2019.02.06
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海外留学を成功させるには?

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験をもとに、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。今回のテーマは「海外留学を成功させるには?」です。子どもの一生を左右するかもしれない海外留学。それには本人、保護者、先生の協力が必要です。子どもに留学をさせた親としての経験をもとに、留学にはどんな準備が必要なのかをお伝えしたいと思います。

留学専門のアドバイザーを設け、学生の希望が叶えられる進路選択を。

政府と企業が協力して留学支援制度を整えるなど、日本は今、世界を舞台に活躍できる人材育成に力をいれていますね。日本の大学に進学して留学制度を利用するのもいいですが、もし海外の大学へ留学したいのであれば、なるべく早く準備をしておいたほうが良いでしょう。今回は高校生が留学を希望する場合を想定してお話します。

私は学校に、留学の専門アドバイザーを設けてはどうかと考えています。在籍している先生を一人指定して研修を受けてもらい、学生にアドバイスができるよう体制を整えるのです。私の息子たちはアメリカへ留学しましたが、入試・受験のプロセスが日本と全く異なりました。先生の推薦文や親の経済状況を提出する書類の用意、SAT®(Scholastic Assessment Test:米国の大学進学希望者の共通試験)対策などがあり、それらの提出締め切りも学校ごとに異なります。論文が必要な場合もあり、書くのに2〜3ヶ月はかかりますから、スケジュール管理も大切です。私自身も留学経験があったにもかかわらず、とてもストレスを感じながら準備していました。中には英語が読めない保護者もいらっしゃると思うので、学校側で一通り任せられる専属の先生がいるのが望ましいでしょう。

また、生徒の留学適正を判断することもとても重要です。全ての学生が留学に向いているとは限りません。本当に留学したいのか、何を学びたいのか、それは日本では学べないことなのか、生活面でも一人で自立できそうなのか…そういった精神的な準備をするカウンセリングの役割も先生には求められます。生徒自身が意欲に満ち溢れているのであれば、どんな困難が待ち受けているのか、留学までにどういう力をつける必要があるのかという心構えをさせてあげることも必要でしょう。

進路選択は子どもにとっては人生を左右するかもしれない大事な機会です。日本の大学に進む子も、留学を希望する子も、それ以外の選択をする子も、すべての生徒の可能性を広げられる体制を整えてほしいです。

試験、論文、学費準備など…先生も留学準備を体験してみましょう。

学校に留学専門アドバイザーがいない、先生ご自身に留学経験がない中で、生徒から留学を視野に入れていると相談されることもあるでしょう。何から始めればいいか戸惑う場合には、まずどんな大学があるのかを調べてみることです。そして、学びの内容や大学のランクなど、本人の想定していることとギャップがないかおおよその検討をつけておきます。さらに留学の手続きのフォームを全部ダウンロードし、課題の論文などがあれば自分で取り組んでみます。受験時には先生が生徒の論文を何度もアドバイスすることも必要となる時があります。海外の大学受験プロセスを体験することで、先生も海外留学の心構えができるでしょう。

また、金銭的な問題を理解し、保護者と話し合うことも大切です。実はアメリカでは、家庭の所得金額によって学費が大幅に免除になる場合が多いです。息子たちがスタンフォード大学に進学した当時は、年間所得700万円以下であれば学費は全額免除。加えて宿泊費、飲食代、お小遣いまでついていました。元々の学費が年間700万円と高額なので、学生の約80%が何らかの支援を受けているようでした。日本とは全く状況が違いますから、各大学の学費支援制度についてもきちんと調べてみてください。

現地に行かなくても、リアルな学生生活の情報は集められます。

実は日本人留学生の数が少ないため、海外の大学は日本人に入学してもらいたいと積極的です。ですから、日本の高校の先生からの問い合わせには快く答えてくれるでしょう。

現地に行って実際に大学を見学したいのであれば、キャンパスツアーに申し込むという方法があるので、保護者に提案してみましょう。事前に大学のHPで問い合わせれば、個別に案内してくれることもあります。また、せっかく現地に行くのなら1つの大学を見るだけではもったいないので、複数校を訪問するスケジュールを組まれる保護者もいると思います。アメリカであれば、広大な土地を飛行機や車で移動して、宿泊先を決めて、キャンパスツアーを組んで…と、かなり体力を使うので、これも事前に説明しておきましょう。実際、私はこのスケジュールを決めるのに半年をかけ、監督のように家族を率いていました(笑)。時間も労力もかかりましたが、事前にキャンパスの雰囲気を見て、息子たち自身で大学を選択することができたので悔いはありません。
けれどやはり、現地にまで足を運ぶのはとても大変ですし、お金もかかります。学校見学以外の手立てとしては、ホームページなどで大学側に連絡をして在校生を紹介してもらうという方法があります。現地の学生とメールでやり取りをして、授業や生活について話を聞かせてもらうのです。どの学校でも良い学生に来てほしいのでとても協力的です。生徒と留学希望先の大学をつなぐルートを確保してあげれば、現地に行かなくてもリアルな情報を生徒に与えることができます。学生の様子、キャンパスの雰囲気、学校周辺の生活環境などの条件も留学では大切な要素です。ネットやSNSなど色々な手段で情報を集めましょう。

今回は海外の大学に入学する場合の留学についてお話しましたが、短期留学でもいいので若いうちに一度海外へ行ってほしいと思っています。世界にはいろいろな生き方があり、美的感覚も異なります。食べ物や景色、人との付き合い方など、多様性に満ちていてすごく楽しいものです。もちろん旅行でもいいのですが、住んでみることで人を大きく成長させます。気が弱い子でも強くなって帰ってくるかもしれません。絶対におすすめなので、多くの日本人の学生が海外留学に挑戦できるよう、送り出す大人が留学の知識を持ち、環境を整えることが大切だと思います。

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アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成・文・写真・イラスト:学びの場.com編集部

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