2017.07.24
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日本が羨ましい!いや、かわいそう?留学生が見た日本の教育

留学生が見た日本、びっくりすることはたくさんありますが、教育について「羨ましい!」「かわいそう」と思うのは、さて、どんなことでしょう?

近畿大学 語学教育センター 准教授 高橋 朋子

◼︎望めば全員大学?!

日本の高校進学率が97%、大学進学率が50%を超えていると
聞いてびっくりしたのがドイツ人の学生です。
「えーっ、そんなに多くの人が大学に進めるの?」
「ドイツとぜんぜん違う!」
「行きたかったら、自由に受験してもいいの?」
聞くと、ドイツでは小学校卒業時にほぼ人生が決まるといいます。
成績に応じて、いくつかの進路があり、大雑把に言えば、その時点で
大学に進学できる人と就職する人に大別されます。
就職コースに進んだ人は、後で「大学に行ってもっと勉強したい」と
思ってもほぼ不可能だそうで、融通の利かないシステムのようです。

彼のお姉さんは、就職コースに入ったために基幹学校(中学高校のようなもの)を
出た後、働き始めました。そこで、フランス語の面白さを知り、もう一度勉強して
キャリアアップしたいと思ったそうですが、その夢が叶うことはありませんでした。

一方、日本人は小学校→中学校→高校と12年間も
自分の将来について考える時間があるということになります。
小学校4年生の時には、「半分の成人式」で「自分の希望や夢」を
みんなに聞いてもらうという行事も普通になって来ました。
さらに
大学に進学して、将来のキャリアを考えていく中で、夢を変更することも
可能です。その間に留学したり、インターンシップに行ったり。
自分を見つめ直す時間が与えられています。
そう言えば、小学校の頃から、私たちはよく「夢をもつ」ことの大切さを教えられました。
夢に向かって努力することの素晴らしさを説くことも多いです。
ドイツでは、小学校卒業時に夢を見ることを諦めなければ
いけないのでしょうか。

ドイツの学生が言った「幸せだなあ、日本の学生は」という言葉の
もつ意味をもう一度考えなければと思いました。


◼︎ 全員卒業??

さらに日本の大学では、ほとんど全員が4年で卒業すると聞いて
(医学部など一部の学部や留年した場合をのぞいて)
びっくりしたのがカナダの学生です。
「えーっ、全員卒業できるの?」
「4年間、ひたすら大学に通いつづけるの?」
「いいねえ」
と私たち日本人には、かなり不思議な反応です。

北米では、高校の成績やSATなどのスコア、ボランティア経験や
特別な技能の有無などによって大学に入学することができます。
簡単とは言えませんが、アジアに比べると入りやすいようですが、しかし
卒業は難しく、大学で猛勉強していい成績をおさめないと
簡単には卒業できないシステムになっています。

カナダのUBCという名門大学の卒業率は3割ほどだと聞いて
驚くと同時に、日本の大学の卒業率を聞いて彼らがなぜ
びっくりしたのかがわかりました。
さらに、大学在学中に、働くために休学したり、ボランティアで別の国に
行ったり、あるいは出産して育児をしたり、、、と人生の経験を積むことが
普通だそうで、、、、、長期計画で大学生活を送るようです。
流行の服を着て、スマホ片手にキャンパスを楽しそうに歩く日本の大学生が
かなり奇妙に見えたのかもしれません。

◼︎ 全員若者?

日本の大学の中で、生涯教育に力を入れているところでは、幅広い年齢層の
人が在学しています。また、社会人入学を推し進めている大学もあります。
しかし、まだまだ18歳(浪人すると少し年齢が高くなりますが)で
入学して22歳前後で卒業するというのがパターンです。
留学生の多くは、国で高校を卒業してすぐ来日し、日本語学校に1年から2年通って
大学進学に必要な日本語力を身につけるため、勉強します。
つまり、大学に入学するときには20歳〜22歳ぐらいになっているのです。
1年生の同じクラスやゼミの日本人は、18歳前後、留学生は20歳〜22歳。
どうもその年齢の差がうまく超えられない、という相談が多いことを
考えると、この年代の1年は大きな意味を持っているのかもしれません。

タイから来た学生は20代後半。アメリカから来た学生は30代前半。
勉強に年齢は関係ない!と思いますが、
「日本の大学生はみんな若いんだよねー」とブツブツ。
何歳からでも学べるように、また生涯教育の場に大学がなれるようにと
いつも思います。

◼︎ み〜んな同じ服、あれは制服??

就活が始まると、み〜んな同じ黒い髪、紺色や黒のスーツ、黒い靴にカバン
女子学生は髪を1つにくくって、、、、、、
「あれは就職を探すときのユニフォームですか」とオランダの学生に
聞かれました。
「なんだか怖い」んだそうです。皆同じ服装で
「どうやって個性を表すのか」「普通の服では何がいけないのか」という
質問にみなさんはどう答えますか。
さらに質問は続きます。
「大学の授業をサボって仕事を探しに行くのは、本末転倒ではないか」
確かにそうですね。
「それに、こんなに暑いのに、あの服は気の毒すぎる」という
同情の声も・・・・

台湾や香港では、卒業式の次の日から仕事探しを始めるそうです。
卒業時にすでに就職先が決まっている日本のシステムは
「なんだか変ですね」と言われました。


私たちが幼少期から見聞きし、体験して来て当たり前だと思っている多くのことが
留学生には、羨ましかったり、奇妙に映ったりしているようです。
そんな声を聞くたびに、「外から日本を見ている」気がします。

いいところは大切に。
奇妙なところは改善していけるといいですね。
でもジーンズに黒Tシャツの就職面接はやはり、、、と言うと
「先生は日本人ですね」とピシャリと言われてしまいました(苦笑)

高橋 朋子(たかはし ともこ)

近畿大学 語学教育センター 准教授
留学生への日本語教育、地域の日本語教室の支援、外国にルーツを持つ子ども達の母語教育支援活動をしながら、多文化・多言語社会について考えています。

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