2024.07.04
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見えるやり取り、風通しの良い教室、学校~求められる教師、学校像「Clear Communication」(1)

パンデミックによってアメリカでの保護者の教育観が大きく変化し、子どもの学校教育における自らの決定権についてより強く主張するようになったことは明らかです。

在沖米軍基地内 公立アメリカンスクール 日本語日本文化教師 下條 綾乃

「ハリス世論調査:中間選挙を控えた保護者の教育政治的推進力、2022年6月21日」ではパンデミック後、アメリカ国内の有権者である保護者が学校に何を求めているかに耳を傾け、5,000人以上対象にした世論調査が行われました。
そのハリス世論調査では保護者の懸念事項の中で教育が上位に挙げられていました。
特に候補者の教育政策が自分たちの政策と一致する場合、82%が政党以外の候補者に投票すると回答しています(ハリス、2022)。

ハリス世論調査とは?

学齢期の子どもを持つ5,000人以上の保護者を対象に、ハリス・ポールが全米公立チャーター・スクール連盟に委託して実施した2021−2022における全国調査です。家庭の教育の選択とパターン、学校の選択肢に対する満足度、次期選挙における争点としての教育の重要性が調査されました。伝統的な公立学校がパンデミックの間に120万人以上の生徒を失ったのに対し、チャーター・スクールは2020-21年度に24万人近くの子どもを獲得しました。
これは過去半世紀で最大の増加率です。従来の教室ではうまくいかない生徒にとって理想的な学校はどこにあるのか? 「親が子どもの教育に果たす義務、役割」と、「学校が生徒の成果を向上させるために望まれる変化を認識し、支援する必要性」が問われる結果となりました。以下にその一部を紹介します。

世論調査で得られた結果の一部を紹介します

86%が、トラウマに起因するストレスや悲しみに関連する行動を、しつけのケースとしてではなく、ライフスキルを教える機会として扱うことが重要であると回答する。

86%が、特に農村部や有色人種の生徒にとって、子どもたちが食事やカウンセリング、ノートパソコンやWi-Fiなどのテクノロジーにつながるようにすることで、社会的不平等への対処を支援することが重要だと答えている。

89%が、個々の生徒のために学校を構成し、すべての生徒が同じ方法で学ぶわけではないことを理解することが重要だと答えている。

92%が、教室に座っている時間ではなく、教科の能力に基づいて生徒が学年を上がるようにすることが重要だと答えている。

「Clear Communication」の重要性

パンデミックによって保護者の教育観が大きく変化し、子どもの学校教育における自らの決定権についてより強く主張するようになりました。貧困、多様性、インクルージョンが現実問題であるアメリカ。グローバル社会に特化したホームスクール、バーチャルスクール、種目別選択スクール等選択できる学校教育システムの変容、教室で学校教師に求められる多様なスキル等、学校制度、教師のあり方が今一度大きく注目されています。

特に理想の教師像に求められるものの一つとして、「Clear Communication」があります。保護者は、保護者会、進捗報告書、オンライン・ポータルなどの定期的なコミュニケーション・チャネルを通じて、子どもの学習面や行動面の進捗状況を知らせてくれる学校を高く評価します。
保護者と学校との良好なコミュニケーションは、子どもが最大限の教育や支援を受けられるようにするために不可欠です。保護者は、子どもの学業成績、素行、学校関連の問題などについて、常に最新情報を得たいと願い、生徒もまた、学校行事やスケジュールの変更、緊急事態など、重要な情報があればできるだけ早く知らされることを望んでいます。
特に教師対クラス全体のコミュニケーションのみならず、一人一人の保護者との迅速かつ丁寧な対応も求められるようになっています。学校と保護者の間の効果的なコミュニケーションは、学校コミュニティーの信頼と信用を高め、保護者が子どもの教育に積極的に参加できるきっかけになります。
ニュースレター、Eメール、保護者会、学校のウェブサイト、ソーシャルメディアはすべて、効果的なコミュニケーションの一例です。全体として、良好なコミュニケーションは、学校と保護者の生産的なつながりに不可欠な要素です。
次回は今アメリカの学校教師に求められるスキル「21st Century Skills」、学校に求められ普及しているシステム「MTSS」を紹介します。

下條 綾乃(しもじょう あやの)

在沖米軍基地内 公立アメリカンスクール 日本語日本文化教師
日本語学校や領事館等で日本語を教えた後、米軍基地内の公立アメリカンスクールで日本語日本文化を教えて20年ほどになります。何年経っても毎日驚きと気づきがあり、それらの一部を皆さんと少しでも多くシェアできたら嬉しいです。外国の子供達に自分の話す言葉や習慣、文化を教えることの楽しさ、難しさ、面白さを呟いていきます。

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