2017.03.06
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

小学校英語で思考力を伸ばす! PART4 「日本ってこんな国・・・」

 3月になりました。6年生を送る会が終わったという学校も多いのではないでしょうか。学年末が近づいているのを感じます。

 さて、小学校英語の授業で「子どもが思考する場面とは?」というテーマで書いています。今回は、国際理解が中心です。英語の授業で他国のことを扱うのは自然な流れです。そして、他国のことを知れば、いつの間にか「日本はこんな国なんだ。」と考えるようになっていくと思います。

倉敷市立連島南小学校 教諭 江尻 寛正

日本ってどんな国ですか?

 私は3年間、ブラジル・サンパウロ日本人学校に派遣され、日本から遠く離れた地で生活しました。地理的に遠いだけではなく、文化的にも大きな違いあり、当初は驚くことばかりでした。

 例えば、ブラジルの地下鉄の駅やバス停には時刻表がありません。南米一の大都会(サンパウロ市だけでも1000万人以上が居住)ですので、多くの人が利用するのですが、その人たちはいつ来るかわからない電車やバスを待っているのです。私が、「いつ来るんですか?」と聞くと、「いつか来るよ。」「もうちょっとしたら来るよ。」といった答えが返ってきていました。「もうちょっとって、どれくらい?」とさらに聞くと、「それは分からない。でも、いつか来るよ。」という感じです。

 電車が数分遅れると、「ご乗車の皆様にご迷惑をおかけして申し訳ありません。」というアナウンスが入る日本とは大きな違いがあります。

 また、ラテン系のお祭り気質があり、パーティーが大好きな人が多かったです。実際、よく行われていましたし、盛大なものが多かったです。

 例えば誕生日パーティー。子どものそれはかなり豪華で、ミニ遊園地のようなスペースを貸し切って行われます。親が支払う金額は10万円を超えるとかこないとか・・・。とにかく盛大でした。

 大人になっても誕生日パーティーはよく開かれていました。そして、その主催者はたいていの場合、“本人”でした。「今日は私のために集まってくれてありがとう。」というセリフをよく聞きました。そして、時間にルーズと言われる国民性を反映してか、“乾杯”はパーティーの最後に行われていました。

 会の開始に“乾杯”があり、例えば運動会の打ち上げで数人が遅れてくるのを多くの人が待ち、みんなが喉を乾かせて待っている日本とは違い、ブラジルは来た人からどんどん飲み始め、盛り上がってきたところで“乾杯”となるわけです。ある意味、合理的だなあと思っていました。

 このように他国のことを知ると、「日本は時間を守る国民性があって、便利で快適な生活を送ることができているんだな。」「ブラジルは大らかで、生活を楽しもうという気持ちが強いんだな。」といったことを考えることができるわけです。どちらがいいという二者択一ではなく、それぞれの違いを認め、良さを見出していくことで、自分の生活がより豊かになっていくのだと思います。

小学校英語の授業の中で

 では、授業の中でどんなことを扱えばいいのでしょうか。

 ALTの先生がいる場合、その先生の存在自体が学びのきっかけになると思います。実際に身近にいれば、それだけで肌で感じるものがあるからです。言葉はもちろん、立ち振る舞いや考え方から大きな影響を受けると思います。なので、まずは教師が率先してかかわる姿を見せるのが大事だと思います。授業中だけではなく、休み時間にも話をし、かかわる姿を子どもに見せれば、子どもも自然にかかわっていくことでしょう。そうすれば、子ども自身が自分の感覚でいろんなことを学んでいきます。

 そして、授業の中で他国のことを扱うことです。

 今回は物価のことを扱った実践を紹介します。

How much ?

 文部科学省から小学校英語の素案が発表されています。

http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/02/13/1382162_1_1.pdf

 この中の、5年生 unit 8 「What would you like?」で扱う表現例の中に、Hi, friends!では扱われていなかった「How much?」があります。お互いのメニューを聞き合う活動が中心になるでしょうが、その導入に他国の物価を扱うと子どもの興味関心が高まると思います。

 私がオススメなのは、ビッグマックの値段です。

 子どもたちにとっても身近ですし、“ビッグマック指数”( イギリスの経済専門誌『エコノミスト』が毎年報告しているもの。)を参考にすると、現状がよく分かるからです。

 具体的な活動の流れを紹介します。

① What’s this?と問いながら、ビッグマックのカードを見せる。

② How much is this?と問い、¥370という答えを出す。

③ What’s this?と問いながら、ビッグマックのカードを見せる。

④ How much is this?と問い、¥326という答えを出す。

 この時点で子どもからは、「え〜っ!なんで?」という声が上がると思います。そして、「どうしてだと思う?」と聞くと、「賞味期限前だから安売りしてた。」「片方はポテト付きだった。」「クーポンを使った。」などが出ると思います。そして、たまに「外国じゃない?」という核心をつく答えが出ることもあります。


⑤「これは日本と中国の値段です(2015年)。」と伝える。

⑥他の国の国旗を見せながら国名を確認する。

⑦ビッグマックの値段が高い順に並び替えをさせる。

⑧順位の発表をする。

⑨「How much?」と子どもに問わせ、それぞれの値段を発表する。

 

 子どもたちは、あまりの値段の違いに騒然となり、「この国に行きたい!」といったことを言い始めます。また、社会科の内容と少しリンクさせて、「どうしてこの国はこんなに高いと思う?」と考えさせることもできます。

 とにかく、「どこも同じだ。」と漠然と思っているものに「違いがある。」と知った時、子どもはいきいきと学び始めます。

 新学習指導要領では、「学びに向かう力・人間性の涵養」「生きて働く知識・技能の習得」「思考力・判断力・表現力等の育成」が求められています。

 45分で育てられるものではないですが、「自国と他国との違いや同じことに興味をもつこと(学びに向かう力)」「実際にいくらなのかを尋ねてみること(生きて働く技能)」「どうして違うかを考えること(思考力)」ととらえることもできると思います。

 「英語の授業の中でこそできること」という視点から、これからもいろいろな実践を積み重ねていきたいと思っています。

 今期の執筆は、残すところあと1回となりました。最後までよろしくお願いします。

江尻 寛正(えじり ひろまさ)

倉敷市立連島南小学校 教諭
アクティブラーニングを意識した“子どもが学修する”小学校英語教育実践を紹介したいと思います。平成26年度「わたしの教育記録」(日本児童教育振興財団)特選受賞、「小学校外国語活動研修ガイドブック」(文部科学省)や「英語教育」(大修館書店)等で執筆協力。

同じテーマの執筆者
  • 常名 剛司

    静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop