がある。
そのためには、「認められていると感じること」
叱ることと褒めることは、表裏一体。実は同じ愛情だと、私は思います。
あとは、どのように届けるか、です。
この投稿が参考になれば、幸いです。

松井 恵子(まつい けいこ)
兵庫県公立小学校勤務
兵庫県授業改善促進のためのDVD授業において算数科の授業を担当。平成27年度兵庫県優秀教職員表彰受賞。算数実践全国発表、視聴覚教材コンクール特選受賞等、情熱で実践を積み上げる、ママさん研究主任です。
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