2017.01.10
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小学校英語で思考力を伸ばす! PART1「子どもが思考する場面とは...」

 高学年で英語が教科化されます。そこではどんなことを大切にすればいいでしょうか。

 高学年の他教科の授業・・・例えば国語では物語文の主題を考えたり、算数では文字を使って論理的に考えたりすることが求められます。そういった中で、英語の授業では楽しいゲームを行っていればいい・・・はずはありません。

 高学年の発達段階にあった「思考力の育成をめざす英語の授業」について私が考えていることを紹介したいと思います。

倉敷市立連島南小学校 教諭 江尻 寛正

 あけましておめでとうございます。今日が始業式の学校が多いでしょうか。本年もよろしくお願いいたします。

 2017年は小学校英語の視点で考えると、とても重要な1年になります。

 それは、「高学年で週2時間の英語科」「中学年で週1時間の外国語活動」を2018年度の移行期間から始めるためには、2017年が準備に使える最後の1年だからです。みなさん、英語の授業を行う準備はバッチリですか?

 全国の英語教育仲間と話をしていても、2018年度に向けての準備がまだ万端ではないのを感じます。でも、子どもたちのために一生懸命研修に励まなければいけないという強い志を感じることが多いです。

 私も今年は今まで以上に積極的に情報発信をしていきたいと考えています。そして、少しでも読者の方に参考になればと強く思っています。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

 さて、前回は私のこれまでの実践を振り返りながら、今までとこれからの小学校英語で求められることについて書かせていただきました。今号からは、小学校英語の中で「どんな活動をどのように行えば、思考力・学びに向かう力が育つのか」という話題を提供していきたいと思います。

子どもが思考する内容とは

「もし戦争のために使われているお金を全部、貧しさと環境問題を解決するために使えば、この地球はすばらしい星になるでしょう。私はまだ子どもだけれど、そのことを知っています。」(1992年リオ地球サミット、当時12歳のセヴァン・スズキさんのスピーチより http://severncullissuzuki.com

 これほど有名でなくても、子どもが書いた日記を読むだけで「へぇ〜、こんなことまで考えているんだ」と驚くことはよくあります。「見た目はおっさん、心は20歳」というドラマが最近小学生の間で流行っていたようですが、小学生でも「見た目は子ども、心は20歳」という子も多くいるように思います。私は恥ずかしながら、「先生、子どもじゃないんだから…」と子どもに諭されることもしばしばあります。

 「子どもだましは、子どもには通用しない」と僕の師匠がよく言っていました。「子どもだから・・・」と思って接する教師の腹は、実は子どもには見透かされていることが多いものです。そうではなく、一人の人間として接し、授業中には大人でも簡単に答えが出ないような問いを投げかけていくことが必要ではないでしょうか。

 つまり、“子どもだから”という視点ではなく、“大人も一緒になって考えられる内容”を小学校英語の授業でも扱っていくことが大切だと私は考えています。

小学校英語での思考場面とは

 思考力育成は、どの教科でも求められています。もちろん重なる部分はあるものの、その教科の独自性も必ずあります。左の表は、文部科学省が公表している資料です。この中から、「思考力」に関する部分を抜粋します。

(文部科学省HP 

http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/09/09/1377021_1_5.pdfより)

◆ 外国語で、情報や考えなどを表現し合う力

◆ 考えの形成、整理

 これだけではなかなか授業レベルとしては分かりません。私は自分のこれまでの経験から、「小学校英語の授業で子どもが思考する場面」を大きく4つに分けています。

英語を使って相手とやりとりしながら、相手の思いを推し量る時

 「What food do you like?」は、日本語で言えば「好きな食べ物は何ですか?」という簡単な質問です。言葉のレベルで言えば、3歳でも使うことができるものです。だからこそ、「相手の好きな食べ物を予想してから聞こう。」「クラスで一番人気のある食べ物はなんだろう。」といったことをあらかじめ考えさせてから英語を使わせます。

 おしゃべりレベルの言葉だけれども、そこに相手意識を持たせるという思考場面をつくることで、言葉のもつ力を再認識させることができると考えています。

英語をどう使えば、相手に思いを伝えことができるかを考える時

 自分にも相手にとっても英語は不自由さがあります。言いたいことが言えなかったり、相手の話す言葉の一部分しか理解できなかったり・・・。  

 でも、だからこそ、自分が知っている言葉やジェスチャーをフルに使い、思考しながら活動に取り組むことで、相手とコミュニケーションをはかる力や意欲を育てることができると考えています。

日本と比較しながら外国の文化や考え方を知った時

 外国のことを英語で知るのは自然なことだと思います。ALTが自国のことを話している時、子どもは本当に興味深々です。全てを理解できているわけではないですが、大まかに意味をとらえ、驚いたり感心したりしています。

 日本と外国を比較し、同じところと違うところについて思考することで、外国語と外国文化を同時に肌で学ぶことができると考えています。

新たな視点から物事を見ることができた時

 授業中に学んだことは”知識”として蓄積されていくイメージがあります。そして、それが生活の中で活きることを実感した時”知恵”に変わっていくように思います。
 例えば、担任の先生に言われたことと同じことを習い事の先生にも言われると、「やっぱり大事なんだ。」と実感します。スポーツのスキルアップのポイントを本で学び、実際にやってみて上達を実感することもそれに似ていると思います。つまり、1つの場面で終わるのではなく、他の場面とつながりがあると”思考に深まりが出る”ということです。 

 ○他教科で学んだことをベースに英語を使って学ぶこと
 ○何となく知っていることを新たな視点で見ること

 「知っているはずだけれど、実はよく知らない」という視点で学び直しをすることで、深く思考することができると考えています。

 つまり、授業の中で①・②・③・④のような“子どもが思考する場面”を意図的に取り入れることが、「小学校英語で思考力を伸ばす!」ということにつながるというわけです。

 次号では、具体的な私の実践を紹介していきたいと思います。

江尻 寛正(えじり ひろまさ)

倉敷市立連島南小学校 教諭
アクティブラーニングを意識した“子どもが学修する”小学校英語教育実践を紹介したいと思います。平成26年度「わたしの教育記録」(日本児童教育振興財団)特選受賞、「小学校外国語活動研修ガイドブック」(文部科学省)や「英語教育」(大修館書店)等で執筆協力。

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  • 常名 剛司

    静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭

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