2017.06.02
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

外国人留学生から見た日本

留学生は、どんな目で日本を見ているのでしょう?

近畿大学 語学教育センター 准教授 高橋 朋子

「侍がいて、ちょんまげを結い、刀を持って、、、それがニッポンだと思ってた!
来たら全然違う」と数十年前、北欧の留学生に言われたことがあります。
どんな写真が教科書に載っていたんでしょう?
「日本では、落ちている石すらもお金だと思っていた」と中国の学生が言っていました。
バブルのころの話でしょうか?

笑い話ですが、インターネットで世界がつながる前、人々がもつ
日本のイメージはこんなものだったと思います。

そういえば、私も25年以上も前にアメリカのテレビで、ある有名なソファ店のCMを見て驚きました。

♪ フランス人も大好き〇〇のソファ~♪ (エッフェル塔とフランス人が出てきて)「ボンジュール!」
♪ メキシコ人も大好き〇〇のソファ~♪ (サボテンとメキシコ人が出てきて)「ブエノスディアス!」
♪ 日本人も大好き〇〇のソファ~♪ (聖徳太子みたいな細髭のおじさんが中国服で出てきて)「ニイハオ!」

笑ったと同時にとても悲しい思いをしたことを覚えています。
見聞きした断片的な情報で、別の国の姿をステレオタイプ的に作り上げてしまっているのですね。
しかも中国と日本が混同されている!!

さて、今はSNSにYou Tubeでの情報発信はすさまじいものがあります。
HPだけでなく、実際に旅行して自分の目で見たり体験したりする人も多く
有り余るほどの情報が氾濫しています。その中で「本当の姿」を見つけるのはなかなか難しそうですね。
人によってそれぞれ感想も違えば、満足度も違う、求めるものも違えば、表現も違う。

さあ、いろんな前情報を自分の国で収集し、イメージを膨らませてやってきた留学生は
実際に日本をどんな目で見、何を感じているのでしょうか。
今日はそれをご紹介したいと思います。


■ 「街がとってもきれい」
これは10人中9人が驚きの声とともに述べる感想の1つです。
道路やコンビニ前、駅のホームなどどこを見てもゴミが落ちていない。
各国の学生からは本当に本当に絶賛されています。
どこかに出かけても、「飲んだ後のペットボトルの空を自分のかばんに
入れている人を見て驚いた」、
「ガムをかんだ後、包んで捨てていた」など
ゴミ情報に関しては好評価の私たち。そういえば、リオオリンピックでも
試合後のスタジアムを掃除する日本の姿がニュースになりました。

■ 車内が静かで気持ち悪いぐらい?
電車通学している学生は、「人身事故があったとき、車内で
誰も騒がず、じっと次のアナウンスを待っているのが信じられない。」
(「私の国だったら、大騒ぎ。早く発車しろ~って。あるいは
窓から出て線路歩く人も多い」んだそうです!)
「車内で誰も携帯を出して大声で話さない」
(「私の国だったら、「はいはーい、元気?」ってみんな大声で
話しますよ」とのこと)
とにかく、静かな車内に驚きの声です。
それに、人身事故の遅延証明が出るのも、びっくり!
さすが証明大国日本です。

■曲芸のような自転車!
「何がすごいって、自転車に乗ってるおばさん!サーカスのようです。」と
びっくりする留学生。
前と後ろに子供を乗せて、背中にも一人おぶってる。右手に傘、左手にスマホ。
人間業じゃないという学生もいました。危ないんですけどね。
大阪だからかもしれませんが、自転車でカップヌードルを食べている人を
見たこともあります(笑)
そんな光景が珍しいらしい。それに、自転車に乗れない留学生もいるので
多芸な自転車の乗り方は、相当なインパクト?!

「駅前に置いておいた自転車が、帰宅してきたときもそこにあった」ことに
驚いた、と言われたこともありますが、私たちにとっては当たり前のことも
国によっては衝撃的なようです。

上にあげた3つの「驚き」は、彼らにとって予想外の日本の姿でした。
いくらSNSで食べ物やレストラン、観光地の情報を集めても、人がどんなふうにお辞儀したり
どんなふうに笑いかけたり、といったような生活に根差した
姿や考え方は見えません。
SNSからは、においやざわめき、空気の感じ(ほこりっぽいとかおいしいとか)なども
ほとんど感じられないのでは?

日本の若者は外に出たがらない、と言われて久しいですが
できるなら、海外に出てその目でその心で「違う何か」を「実感することの大切さ」を
感じてみてほしいと思っています。
それらは目に見える結果となってすぐには表れないかもしれませんが、
子どもたち、若者たちの心を形成する小さな、でもずっしりと多い1つのかけらに
なることでしょう。

次回は、留学生が驚いた日本のちょっと嫌な部分をご紹介しようと思います。

高橋 朋子(たかはし ともこ)

近畿大学 語学教育センター 准教授
留学生への日本語教育、地域の日本語教室の支援、外国にルーツを持つ子ども達の母語教育支援活動をしながら、多文化・多言語社会について考えています。

同じテーマの執筆者

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop