2017.01.27
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小学校英語で思考力を伸ばす!PART2 「相手の思いを推し量る時・・・」

 前号では、小学校英語がゲームで終わらないためには、「思考する場面」を意図的につくることが大切だという私の考えを書かせていただきました。
 今号からは具体的な実践を紹介します。

倉敷市立連島南小学校 教諭 江尻 寛正

 2017年がスタートして早くも1ヶ月が経ちました。3学期のスタート、そして新学年に向けての子どもたちの様子はどうでしょうか。そろそろ「6年生を送る会」や「卒業式」に向けての取り組みも始まるかと思います。忙しくなりますが、心を亡くさないように日々を大切にしていきたいと思っています。

 さて、今号では「小学校英語で思考力を伸ばす」ために、「相手の思いを推し量る」という視点での具体的な実践を紹介したいと思います。

相手の思いを推し量るとは 

 普段、何気なく生活している中でも「相手が何を考えているか」「何かあったのかな」と気になることはよくあります。

 例えば、朝の会に行う健康観察中・・・いつもは名前を呼ぶと元気に「はいっ!」と返事をする男の子が、「はい…」という声だったら、「あれっ?」と思うわけです。「誰か友達とケンカしたのかな。」「学校に来る前に家で何かあったのかな。」と考えるわけです。「ひょっとすると、昨日の自分の指導の仕方が良くなかったかもしれない・・・」とふりかえることもあると思います。この男の子は言葉にして「◯◯があった。」と言ったわけではないけれど、伝わる部分があるということです。

 こういった状況を意図的に授業の中に取り入れることで、子どもが思考しながら英語を使うことになります。

【What food do you like? 基本編】

 まずはよくある実践です。

(準備)

 子ども1人に白紙のカードを3枚用意します。

 そのカードに自分が好きな物ベスト3を書きます(日本語でも英語でも絵でも構いません)。

(活動)

 用意した3枚を持ち、クラスの中を歩きます。

 出会った相手にあいさつをして、相手が持っているカードを指差しながら「What’s this?」とたずねます。

 たずねられた子は「Strawberry」「ラーメン」「Water melon」というように、指差されたカードの順に答えていきます。

 たずねた子は相手の一番好きな食べ物を予想しながら、「Do you like …Watermelon?」というように答えます。

 それが当たっていれば、たずねられた子は「Yes, I do!」「Good job!」といった反応を返します。

 はずれていた場合は、たずねられた子は「No, I don’t.」と答えます。そしてたずねた子が「What food do you like?」と聞き、「I like strawberry.」と答えます

 役割を変えて行い、終われば次の相手を探すようにします。

 この実践では、“たずねる子”が「相手の好きな食べ物はなんだろう。」という相手意識をもつことになります。コミュニケーション活動になっていると思います。ただのゲームではありません。だからこそ、高学年だと「1回で当てられるといいよね。クラスの仲間なんだから!」と笑顔で声をかければ、より考えてたずねるようになります。特に女子の仲良しグループ内では、「お願いだからあててね!だって、私たちは親友なんだから!」と目でうったえている場面もよく見ます。つまり、「相手にわかってほしい」という相手意識を“たずねられる方”も持っているということです。

 この「“たずねられる方”も相手意識をもつ」という視点をもたせた実践を紹介します。

【What food do you like? 応用編】

PART1「真実はいつも1つ!」

 (活動・基本編)に、「たずねる方は全てのカードに対して、Do you like ◯◯?とたずねましょう。答える方は全てのカードに対して、“Yes, I do.”で答えてください。」というルールを加えます。こうすることで、答える方は声の大きさや表情を工夫することになります。自分が一番好きな食べ物を相手に「伝える」という意識になるからです。

 この活動をした後の子どもの感想の中には、「相手に何かを伝えるときには、言葉だけじゃないんだ。」というものがよく出てきます。表情やジェスチャー、声の大きさでも自分の思いが伝えられるということを実感するからです。まさに小学校英語の目標に近づく視点だと思います。

 ですが、この活動は分かりやすすぎるので、高学年には向かない面もあります。そこで、高学年の場合は次のような活動を行っています。

PART2「ダウトを探せ!」

 某テレビ番組に「喰わず嫌い王決定戦」というものがあります。内容は、相手に自分の嫌いなものを悟られないようにするというものです。いくつかのメニューの中に自分が苦手な食べ物が1つあり、全てのメニューを涼しい顔で食べるのですが、相手も同じようにしています。自分も食べながら、相手の様子を見て、どれが苦手かを当てるというものです。

 これを(活動・基本編)のルールに加えます。例えば、3つのカードの中身を「2つの好きなものと1つの嫌いなもの」にします。そして、「Do you like ◯◯?」と1つずつたずねながら、相手の嫌いなものを当てるという活動にします。そして、正解にたどり着くためには、他のものを聞いてもいいということにしておきます。例えば、心の中で(キャベツがきらいなんじゃないかな。ってことは、他の野菜も嫌いかも。じゃあ、レタスとかキュウリを聞いてみよう。)と考え、「Do you like Cucumbers?」と聞いてみるという流れです。そして最後に、嫌いなものを「Final answer is …◯◯!」と言います。

今号のまとめ

 今号では2つの実践を紹介しました。

 小学校英語ではインタビュー活動がよく行われます。「相手のことをよく知ろう」という意識をもたせることが多いと思います。ただ英語を使うだけではないので、とても大切な視点です。ですが、実際に英語を使う場面を考えたときには、「知ろう」という視点だけではたりません。海外旅行に行って自分が英語を使ってたずねても、返ってきた言葉がよく分からなかったということはよくある話です。また、突然話しかけられて「一体、何があった?」とあせることもよく聞く話です。

 だからこそ、小学校英語の授業の中でも、「言葉を聞いて相手のことを考える」という視点や、「伝えよう」という視点を意図的に取り入れることで、実際のコミュニケーション場面に近づくと考えています。
 参考にしていただけたらと思います。

 次号では、「英語をどう使えば、相手に自分の思いや考えを伝えることができるか」という視点での実践を紹介したいと思っています。

江尻 寛正(えじり ひろまさ)

倉敷市立連島南小学校 教諭
アクティブラーニングを意識した“子どもが学修する”小学校英語教育実践を紹介したいと思います。平成26年度「わたしの教育記録」(日本児童教育振興財団)特選受賞、「小学校外国語活動研修ガイドブック」(文部科学省)や「英語教育」(大修館書店)等で執筆協力。

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  • 常名 剛司

    静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭

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