2017.05.18
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ノート点検~私の失敗談~

前回に引き続き、ノート点検についてお話しします。
実際、ノート点検をする時間を確保することが難しいとの声もいただきました。
今回は、私の最近の失敗談を含めてお話しします。

大阪府公立小学校教諭 松森 靖行

みなさん、こんにちは。

 前回は、ノートの指導、点検について話をしました。今回もその続きになります。前回、以下のようなことをお伝えしたと思います。

 

 『その「ふりかえり」と「ノートのまとめ方」を、毎時間評価をします。評価と聞くと、一人ひとりコメントをして、記録を手帳に残して・・・、と思われがちですが、それを毎日、しかも全教科するとなると、ものすごい労力になります。そんな時間もありません。私がしている「評価」は、さらっと以下のようになります。』(詳しくは前回の記事をご覧ください)

 気軽に、手軽に、毎日、全てのノートを点検しよう、というお話でした。実際に私の話を聞いたり、この記事を読んだりした先生方から「子どもたちとノートを通してでも,毎日つながれてうれしいです。」という話もいただいています。「毎日」「全て」というのは、とても大変なことなのです。しかし、習慣化すれば、ものすごい力を発揮します。実際に、本年度の私の学級(6年生)でも、何も言わなくてもノートを毎時間提出するようになりました。うっかり私が忘れていたら、「先生、ノート出しますね。」と教えてくれます。ノートを使わなかった授業(教科書に書き込み、その時間に1人ずつ評価をしていても)でも、「先生、少しノートにポイントを書いたから見て下さい。」とノートを自分から出す子もたくさんいます。授業にも「深まり」がより出てきたように感じます。

 しかし、実際にやっていて、「気軽にでいいよ!と言っても、やっぱり時間がない!」というのが現状だなということを最近感じています。英語の授業時間増や、道徳の教科化、そしてプログラミング学習など、教育現場がやることは山積みなのです。新指導要領では、「現場での今までの研究成果を生かし、地域や社会と連携しながら教育課程を編成すること」と明記されています。「今までも大切にしながら」「新たな課題」に向かって学校は進んでいかなくてはなりません。

 学校は、「捨てる」ことをきらいます。「新しい」取組が大好きなのです。「アクティブラーニング」がそれです。答申で「アクティブラーニング」の言葉が出てくると、またたく間に全国に広がりました。新指導要領改訂の目玉とも言われていました。が、実際には「アクティブラーニング」そのものは新指導要領には登場していません。違う言い方で表現はされていますが・・。そのようなことに、日本全国の教員が驚いたのです。なぜ「アクティブラーニング」という言葉が一言も出ていないのかと・・。なぜ驚いたのか。それもそのはず、全国各地で「アクティブラーニング」の実践がされていたのです。答申で公表されてから、間もない合間に、「アクティブラーニング」関係の本がたくさん出ました。研究会もたくさん行われていました。教育界が新たな方向へ向かい、明るくなっているようにさえも感じました。

 しかし、それには、たくさんの現場の先生方の「時間」がかかっているのです。中には、日が変わるまで、学校で研修をしている学校を聞いたことがあります。研修、研修で、放課後、子どもたちを残さずに下校させます。「さようなら」のあいさつが終わると、せき立てるように子どもたちを返します。そしてすぐに、研修です。そのような光景、本当に正しい学校の光景でしょうか。先生方は、放課後、学年で談笑したり、教材研究をしたりする時間さえもありません。

 そして、今までしてきたものを「捨てよう」とすると、全てが大切なように思えて(実際、大切なのですが・・・)、捨てきれないのです。会議で、一つの取組をやめようとすると、「それはおかしい。やるべきです。」という意見も聞かれます。そして、堂々巡りになり・・・、それだけで、会議3時間・・。ということも聞いたことがあります。

 要は、温故知新。「今までしてきたこと」と「これからするべきこと」のバランスだと思います。

 今回、お話している「ノート点検」も、先輩方から教えられてきたことです。放課後、先輩たちとの話から、「そうすればいいのか!」と思ったことはたくさんあります。私が小学校教諭になった20年程前には、まだ、放課後には、そのような「伝えていただく」時間がたくさんありました。

 今、子どもたちと話をするなど、直接的に子どもたちと関わったり、ノートや日記等を介して、間接的に子どもたちと関わったりする時間は、現場にはなかなかありません。

 実際、こんなことがありました。

 先日、学級で指導をしなければならないことがありました。すごく大切なことだったので、いつも以上に真剣に話をし、全員で考えました。指導を加えなければならなかった子も真剣に話をきいていました。被害者になった子(この言い方が正しくないとは思いますが)もすっきりした気持ちになっていました。

 その後、正しい方向へ向かっていると思うし、今の時期、このようなことが起こったことは、むしろ「ありがたい」ことで、今後の学級経営に生きると確信しています。

 その日の放課後、毎日全員の子と交換をしている「日記」を読んでいました。毎日、ノートの半分ほどでありますが、子どもたちは「日記」を書き、私はコメントを入れます、これは、必ずコメントを入れます。

 時間がなくても、「じっくりと読んでいるつもり」になっていました。

 何気なく、その被害者になった子の日記をパラパラと読み返していくと、その指導を加えなければいけなかった子との、様々なエピソードが書かれていたのです。しかも、かなり良いエピソードでした。書いていたのは知っていました。コメントもしました。しかし、運動会の練習で支えてくれていること、いつも仲良くしてくれていることが詳しく書かれていたことは、私はスルーしていたのです。

 「その事実をはっきりとつかんでおけば、あの時の指導も、もっとよりよいものになったはずだ。」と恥ずかしくなりました。「○○君と仲良くがんばっていることを知っているよ。何があったのかな?」と聞くこともできたはずです。

 最近、会議等忙しくて、ノートの点検がおろそかになっている証拠でした。

 心から反省をしました。そして、子どもたちに申し訳なく思いました。

 ノートを「気軽」にチェックすることも大切ですが、「軽」「重」をつけてチェックすることがポイントになります。そして、1日のうち、「この時間に点検する」「そして○○分は子どもたちのノートに向かう」「○○ノートは必ずコメントを入れる」と意識することも大切なのです。

 私自身も、まだまだ修行です。

 これからも、子どもたち、保護者の皆様、学校の仲間たちと共に歩んでいけたらと思います。

 それでは。

松森 靖行(まつもり やすゆき)

大阪府公立小学校教諭
休日には全国の教員セミナーに講師・受講者として参加、仲間と切磋琢磨しています。2014年度は大阪府の教員となり、若手教員研修を担当。若手の皆さんと一緒に学び直しをしています。

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