2016.12.22
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小学校英語を充実させるためにできること 〜ゲームで終わっていいの?〜

 2020年度から、高学年で英語が教科となり、中学年では外国語活動が必修化されます。そこで求められることは何でしょうか。私が取り組んできたことを凝縮してまとめ、今考えていることを何回かに分けてお伝えしたいと思います。

倉敷市立連島南小学校 教諭 江尻 寛正

小学校の英語は楽しければいい?!(10数年前)

 「英語の授業はゲームが楽しい!」という感想が子どもからよく聞かれます。私自身も、英語の授業に取り組み始めた10数年前は、「子どもが楽しいと思うゲームを考えること」にとにかく力を注いでいました。

 ですが、「それでいいのかな?」という思いはいつも心にありました。

 それから数年後に、「子どもは“楽しい”で終わっても、教師が“ねらいを達成した”と思えるようにすることが大事だ。」と考えるようになりました。

あくまでゲームはねらいを達成する手段だと気付いたのです。

 自分の中では大きな一歩でした。

高学年での必修化が決まってから(10年前)

 必修化が決まり、学習指導要領が発表され、文部科学省から英語ノートが発刊されました。今からちょうど10年前の話です。

 この時は文部科学省の仕事にいろいろな面でかかわらせていただきました。

 そのおかげで、小学校の英語ではどんな事が大切にされているかを肌で学ぶことができました。「コミュニケーション能力の素地を養う」という言葉にこめられた願いを現場レベルで具現化していきたいと思いました。

 そこで、「子どもが楽しいと思うゲームを考えること」から脱却するようになりました。そして、「子どものコミュニケーション能力を育てていく」という視点を大事にするようになったのです。

 その中で一番大切にしたことは、「自分の言葉で自分のことを語る」ということです。そして、「相手の本当の思いを知る」ということです。

 今までは楽しいゲームを活動の中心に据え、子どもが英語に慣れ親しむことをねらいにしてきました。ですが、この頃からは、慣れ親しんだ英語を使い、「自分のことを語ること」「相手の思いを知ること」を大切にしたのです。

 すると、子どもの感想が変わってきました。

 今までは、「今日の英語は楽しかったです。またやりたいです。」というものでした。ですが、「今日の英語は楽しかったです。○○さんが納豆を好きだとは思いませんでした。他の人にも聞いてみたいです。」といったものに変わってきました。 

 英語という“言葉”を使って“人とコミュニケーションはかりたい”という意欲を授業の中で育てることができるようになってきたのです。

様々な取り組みにチャレンジ(この何年か)

 必修化以来、全国の小学校で英語が行われるようになりました。

 私も、北は宮城、南は沖縄まで多くの授業を参観に行き、学んできました。

 また、ブラジル・サンパウロ日本人学校に派遣された3年間は、現地教員によるポルトガル語の授業、現地教員による英語の授業をT.T.で行いながら、指導内容・方法を学んできました。そして、自分自身もポルトガル語を学びながら、外国語を使って人とかかわる経験を数多くもつことができました。また、教育課程特例校として英語科(教科)に取り組んでいる倉敷市で勤務するようになってからは、教科としての授業を充実させるとともに、中学校の先進校に参観に行き、指導法を学ぶようになりました。

 だからこそ、この何年かは“どうすれば子どもが英語を使って積極的に人とかかわろうとするようになるのか”ということを考えるようになりました

この視点は、これから迎える教科化の時代では強く求められる視点だと思います。自分自身がポルトガル語を学んだ経験と教科としての英語を指導してきたことは、今後大いに生かすことができると考えています。

これから必要なこと(2018年度の移行期間以降)

 文部科学省から、新指導要領についての審議のまとめが出されています。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/1377051.htm

 その中で、「外国語活動・外国語科において育成を目指す資質・能力の整理」が示されています。

 私がこの中で特に注目したのが、「思考力・判断力・表現力等」と「学びに向かう力・人間性等」で示されている内容です。

 ここを読んでいると、10数年前に私が考えていた「子どもが楽しいと思うゲームを考えること」では全く足りないことが分かります。そして、英語だけではなく基本的に全教科を教えている小学校教員だとよく分かる視点です。

 例えば算数では「割合」や「比例」を学びます。国語では「やまなし」や「大造じいさんとガン」といった名作を読み、図や表を使って書いたり、ディベートをしたりします。社会科では世界と貿易する中での問題や対処について学び、理科では薬品や専門器具を使って実験をします。そのような高度な学びを行っている子どもたちが、英語の授業では“楽しいゲーム”をするだけでは思考力や判断力、学びに向かう力が育たないのは明らかです。

 だから私は今、小学校の英語科の中で「どんな活動をどのように行えば、思考力・学びに向かう力が育つのか」を考えています。

 次号以降で、具体的に私が取り組んでいることを紹介していきたいと思います。

江尻 寛正(えじり ひろまさ)

倉敷市立連島南小学校 教諭
アクティブラーニングを意識した“子どもが学修する”小学校英語教育実践を紹介したいと思います。平成26年度「わたしの教育記録」(日本児童教育振興財団)特選受賞、「小学校外国語活動研修ガイドブック」(文部科学省)や「英語教育」(大修館書店)等で執筆協力。

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  • 常名 剛司

    静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭

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