■ 留学生の来日目的は?
新学期が始まって3週間。
私の「ライティング」のクラスにもたくさんの留学生が登録してきました。
授業の1日目はオリエンテーション。
15週分のシラバスやテキスト、成績評価について説明します。
それから、自己紹介シートを書いてもらうのですが、これがなかなか興味深い!
来日した目的や将来の夢に時代を感じることが多いです。
主な理由をみてみましょう。
1つ目は、やはりドラマやアニメ、Jポップの影響です。
10年ぐらい前からでしょうか。
来日した目的にアニメやJポップが頻繁に
出てくるようになりました。
「嵐のコンサートに行きたいから」日本に来たという中国人女子学生は、
休みを利用して東北から九州まで、コンサートを追いかけています。
嵐が上海でコンサートをしたときは、中国のお母さんがチケットを取り
自分は一時帰国をしてコンサートを見に行っていました。
あとで出された欠席届には、「嵐のため」と書いてありましたが
何も知らない先生が見たら、暴風や台風のために学校を休んだように見えますね(笑)
昔は「日本の先進的技術を学ぶため」が圧倒的に多かったのですが
今はほとんど聞かれません、残念ながら。
2つ目は、日本の企業に入って働き方を学びたい!です。
いちばん多いのは、「親の会社の取引先に日本の会社があって、日本人の勤勉さに
驚いた親が『お前も日本に行って学んでこい!』と言うパターンです。
特に、台湾の中小企業の会社のお子さんが多いです。
まじめで時間や締め切りを守ること
組織のために必死に努力すること
下の者が上をたてること、などが
高評価のようです。彼らは日本人と同じようにスーツに身をつつみ、
就活をして、就職をめざします。
日本企業の海外進出やグローバル化にともなって増えてきた理由です。
一方で、ブラック企業、残業、過労死なども
よく知られていることばになっています、残念ながら。
3つ目は、日本大好き!です。
「何度も来て好きになった!一度は住んでみたいと思ってた」という声の多いこと!
インバウンドがメディアによく取り上げられていますが、
留学生の中にもリピータだった人たちが本当にたくさんいます。
1年に1回は必ず来て、
「○○のラーメンを食べた」
「○○の神社の前で着物を着て写真を撮った」
「USJの年パスを持っている」など、こちらが驚くぐらいの日本びいき。
初級の作文に
「日本に来てびっくりしたことを書きましょう」というテーマがありますが、
「うーん、初めてきたのは小学校だったから、あまり覚えてない」とか「今、驚くことはない」と言われます。
それぐらい日本になじんでいるのでしょうか。
■ さびしくてもがんばるぞ。
2回目の作文で「私の家族」について書きました。
中国人学生の作文をご紹介します。
私は中国から来ました。家族は父と母です。
中学も高校も全寮制で、週末だけ家に帰りました。
そのとき、母は私の好きな料理をたくさん作って
くれました。私はパソコンゲームに夢中で
「部屋に持ってきて」と言って、ゲームをしながら
ご飯を食べていました。
母に申し訳ない。
今、私は日本のアパートでひとりぐらしです。
今ここに母の手料理があったら、スマホもパソコンもいらない、
母と話しながら母の作った料理を食べたい。(原文ママ)
さびしくてもがんばらなければいけない留学生。
私たちができることは、応援することと見守ること。
そして、彼らが夢をかなえるために必要な
日本語の力を伸ばすこと、ぐらいでしょうか。
がんばれ!

高橋 朋子(たかはし ともこ)
近畿大学 語学教育センター 准教授
留学生への日本語教育、地域の日本語教室の支援、外国にルーツを持つ子ども達の母語教育支援活動をしながら、多文化・多言語社会について考えています。
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