2017.02.23
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二分の一成人式にもの申す

今回は、数年前に4年生を受け持った時の「二分の一成人式」の実践を載せます。

最後の参観日など、4年生の3学期に二分の一成人式を行う学校も多いと思います。なんとなく取り組んでいる「二分の一成人式」にもの申します。

兵庫県公立小学校勤務 松井 恵子

今回は、数年前に4年生を受け持った時の「二分の一成人式」の実践を載せます。

最後の参観日など、4年生の3学期に二分の一成人式を行う学校も多いと思います。教科書改訂以前、国語の単元として一部の教科書に掲載されていたこともあり、取り組んでいた学校が多いようです。

本単元を「今までやっていたから今年も・・・」と形式だけを当てはめて、この単元を取り扱う場合、その多くは、周囲とりわけ保護者への感謝を述べ、少しばかりの夢を語ることにとどまりがちです。

そもそも、生い立ちを知るのであれば、2学年生活科の「こんなに大きくなったよ」という単元があり、親への感謝を述べるのであれば、小学校の大きな節目である卒業式での表現で十分だと思います。では、なぜ、10歳でこの単元が必要なのか、それを考えて、取り組むべきです。なんとなく取り組んでいる「二分の一成人式」にもの申します。

「10歳の壁」は「10歳のジャンプ台」

では、なぜ、10歳を迎えた今、「二分の一成人式」として総合的な学習の時間を取り扱うのか。

20歳の半分が10歳だからは、後付けの理由。10歳前後という年齢は、身体的にも心理的にも大きな変化が芽生える時。時に、それを「10歳の壁」と呼び、学習面や精神面での発達のいきづまりを指す場合も多いです。

一方、自己意識の芽生えと周りを見ながら自分の考えを作るという認知能力の増す発達段階であるからこそ、心的な成長の“伸びしろ”がとても大きい。「10歳の壁」に対して、逆に私は、「10歳のジャンプ台」とでも言うような、飛躍の時と感じます。4年生の1年間は、その子の人生を大きく変えるとても大切な1年と私は感じます。5年生では、少し大人すぎる、3年生では、まだ子どもすぎる。ちょうど真ん中が、4年生。素直さの上に、ぐんと自立性も芽生え、この10歳の1年で、その子の人生を変えられるくらいの影響を残すのが、4年生と感じます。

もちろん、この時期、周囲がよく見えるようになってくるからこそ、自尊感情が低くなったり、未来に対してのイメージが、空虚感を帯びるようになったりすることもあります。放っておけば、児童は、劣等感や自尊感情の低下を生み、「10歳の壁」になってしまう。

「壁」ではなく、「飛躍」にかえるための意図的な活動が必要であり、この二分の一成人式をその手だての1つにしようと思いました。

また、4学年の3学期に設定することで、1年間、学習(成長)という営みを共にした仲間と自分の夢や考えを交流する中で、自尊感情・他尊感情を育て、未来に希望のイメージを持たせ、よりよく生きる姿勢に反映させたいと思い、取り組みました。

総合的な学習の時間においては、横断的・総合的な学習や探求的な学習を通して、自己の生き方を考えることが出来るようにする事が大切です。「自己の生き方を考えることができる」とは、一つには「人や社会、自然とのかかわりにおいて、自ら生活や行動について考えていくこと」、二つには「自分にとっての学ぶことの意味や価値を考えていくこと」そして、それら二つを生かしながら「学んだことを現在及び将来の自己の生き方につなげて考え」、達成感や自信を持ち、「自分のよさや可能性に気づき、自分の人生や将来について考えていくこと」が三つ目としてあげられています。(学習指導要領 解説より)このような目標を考えるにおいても、また、10歳という心身共に大きな変化のある発達段階においても、本単元は、4学年の児童にとって有用であると思います。

また、この時に受け持った4年生は、友の死を経験しました。彼らには、命の重みについても忘れず、一生懸命に、今を生き続けてほしい。そのためにも、成長への感謝と夢を持ち続けていく姿勢を本単元で培い、今の生き方や将来の生き方につなげてほしいという願いをこめて、二分の一成人式に取り組みました。

親には、親の成熟を感じてもらうために

目標を「生命の尊さを感じるとともに、よりよく前向きに生きていこうとする心情を育てる。」とし、単元構成を考えました。(写真参照)

そして、私は、年度最後の参観日には、意識していることがあります。

それは、親も世界を広げて、親として成熟していく機会にしたいということです。

今までは、自分の子どものことばかり見て、我が子の成長を喜ぶ幸せだけだった。これでももちろん充分です。

でも、そこに、「お友達の○○くんが、あんなに立派にがんばってる。それもうれしいな。」「こんなに一生懸命なクラスでやってきたんだ、ありがたいな。」

このような視野の広がった新しい幸せを感じられたら、それは、親も親として成熟しているのだと思うのです。その感覚が、日本の社会を支えるのだと思うのです。大げさかもしれません。昔の人はよく、「おかげさまで」と言っていました。支え合う精神です。ところが、今の世の中は、その風潮が減ってきているように思います。それは、大人の成熟が果たされてないせいだと思います。大人も成熟していかなければなりません。

我が子の成長だけではなく、少し視界が広がったら、成長の表れであり、「おかげさま」が生まれると思います。その感覚が、日本を支えると思うのです。

決意表明の後に、みんなで表現している場面を入れたいと思い、群読を取り入れました。詩は、クラスで作りました。歌も歌いました。(10歳のありがとう)

ここまで、読まれて、「あれ、やっていることはかわらないじゃないの?」と思われるかもしれません。そうです、ほぼ変わりません。

大事なのは、内在する教師の目的意識、思いです。

二分の一成人式は、卒業式とはちがい、親の腕の中で成長を感じる行事です。

卒業式は、自立へ一歩近づく、親の手から少し離れていく感覚であると私は感じます。また、そうでなければならないとも思います。

小学校は、6年間かけて、子どもを自立に向かわせます。1つ1つの活動の意味を教師が問い、思いを持って、取り組みたいものです。

松井 恵子(まつい けいこ)

兵庫県公立小学校勤務


兵庫県授業改善促進のためのDVD授業において算数科の授業を担当。平成27年度兵庫県優秀教職員表彰受賞。算数実践全国発表、視聴覚教材コンクール特選受賞等、情熱で実践を積み上げる、ママさん研究主任です。

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