2020.06.03
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男性の育児休業、どう考える?

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験をもとに、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。今回のテーマは「男性の育児休業」です。日本男性の育児休業の取得率は6.16%(厚生労働省「平成30年度雇用均等基本調査」)。少子化が社会課題となっている日本においてこれをどう捉えるのか、男性の育児について私の考えをお伝えしたいと思います。
 

※育休取得率のデータはこちらから
厚生労働省「平成30年度雇用均等基本調査」の結果概要(p16)

男女平等な社会において、育児休業は「義務」

父親が子どもといっしょに料理をしている様子

私の考えは一貫して、育児休業は男女ともに「義務化」です。そしてこれが本当の男女平等です。憲法で国民はみんな平等で、性別問わず差別されてはいけないと定められているのに、女性は育休を取得することによって昇進で不利になったり、諦めています。これは男女差別です。

育児休暇を義務化する事で、雇用時の男女差別が緩和出来ます。親になる可能性のある女性は妊娠、出産、育児で休みを取り、会社に負担がかかると思われがちです。でも育児休暇が義務化すれば、男女ともに休むため、会社側がリスク回避で男性を選ぶ事が避けられます。

育児休業の義務化を法律で定めてくれれば、あとは期間や保証など、支援方法についてどうするかを決めるだけです。法の下、企業がきちんと実施して、必ず復職ができて、お給料も一定額支給されるように整備する。そうでなければ男女差別は終わりません。

もちろん産休をとっても、育児を手伝わないお父さんもいるでしょう。ただ寝っ転がってテレビを見ているだけかもしれません。それでも良いと思います。子どもの泣いている声が聞こえて、少しは抱っこすることもあって、育児の大変さや子どもの成長する姿は近くにいることで初めてわかることですから。男性も今まで見えなかった世界を知れば新しい学びになりますし、子どもも父親の愛情をたくさん受けて幸せに育つはずです。

育児をしない男性は“時代遅れ”

仕事が滞ってしまう、昇進に障るといった理由から育児休業を取得しないで良い、特に必要性を感じていないという男性もいるかもしれません。ですが、男性が望まない限り、子どもはできません。作らないという手段も選べたはずです。時には女性が望んでいなくても、男性の行動次第で子どもができてしまうこともあるのです。そんな中「僕は子どもは欲しかったけど昇進のため、仕事のために育休はとりません」という男性がいるのだとしたら、今まで女性がどれだけ仕事を犠牲にして子どもを産んだのか今一度考え直してほしいです。

育児は女性の仕事だという風潮は、まだ根強く残っていると思います。昔は親子3世代、親族揃って大勢で子育てできたのでしょうが、現代は核家族化が進み親族の手助けなしに子育てをする人が当たり前の時代。お母さんひとりでの育児は負担が大きすぎます。もはや育児ができない、育休の必要性を感じない男性は時代遅れで、子孫は残せません。人間は進化する生き物ですから、男性も進化しましょう。

育児の得意不得意は、男女ともに同じ。

「女性は子どもを産んだらお母さんになる」「男性は育児が苦手、女性の方が得意」と思っている方がいたら、それは誤解です。子どもを産むだけでは何もわかりません。ただ、妊娠をしているときに心構えをしたり、周りの人達が教えてくれたり、そんな中で少しずつ育児について学習していくんです。だから産んだら育児ができるのではありません、学んでいるのです。同じように男性も学ぶことで子育てができます。

私の旦那さんは次男が生まれてから育児に参加するようになりました。きっかけは長男が2歳のときに、私抜きで2人でご飯を食べに出かけた時、長男がとてもよそよそしく接してきたようです。旦那さんはそれがとってもショックだったようですが、当然です。たまにお風呂入れる、たまに遊ぶくらいでは子どもは懐かず、誰が面倒を見てくれる人なのかは小さい子どもでもわかっているものです。だから次男からは旦那さんも育児に奮闘していました。積極的に「パパっ子にしよう」と育児に参加したので、次男は父親によく懐いて育ちました。パパっ子作戦大成功です。

三男が生まれたときには、長男も次男も育児に参加しました。こうやっておっぱい飲ませるんだよ、こうやってオムツ換えるんだよって教えてあげて、上手にできなくても彼らも立派なパパです。たくさん子育てをしてくれました。だから学習すれば、男性だって子どもだって育児はできるんです。子どもが懐いてくると泣かなくなって、お父さんも誇らしくなります。そうすると、子育てに報われます。それを味わわないお父さんは残念だと思います。

育児休業は義務、それが私の考えです。義務にすれば余計な議論はいりません。男女平等になり、家族の愛情を育む時間もできます。育休でゆっくり子どもと過ごすからわかる、子育ての尊さを実感できるお父さんが増えることを願っています。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

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