前期の定期試験が終わりました。
◼︎ さあ、夏休み!
留学生、特に1年生にとっては、異国の大学で初めての
試験とあって、情報収集に大忙しのようでした。
留学生数の多い中国人、韓国人は、上下や横のネットワークがあって、
「○○先生のテストは、こんな問題が毎年出るらしい」
「定期テストの点が良くても、出席点が悪いと落とされるって」
などという情報と、ノートのコピーが回ってくるそうです。
すごいな〜と感心するとともに「さあ、今年も問題を変えないと」と
思います(笑)。
一方、少数派のロシア人、タイ人、トルクメニスタン人、ラオス人、マレーシア人たちはどうやって情報を収集しているのかなと心配になりますが。
図書館にこもって必死に勉強した1週間が終わると夏休み!
ちなみに、うちの大学には、図書館横に、24時間開放のガラス張りの女子専用自習室があります。アプリで場所を予約して使用するのですが、常に満席。アメリカ人の女子学生は、ここに住んでいるのではないかと言われるぐらいずっとこもって勉強していました。
◼︎ 帰国して家族や友人に会う
1ヶ月半の長期休暇、さて留学生は何をするのでしょうか。
まずは、帰国して家族に会うというのが多いです。
ほとんどの学生は、18歳で高校を卒業するとすぐに来日し、日本語学校に通います。1年から2年の間、日本留学試験(英語圏に留学するときのTOEFLのようなもの)で高得点を取るために、ひたすらひたすら勉強したのちに、大学に入ってくるのですが、その期間を一言で言えば、多重苦の生活!
ホームシックあり
日本語の伸び悩み(漢字が難しい!敬語が難しい!)あり
異文化に慣れない(特に食べ物ですね)辛さあり
天候に適応できない(日本は湿度が高いですね)しんどさあり
進路への不安あり
人間関係のトラブルあり(日本語学校はかなり多国籍ですから)
恋人との別れ(遠距離恋愛ならでは?)あり
健康の問題あり
その間、帰国したくてもなかなかそうもいきません。
晴れて大学入学を果たし、苦しい試験も終わった最初の休暇です。試験が終わった次の日に、何の未練もないぐらいの勢いで、さっさと帰国する1年生の多いこと、多いこと。
さて、故郷で家族や友達と楽しい時間を過ごして帰ってきた彼らは・・・・
私「どうだった?楽しかった?」
学生「楽しかったのは最初の2日だけ。あとはつまらなかった」
私「えっ、どうして?」
学生「親は働いているし、友達はみんな大学に行っていたり、働いていたり、
一人で過ごすことが多かった」
という返事がよく帰ってきます。もう、彼らの生活の中心は日本になっているんですね。留学後の友人との結びつきの方が強いようです。
また、こんな声もよく聞かれます。
学生「国に久しぶりに帰ったら、生活しにくかった」
私「えっ、どうして?」
学生「コンビニやスーパーでみんな並ばないし、電車の中で大声で携帯電話で
話してうるさいし、店員のサービスが悪いし、、」
それから
学生「友達に「日本人っぽくなった」って笑われた」
私「えっ、どこが?」
学生A「話しながら、ペコペコお辞儀しているらしい(苦笑)」
学生B「私も言われた、レストランでウェイトレス呼ぶ時「すみません〜」っ
ていちいち謝ってるって、笑われた」
学生C「私も!話してる時、「ふんふん」ってあいづちが多すぎって言われた」
という話もありました。ほんの1、2年ですが、外国での生活が与える影響は大きいですね。
このように、他国と比較する視点を持ったことによって、自分の国が客観的に見られるようになったり、自分でも気がつかないうちに影響を受けているんですね。「郷に入っては郷に従え」でしょうか。
◼︎ アルバイトで日本語上達とお金の一石二鳥!
帰国せずに、アルバイトに精を出す学生も多いです。
留学生のアルバイトで多いのは、
1.ドラッグストア
2.コンビニ
3.居酒屋、レストラン
4.日本案内の動画を作成して、国のサイトに投稿する(中国人)
5.語学のインストラクター(英語圏や珍しい言語の人が多い)
となっています。ドラッグストアはインバウンドの消費を支えていますが、
店員のほとんどは外国人なんだとか。中国語(韓国語)だけなら1000円程度、英語もできると時給アップ↑なんだそうです。語学は身を助ける、ですね。
JRの駅の近くのドラッグストアでアルバイトしている中国人学生に
尋ねて見ました。
私「お客さんはどんな人が多いですか?国によって買うものが違いますか」
学生「日本人は、老人が多いですね。みんな病院から薬の紙をもってきます(処
方箋ですね、おそらく)。韓国人はお菓子をよく買う。台湾人はアリナミン
Xを買う。同じ中身で「こっちの方が安いですよ」と勧めても絶対アリナ
ミンXしか買わないですよ(笑)。」
私「へえ、じゃあ中国人は?」
学生「買うものは決まっている。化粧品がよく売れる。薬だと「冷えピタ」、「目
薬」「ナットウキナーゼ」「酵素」「命の母」とか。この間、「命の母」を50
箱買った人がいたー!」
なかなか興味深いですね。
ひと夏目一杯働いて、仕事経験を積み、お金を稼ぎ、後期の学費の準備をします。
でも一番 の収穫は、「日本人の働き方をまなべる」ことです。テキストで勉強した時は、まったく意味なく覚えるだけだった敬語があっという間にうまくなります。謙譲語も尊敬語も巧みに使いこなせるようになってこちらが驚くぐらいです。まさしく「現場で学ぶ」です。
また、「お客様」を大切にする日本のおもてなしを実感する学生もたくさんいます。
雨の日の百貨店で紙袋の外にビニール袋をかぶせること、
洋服屋さんで買ったものを持って、店の出口まで見送ってくれること、
買ったジュースをこぼしたらすぐに無料で同じものを作ってくれること、
など数え上げたらきりがありません。
安全に楽しく過ごして、9月には元気な顔を見せて欲しいです。
たくさんの課題を準備して待っていますよー!

高橋 朋子(たかはし ともこ)
近畿大学 語学教育センター 准教授
留学生への日本語教育、地域の日本語教室の支援、外国にルーツを持つ子ども達の母語教育支援活動をしながら、多文化・多言語社会について考えています。
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