2017.05.26
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教師の多忙化について思うこと

この所、体育実技のスクーリング(集中講義)を受け持っています。

90分を5コマ、それが3日間続きます。

肉体的には厳しいのですが、非常に充実しています。

スクーリングの授業と昨今の学校現場の多忙化を関連させながら考えてみたいと思います。

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

充実しているスクーリングの授業

私が担当しているのは、幼稚園での教育実習を1か月後に控えた学生です。

幼稚園免許や保育士資格を取ることを目指しています。

そういった学生を相手に「身体表現Ⅰ」という体育実技の授業をスクーリング(集中講義)でやっています。

しっかりと準備をした上で授業を行うことが出来ています。

基本は「運動遊び」の指導です。

私が、様々な運動遊びを紹介し、学生がその運動遊びをやります。

その中で、教師の立ち位置、声の出し方、視線の動かし方など、教師の基本的なことを伝えていっています。

これまで、小学校の教員をする中で、多くの若い教員と同じ学年を組んで仕事をしてきました。

また、教育実習生を受け入れ、担当したことも何度もあります。

そういう中で、多くの人が失敗するようなことをできるだけ事前に伝えておきたいと思っています。

なかなかうまくいかない若い先生を見ていると「もっと大学でしっかりと教えてくれれば良いのに・・・」とよく思っていました。

今は、立場が変わりました。

まずはすぐ後に控える実習でそれなりにやれるようにすること、そして、その後の現場に出てからしっかりと働けるような力を付けさせたいと思っています。

今の立場は、そういったことをするための時間がきちんと確保されています。

しっかりと授業のための準備をして、授業を行い、それらを振り返るための時間があります。

やりがいがありますし、充実感があります。

こういったことをしたかったのだと改めて思いました。

学校現場の多忙化の現状

ところで、私はこの3月まで、小学校の教員をしていました。

やはり小学校などの現場は少し忙し過ぎるのだと思います。

3年生の担任でしたが、空き時間は1時間(書写)しかなく、週に26時間を担当していました。

常に質の高い授業を意識してはいましたが、全てがそうできるものではなく「流す」ような授業もあったのだと振り返ると思います。

保護者から大きく苦情を言われるようなこともなかったので、そういったものに甘えていたような部分もあったと思います。

こういった状況は、教師個人個人のパフォーマンスを十分に発揮できていないように感じます。

それぞれの教師は、皆が必死で仕事に取り組んでいます。

問題は、必死に取り組んでいる仕事の「内容」です。

事務処理的であったり、後始末的であったりするものが多いように感じます。

日々の教育活動をより良いものにする為の活動にエネルギーが使えていない印象があります。

今、学校で行われている仕事を根本的な部分から考え直し、精選を行っていくことが必要なのかもしれません。

その際は、一つの行事、例えば、卒業式などの一つの行事を変えていくようなことでは問題の解決にはならないと思います。

年間を通して、行事の精選や業務の効率化をトータルで考えていくことが大事なのでしょう。

「本当にその行事が必要なのだろうか?」という視点で今一度見直す必要があるのだと思います。

例えば「自転車の乗り方教室」を行っている学校もたくさんあると思います。

交通事故もありますし、子どもに自転車の安全な乗り方を教えた方が良いのは当然ですが、それは学校がやることでしょうか。

関係諸機関との調整、コースの設定など数多くの仕事があります。

超多忙な学校において、学習指導要領に載っていない自転車の乗り方を教えることが今の学校で行うことなのでしょうか。

学校において本当に大事であるべき部分が疎かになりながら、手広く様々なことをやっているような現状に少し違和感を覚えます。

学校においては、授業に関する研究会や研修会はよく行われます。

そういったことに関しての出張もたくさんあります。

しかし、「学校の行事や業務の改善」のための話し合いの時間を確保するということはあまりされていません。

そういったことに関する出張もほとんどありません。

年度の終わりになると、各種のアンケート(子ども、保護者、教員)や学校評議委員会の意見などを参考に次年度の行事などを考えます。

それらは、部分的に少し手を入れる程度のものであることが多いです。

そうではなく「本当にその行事は必要なのだろうか?」という観点で考えてみるのです。

その話し合いに使う時間以上に次年度に得るものが多いと思います。

今がチャンス

現在、学校の教員の勤務のあり方がマスコミなどでも取り上げられています。

学校関係者だけでなく、社会全体が学校の教員の勤務について、学校のあり方について関心を持っています。

学校の行事の精選や業務の効率化などを進めていくには、絶好のタイミングです。

現在、私の所にSNSやメールなどで様々な立場の人の意見が聞こえてきます。

文科省委嘱の学校業務改善アドバイザーの人の声、教職員組合の人の声、そして現場の教師達の声・・・。

先程も書いたように今は絶好のチャンスです。

学校が教師にとってより良いものとなるように様々な立場の人達が連携し、取り組んでいくことができたらと思います。

教師のとって良いものであれば、結果として子どもにとっても良いものになります。

学校において教師は最も重要な「環境」だとされています。

その最も重要な「環境」をより良いものにすることは、重要でないはずがありません。

より良い未来を作るために、皆で力を合わせてやっていきましょう。

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

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