2017.04.13
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留学生の春 

入学式。たくさんの留学生が大学にやってきました。今年はどんな出会いが待っているでしょうか。







近畿大学 語学教育センター 准教授 高橋 朋子

皆様 こんにちは。

◼︎ごあいさつ
「つれづれ日誌」には小中学校の現場の先生方の
記事が多いのですが、「大学に通う留学生の生活や学習について
もっと知ってもらいたい」と思い、
このたび参加させていただくことになりました。
どうぞ宜しくお願い致します。

今の小中学生が大学生や社会人になるころ、日本は
相当数の移民を受け入れており、当たり前のように外国人がそばにいる
社会になると言われています。
すでにそうなっている地域や学校もありますが、まだまだ
留学生、外国人と日本人との交流は、少ないのが現状です。
それに、外国語=英語 とばかりに、欧米の留学生ばかりが
大事にされる残念な風潮もあります。

「つれづれ日誌」を通して、留学生の生活や
学習について発信していきます。その中から
外国人と共に生きていくことの面白さや難しさ、
多文化交流の大切さを感じ、
それを、ぜひ学校の子どもたちに伝えてください。
外国の文化やことば、人をもっともっと身近に
感じてほしい、
将来、隣に座るかもしれない外国人と
楽しく話ができるように
将来、隣に住むかもしれない外国人と
仲良く生きていけるように。

半年間、どうぞよろしくお願いします。

**********************

◼︎ 新留学生がやってきた!

留学生にも春が来ました。

入学式には、緊張でどきどき、着慣れないスーツにぎこちなく身を包んだ
各国の留学生が参加します。
今年も、学部生は、中国の学生が圧倒的に多く(日本の留学生全体の半分以上は、中国人です)
台湾、韓国と続きます。最近は、ベトナムの学生も増えてきました。
香港、ミャンマー、カザフスタン、カンボジア、タイ、マレーシアの学生もいます。
在籍する学生には、アメリカやロシア、インドネシアなどの学生もいます。
みな、難関の入学試験を突破してきた自信もみなぎっていて、誇らしげにも見えます。

交換留学生は、(大学の提携校から半年、あるいは1年だけ勉強しにくる学生)
アメリカ、ドイツ、オランダ、フランス、オーストラリア、インド
フィンランド、ノルウェー、スペインなどからやってきます。

大学の中は、まさしく小さな世界と同じですね。ちなみに
日本語がうまくできない違う国の学生同士の会話は
英語で行われています。つまり、大学では、英語が話せれば、
誰とでもコミュニケーションがとれることになります。

◼︎留学生と日本語

私は、大学で留学生に日本語という科目を教えています。
教室の中で、日本人は私ただ一人。
「大変でしょう」「日本語ができない人にどうやって教えるんですか」などと
よく聞かれますが、なかなか楽しい仕事です。
授業の初日には、「こんにちは」も言えなかった学生が、半年の
講義の最終日に「私は大阪に来てよかったです。大阪には美味しい食べ物がたくさん
あったので、半年で、6キロも太ってしまいました。」と笑ってスピーチする
姿を見ると本当に嬉しくなります。


来日したばかりの学生と私の間には、ほとんど共通の話題がありません。
そんなとき、アニメや食べ物の話をするとたいてい話題が見つかります。
さて質問です。

質問
1 外国人(一般に)に人気の高いアニメのベスト3はなんでしょう。
2 外国人が「好きだ」という日本食のランキング、ベスト3は?
3 外国人が「知っている」日本の歌手、ベスト3は誰でしょう?


解答1 3位 名探偵コナン(中国圏は圧倒的です。平次に会いたくて大阪を留学の場所に選んだという
         学生もいました)
    2位 ドラゴンボール
    1位 ナルト (「人生のバイブル」と呼んだ香港人もいます)

  2 3位 てんぷら(エビが人気)
    2位 ラーメン
    1位 刺身(「あなたは刺身が食べられますか」という練習文はもう古い日本語の教科書にしか
       出てきません。特にサーモンとツナ(まぐろ)が人気です)

  3 きゃりーぱみゅぱみゅ、西野カナ、宇多田ヒカル、西内まりや あたりはみんなが好きです。



アニメの力は恐るべし。専門的に日本語を勉強したことがないのに、やたらペラペラ話せる
学生は、たいてい自分の国でアニメやドラマを見ています。 

2年前、中国から来た学生が参加していた読解授業の話です。

「ロボットが介護を担う」という新聞記事を読んで討論をしました。
私が「みなさんが老人になったとき、おしめを替えてくれるのは、ロボットかもしれませんね」と
言ったら、その学生が次のように言いました。
学生「それってやばくね?」

私は即座に反応できませんでした。
そんなタメ口を学生から聞くと思ってなかったからです。
聞くと、「コナンがよくそう言うから」いいと思って使ってた、ということでした。
笑い話のようですが、その後しっかり日本語を学んだ彼は、「先生のご指導、感謝の念にたえません」と深々とお辞儀をして卒業していきました。

言葉は生き物です。
場所やトピック、相手、そのときの話者の気持ちや意図など様々な要因で
その形を変えます。自分の国の文化や価値観が優先されることもありますが、
毎日の授業で、ときに泣いたり怒ったり、笑ったりを繰り返し、少しずつ彼らは
生きた日本語をマスターしていきます。


今学期はどんな学生が授業にやってくるでしょうか。とても楽しみです。

高橋 朋子(たかはし ともこ)

近畿大学 語学教育センター 准教授
留学生への日本語教育、地域の日本語教室の支援、外国にルーツを持つ子ども達の母語教育支援活動をしながら、多文化・多言語社会について考えています。

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