2013.11.19
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食育と授業:おはし名人になろう!(vol.1) 【食とマナー】[小2・生活科]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第八十七回目の単元は「おはし名人になろう![1]」です。

日本の食文化に欠かせない「お箸」。お箸を上手に扱うことができたら、食事をよりおいしくいただくことができるでしょう。そして、一緒に会食をする人もきっと気持ちよく食べることができるでしょう。子どもたちが意欲的にお箸とかかわりを持ち、この憧れを実現させていくための生活科での取り組みを、2回に渡って紹介します。その1回目、「おはしのはたらきのすばらしさを知る」です。

食事に使う道具の機能を考える

栄養教諭が、
「食事の時、どんな道具を使って食べますか?」
 と問うと、子どもたちは、
「もちろん、お箸!」
「スプーンも使うよ!」
「フォークとナイフ!」
 と答えました。そこで、食事に使う道具の機能について考えることにしました。
「スプーンやフォーク、ナイフを持ち、それぞれの道具を使う時の様子をまねしながら発表してね」
 と投げかけました。すると、スプーンを手に持ち
「カレーは、“すくう”だ!」
 と、すくうまねをしながら答える子や、
「ハンバーグの時、スプーンで“切る”ができる」
「焼き飯の時、最後になってきたら“集める”ことができる」
 と答える子もいました。

 このように、子どもの意見を取り入れながら、フォークは、「巻く」「すくう」「集める」「押さえる」、ナイフは、「切る」「寄せる」など、それぞれの機能を表す言葉をまとめました。

お箸の素晴らしさを感じる!

黒板に、スプーン・フォーク・ナイフのそれぞれの“機能”を表す言葉を板書した後、
「では、一番よく使うお箸の働きについて考えましょう」
 と投げかけると、子どもたちは、“お箸とごはん”の関係に注目し、
「ごはんを“挟む”」
「“つかむ”」
「ごはんを海苔で“巻く”」
「ごはん粒を“つまむ”」
「ごはん粒を“取る”」
「ごはん粒を“集める”」
 と答えました。そして、「集める」など、他の道具(スプーン・フォーク)にも同じ働きがあったことに気がついていったのです。

続いて、
「他のお料理の時も考えてみましょう」
 と投げかけ、
「魚の身は?」
 と、お箸でその動作をまねして見せました。子どもたちは、
「あっ! 身をほぐす」
「“ほぐす”だ」
「身を“割る”」
「魚の骨を“取る”」
「“外す”」
「お箸で魚を“押さえて”手で骨を取ったことあるよ」
 と、魚を食べる時のお箸の機能が次から次へと挙がってきました。

また、
「ケーキを作った時、卵をお箸で“混ぜる”」
「卵豆腐を食べる時、スプーンでもすくえるけど、お箸も使えるよ」
「じゃ、豆腐を“切る”“割る”“つぶす”もできる」
 と、色々な機能が出てきました。

黒板は、お箸の“機能の言葉”でいっぱいになりました。子どもたちからは、
「すごい! お箸って、働きがいっぱい!」
「何でもできる!」
「スプーンやフォーク、ナイフの働きもする!」
 という声が上がり、改めてお箸の素晴らしさを実感していました。

このように、子どもたちは洋食用の「スプーン・フォーク・ナイフ」、和食用の「お箸」といった食事道具の機能を確認する活動を通して、お箸には色々な働きがあるということに気づき、驚きを示すようになります。そして、子どもたちは、多機能であるお箸に興味関心を持ち、「何としても上手にお箸を扱いたい!」という憧れが込み上げてきます。この気持ちを大切にしながら、次の第2回目「おはしを上手に使おう」の学習につなげていきます。この「おはし名人になろう!」の学習は、1・2年生の交流学習・交流給食へと発展する土台作りになります。

授業の展開例
  • 給食時間に“お箸の機能ってほんまもん”体験をしましょう。給食メニュー作りにおいて、お箸が大活躍する場面を設定しましょう。例えば「豆をつかむ・運ぶ・魚の身をほぐす・割る・押さえる・海苔を巻く」などです。
  • 「やってはいけないお箸の使い方」について調べましょう。

神山 求実(かみやま くみ)

和歌山大学教育学部附属小学校 栄養教諭

本校の先生方は食育に関心を持った方々が多く、協力的に取り組んでくれています。やはり、日頃からの先生方とのコミュニケーションが大切だと感じています。
 また、現在、“人とのかかわりの中で意欲的に取り組む食育”をテーマとして日々奮闘中です。子どもたちが主体的になり、課題解決していくような“食の学びの場”となることを願って授業づくりをしています。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

監修:藤本勇二/文:神山求実/イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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