2022.09.21
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夏やさいをすきになろう-とうもろこしのひみつを見つけよう- 【食と感謝の心・食文化】【2年・生活科】

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイデア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。
第187回目の単元は「夏やさいをすきになろう-とうもろこしのひみつを見つけよう-」。千葉県木更津市立金田小学校の2年生が、地元の農家が栽培したとうもろこしの皮を自分たちでむいて給食に提供し、とうもろこしの秘密について学びました。

はじめに

「木更津市」は、千葉県の中西部に位置し、古くから港町として栄え、木更津港を有する港湾都市です。海岸部では、干潮時に沖合い数百メートルもの自然干潟が広がり、東京湾一の広さを誇ります。

1997年に開通した東京湾アクアラインの着岸地である金田地区は、東京都心や羽田空港への高速バスの整備等が進み、首都圏へのアクセスが良くなったことにより、大型商業施設の進出、住宅地の造成等で、近年めざましい発展を遂げています。

木更津市立金田小学校は、明るく元気な児童が多く、日頃給食をとても楽しみにしています。給食時間に毎日栄養教諭が教室をまわっていますが、熱心に耳を傾け、積極的に質問をして食への興味・関心も高く、給食の予定献立表を家庭で事前に見てくる児童もたくさんいます。

隣の学区にある農家さんが作ったとうもろこしを7月に給食で使用できることになり、6月に行政の担当課職員と栄養教諭で畑見学も兼ねて農家さんへ取材に行きました。

2年生の生活科「大きくそだてわたしのやさい」の学習と関連付け、児童が皮むき体験をすることでそれまで何気なく食べていたとうもろこしについて、新しい発見と出会い、ひとりひとりが皮をむき、めしべ(ひげ)をとったりすることで、とうもろこしへの親しみが増すのではないかと考えました。さらに、食材だけではなく、生産者(作り手)へも思いをめぐらせることができるようにしたいと考えました。とうもろこしを翌日の給食の食材とすることから、全校児童や給食室の調理員さんの役に立つことにも気づかせ、生産者への感謝の気持ちと給食ができあがるまでの工程に児童自身が関わることで、進んで食べようとする意欲を育てたいと考え、授業を設定しました。

千葉県木更津市の金田地区の小学校2年生で学級担任と栄養教諭がTT(ティーム・ティーチング)で行った生活科を中心とした実践を紹介します。実施場所は教室ではなく、家庭科室です。

1 自分たちが育てている夏野菜について、ふり返る

 学校で育てている夏が旬の野菜。自分で選んだ野菜の苗を鉢に植えることからスタートした野菜づくり。日々観察をし、育ててみて、子どもたちはどんなことに気付いたのか、担任が問いかけます。

児童からは
(1)葉っぱに関連して、形や大きさの違い
(2)実のなり方に関連して、「オクラは上に向かって大きくなる」「きゅうりはぶら下がってるよ」「ミニトマトは次から次へとなっていくよ」
(3)花に関連して、花の大きさや色が様々であること
(4)「ちくちく」「ざらざら」と実や葉っぱの触感に関連すること
など、次々と手があがりました。

栄養教諭が、みんなが育てた野菜は『あつさにまけず、そだつ〇〇やさい』と板書をすると、「夏(なつ)」と子どもは声をあげます。子どもたちが育てている野菜は、みんな夏が旬である、「夏やさい」だということを共有します。

ここで、担任が黒板に「夏やさいをすきになろう ~とうもろこしのひみつを見つけよう~」と書きます。

2 とうもろこしの育った場所とクイズの答えを知る

ここからは栄養教諭が進めていきます。
今から、みんなでとうもろこしの皮むきをすることを告げ、授業開始前に、手洗いと手指消毒をしてもらったのはこのためであることも伝えます。
このとうもろこしが、金田地区の隣の岩根地区にある農家のJBKファームさんのものであり、代表の地曵さんが今朝、畑から採ってきたものを届けてくれたと説明をします。

生産者の地曵さんご夫妻の写真を見せます。子どもたちのリアクションを見ると、どんな方が育てているのか、どんな顔の方なのか、興味があることが手に取るようにわかります。

1週間前から、校内2カ所にある食育掲示コーナーにクイズを提示しました。
「これ、なんの花?」と題し、雄花と雌花の写真を貼り出し、ヒント(1)~(3)と3段階のヒントを出題です。

(ヒント1)「ほとんどの人がきっと、食べたことがあります」の段階では、私の耳に多く届いた子どもの声は「米でしょ?」でした。農家さんにも伝えると、びっくりしていました。
どうやら、雄花が「稲穂」に見えるようです。

2年生の皮むき授業の日には、2つの実がついた幹を農家さんが持ってきてくださったので、給食提供日の前日には(ヒント2)「これには、ながーいひげがあります」、(ヒント3)「給食でみんなが食べられます」と一緒にその幹も展示しました。

一体これは、どんな食べ物の花なのか、全校児童のワクワク感を引き出します。給食に出るとわかると、高学年は献立表と睨めっこです。

3 とうもろこしの皮むきを体験する

いよいよ、とうもろこしの皮むきです。
子どもたちの表情がキラキラしてます。「早くむいてみたい」と声に出さずともこちらに伝わります。

授業開始前に、家庭科室の各テーブルの上には新聞紙を1人1枚ずつ置いておきました。
作業の前に、「観察しながら皮むきをすること」という重要な連絡を。目で耳で鼻で、触ってとたくさんの感覚を使って、とうもろこしを手にしてもらうように。

栄養教諭が作業の手順を説明している間に、学級担任が1本ずつとうもろこしを配ります。
『1.テーブルに新聞紙を広げる、2.とうもろこしを手にとる、3.外の皮を上から下へとむく、4.ひげ(めしべ)もていねいに取る、5.皮とひげ(めしべ)を新聞紙でくるみ、ゴミ箱へ、6.前の台においてあるプリントを1枚ずつとり、とうもろこしのひみつを自分で書く』

4 とうもろこしのひみつを探る

畑の取材をしてきた際に撮影した写真と取材で得たとうもろこし情報を示し、子どもがとうもろこしのひみつを広げ、自分で深めていけるようにします。

4月に種まきをし、2週間の育苗期間を経て、畑に苗を植え付けていることを説明します。ここで「1週間は月曜~日曜までの7日間」だと確認し、2週間は何日?と問いかけます。「7日×2=7×2=14」つまり、かけ算九九を使って「14日間」と導きます。

次に、田んぼ1枚と同じ広さの畑に、いったいどのくらいの苗を植えてあるのか予想をさせます。
その数「4500本」と伝えると、子どもはみんな「そんなに!!」と驚きます。

私たちがふだん食べているとうもろこしは、甘み種であり、色は「イエロー」「ホワイト」「バイカラー」の3つがあり、今日みんなが皮むきをしたとうもろこしは、バイカラー品種の「ドルチェドリーム」という名前のとうもろこしだと知らせます。子どもたちからは、その響きが「かっこいい」との声が多数でした。

そして、雌花がとうもろこしの粒になる、つまり、ひげと粒の数が同じだということや、雌花にはそれぞれひげと呼ばれるめしべがあり、このめしべが皮の外まで長く伸び、雄花が作った花粉と受粉をするということを知らせます。

子どもたちの質問で多くあったのが、皮むきをしたとうもろこしのひげは、なぜ茶色くなっているのかという点でした。これについても、受粉が成功すると、めしべの先が枯れて茶色くなることを説明しました。

5 夏野菜の特徴について考え、明日の給食にドルチェドリームが登場することを知る

とうもろこしを含め、夏の強い太陽の日差しを浴びて成長する様々な夏野菜には、共通点があることを考え、ワークシートに記入させます。「実の色が濃い」「水分がとても多い」という2つです。

暑い時期に、これらの野菜を食べることは水分補給になることも説明します。

この皮むきをしたドルチェドリームが、明日の給食にでることを伝え、みんなが皮むきをしてくれたおかげで、「全校のみんなが地元でとれたとうもろこしを味わえる」「給食室の調理員さんがとても助かる」という話をし、それを聞いてどんなことを感じるのか自分の気持ちや思いをワークシートに記入させます。ここで、とうもろこしのひみつの部分を書き加える子どももいます。

担任から「もっと知りたいことがあったら、それも書いてもいいかもね」の声かけもあります。

6 とうもろこしのひみつを探り、明日の給食が待ち遠しい気持ちになる

明日の給食では、調理員さんたちがとうもろこしをどのような工程を経て、調理をするのか栄養教諭が詳しく説明します。

最後に、子どもたちが自分の書いたことを発表します。
もっと知りたいことを、自分で調べてみることも大事だと促します。

7 翌日の給食で「木更津市産のとうもろこし・ドルチェドリーム」を食す

 一晩、冷蔵庫に保管しておいたとうもろこしを翌朝給食室へ運びます。そして、調理員さんは、3槽シンクで洗浄し、1本を1/4~1/5に包丁で切ります。スチームコンベクションオーブンで蒸し、クラス毎に配缶します。
全校児童には、前日にクイズの正解とともに、放送でも2年生が皮むきをしたとうもろこしを食べることを告知しました。

当日は、給食と一緒にチラシも配布し「ドルチェドリーム食べたい意欲」を高めました。
「とうもろこし苦手」と言いながら、口に運び「甘い」と食べる子ども、「こんなに甘いなんて、デザートみたい」と興奮気味に食べる子ども、「生のとうもろこしを初めて食べた」と頬張る子どもと色々です。

当日はカレーと組み合わせましたが、皮むきをした2年生は、「いただきます」をしたら真っ先にとうもろこしを食べる子どもが多かったです。
食べる前の表情はなんとも嬉しそうで、生産者である農家さんにも、この顔を目の前で見てもらいたかったと心から思いました。
食べ残しはほとんどなく、残食率をみると、大人気メニュー「カレー」より少ないという結果でした。

8 学習を終えて

生の地場産とうもろこしを給食に使用すること自体、私にとっても初めてのことでした。
提供にこぎつけるにあたって、行政の担当課がパイプとなってくれたことにも感謝です。

実施前の食育コーナーのクイズ、ヒント1~3の度に変わる児童の反応、2年生生活科の授業の計画から当日の様子、板書の写真と、逐一農家さんへ画像付きでお伝えしました。毎回、農家さんからもお返事をいただきました。
授業後、毎月発行している食育だよりで、この取組について書きました。

今回の取組を終え、私が嬉しかったことの一つが、農家さんがご自身のSNSで発信してくださったことです。そこには、こう書いてありました。
「地元の子どもたちに、うちのとうもろこしが食べてもらえるんだと嬉しかったですが、驚いたのは、それまでの過程です。学校の栄養士さんが畑にきて、とうもろこしについて学んでくれたり・・・。校内で、とうもろこしができるまでを授業してくれたり・・・。また、子どもたちの反応をその都度教えてくれ、日々の仕事の励みになりました」(※一部抜粋)

次年度もぜひ、地場産とうもろこしを給食に使用したいと思っています。それは栄養教諭の私だけではなく、子どもたちも同じです。

「来年もまた食べたい」という声あり、そして、1年生の子どもたちは「2年生になったら、とうもろこしの皮むきやれるんだね」と、今から心待ちにしています。

授業の展開例

〇社会科「働く人とわたしたちの暮らし」「地域の産業」で、自分の住む地域でさかんな農業と農産物についての学習にもなります。

〇子どもが学校の畑で育てている野菜(1年生:さつまいも等)について学習し、給食の献立に使用する取組もできます。

坂井幸栄

栄養教諭
学校給食に携わり、28年目。令和4年度4月から、千葉県木更津市立金田小学校に2度目の勤務。給食時間には資料等を持って、毎日教室へ足を運んでいます。
「子どもたちにとって食が楽しみとなるように」を最も大事にしています。子どもの心を掴めれば、そこから先生たちや保護者の心もじわじわと掴めると感じています。
また、食育に関して、新しいことへのチャレンジ精神を常に持ち続けていたいと考えており、他職種の方、様々な外部機関、千葉県内外の栄養士の方とも積極的に情報交換をしています。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

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